第100話 女王討伐
ついに第100話です。
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俺の呟きが、静まり返った坑道に響く。激しい戦闘の熱気は急速に冷え、辺りにはようやく静寂が戻っていた。
「……とにかく、まずはこいつを片付けるぞ」
俺は皆の意識を目の前の現実へと引き戻す。足元には、討伐したばかりのセンチネル・クロウラー・クイーンの巨大な死骸が横たわっていた。体長15メートルに迫るその巨体は、この空間の半分近くを占拠している。
「片付けるって……どうやってよ、ナオキ。こんなデカブツ、解体するだけでも一日仕事じゃない、アイテムボックスでも流石にこれは無理だろ?」
ヒルダが呆れたように言った。その通りだ。このままでは通路を塞いで邪魔になるし、何よりこれほどの魔物の素材は、計り知れない価値を持つ。一滴の体液、一片の外殻すら無駄にはできない。
「まあ、見てろ」
俺は女王の巨大な死骸に近づき、その黒光りする外殻にそっと手を触れた。ひんやりとした硬質な感触が、手のひらに伝わる。
'アイテムボックスに、収納'
俺が心の中で静かに念じた、次の瞬間。
「「「「なっ!?」」」」
その場にいた全員が、信じられないものを見たという顔で息を呑んだ。
ついさっきまでそこに存在していたはずの、小山のような女王の巨体が、何の予兆も、音もなく、一瞬にして、跡形もなく消え去ったのだ。まるで、最初からそこには何もなかったかのように。
「……は?」
カイトの口から、間抜けな声が漏れた。彼の仲間たちも、目をこれでもかと見開き、口を半開きにしたまま完全に硬直している。その光景は、まるで時が止まったかのようだった。
「おいおいおい、マジかよ……」
俺の能力を知っているはずのヒルダでさえ、改めてその規格外の現象を目の当たりにして、乾いた笑いを漏らす。バルクも、その巨体を微動だにさせず、ただ驚愕に目を見張っていた。
だが、最も鋭い反応を示したのはライアンだった。
「……アイテムボックス……?」
ライアンは眼鏡の奥の瞳を見開き、女王が消えた空間と俺の手元を何度も見比べた。
「アイテムボックスのスキルを持つ人間自体が極めて希少です。ですが……あれほど巨大な魔物を一瞬で収納できるなど、聞いたことがありません」
彼は信じられないものを見るような表情で俺を見つめる。
「ナオキさん……そのアイテムボックス、一体どれほどの収納力があるんですか?」
ライアンが、震える声で俺に問いかける。
「容量は……無制限だ」
俺が何でもないことのように答えた、その瞬間。
「…………は?」
ライアンの思考が止まった。
「む、無制限……?」
彼は信じられないというように目を見開き、俺と、女王が消えた場所を何度も見比べる。
「そ、そんな馬鹿な……。アイテムボックス自体が希少なスキルなんです!それなのに無制限なんて……そんなものは規格外すぎます……」
「だから便利だって言っただろ?」
俺は肩をすくめて答えた。全てを説明する気はないし、できるはずもない。この世界の常識から外れた力だということは、俺自身が一番よく分かっている。
ライアンは静かに息を吐いた。
「ナオキさんと行動を共にしてから、私の常識は何度覆されたか分かりません」
「そのうち慣れるさ」
「……ええ。ですが、慣れる日は来ない気がします」
苦笑するライアンに、思わず皆から小さな笑いが漏れた。
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女王の巨体が消え、広間が物理的にも心理的にも広くなったことで、ようやく俺たちは一息つくことができた。
「さて、と。まずは戦果の確認だ」
俺はそう言って、全員のステータスを確認する。
【ナオキ】
LV:38
HP:620/620
MP:380/380
攻撃力:170
守備力:180
力:160
素早さ:175
知力:270
運の良さ:185
スキル
・全言語理解
・マリエク
・アイテムボックス LV4(容量無制限)
・鑑定 LV4
・身体強化 LV3
・生活魔法
魔法適性
火・水・風・土・雷・氷・光・闇
称号
・幽霊狩り
・非道なる勝利者
知識/経験
[医療]
[美容]
[初級測量学]
[地図製作技法]
[天体航法入門]
[三角測量理論]
[測量機器取扱]
【セーラ】
LV:38
HP:530/530
MP:220/220
攻撃力:245
守備力:185
力:185
素早さ:220
知力:100
運の良さ:110
スキル
・短剣術 LV5
・激励 LV3
・ヒール LV1
・心眼 LV1(NEW)敵の動きを見切る能力が向上する。
【ヒルダ】
LV:37
HP:690/690
MP:290/290
攻撃力:215
守備力:165
力:170
素早さ:270
知力:175
運の良さ:105
スキル
・隠密 LV5
・追跡 LV5
・罠設置 LV4
・弓術 LV5
・短剣術 LV3
・獣の嗅覚
【バルク】
LV:37
HP:1220/1220
MP:170/170
攻撃力:205
守備力:360
力:320
素早さ:60
知力:70
運の良さ:60
スキル
・大盾術 LV6
・挑発 LV5
・剣術 LV3
・不動の心
・守護領域
・鉄壁 LV1(NEW)防御姿勢を維持する能力が向上する。
【ライアン】
LV:30
HP:540/540
MP:130/130
攻撃力:175
守備力:145
力:150
素早さ:235
知力:185
運の良さ:100
スキル
・剣術 LV3
・危険察知 LV5
・気配察知 LV4
・地形把握 LV4
・交渉術 LV3
・鋼の精神
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全員が、飛躍的に成長していた。特に、セーラとバルクは新たなスキルまで獲得している。『心眼』と『鉄壁』。名前からして、今回の死闘の中で開花したであろう、彼らの戦い方を象徴するようなスキルだ。
「どうだ、ナオキ? 何かわかったか?」
ヒルダが不思議そうに聞いてくる。
「ああ。全員、無事にレベルアップしてる。しかも、かなり大幅にな」
俺がそう告げると、仲間たちは次々と自分のステータスを確認し始めた。
「おおっ、本当だ! 一気に二つもレベルが上がってる!」
ヒルダが嬉しそうに声を上げる。
「新しいスキルまで……」
セーラは驚いたように呟き、自分のステータス画面を見つめていた。
「……鉄壁、か」
バルクも短く呟き、新たに得たスキル名を静かに噛みしめる。
ライアンも目を見開いた。
「私もレベルが……これほど上がるとは……」
「バルク、お前の盾も限界みたいだな」
俺は大きくひび割れた盾へ視線を向けた。
「……ああ」
バルクも静かに頷く。
「この女王の素材、どこかでバルク用の盾にしてもらおう」
「……頼む」
バルクは短く答え、ひび割れた愛用の盾へ静かに視線を落とした。
そんな俺たちの会話を、カイトたちが複雑な表情で遠巻きに見ていた。彼らもレベルは上がっただろう。
だが、その中心にいる俺という存在の異質さに、戸惑っているようだった。
「……正直、助かった」
不意にカイトが口を開いた。
「俺たちだけだったら、間違いなく全滅してた」
その言葉に、彼の仲間たちも黙って頷く。
「借りは必ず返す」
プライドの高いカイトが頭こそ下げなかったものの、自分の敗北を素直に認めたのは初めてだった。
* * *
一通りの後処理と休息を終え、俺たちは改めて坑道の奥を見回した。
女王を倒したことで、坑道には不気味なほどの静寂が戻っている。
「……もう終わり、みたいだな」
ヒルダが辺りを見回しながら呟く。
ライアンも周囲を慎重に調べた後、小さく頷いた。
「他に魔物の気配はありません。依頼は達成と見て間違いないでしょう」
危険な依頼だった。何度も窮地に追い込まれた。。それでも、誰一人欠けることなく全員で生き残った。
それだけで十分だった。
「よし。街へ戻ろう」
俺の言葉に全員が頷く。
「やっと飯が食えるー!」
真っ先に声を上げたのはヒルダだった。
「もう腹減って限界だ! 肉だ! 肉!」
「私は冷えたお酒が飲みたいわ」
セーラが言う。
「さっきまでの緊張が嘘みたいですね……」
ライアンが苦笑する。
「それだけ余裕が戻ったってことだろ」
俺が笑うと、皆もつられて笑い声を上げた。
こうして俺たちは、長く苦しい坑道攻略を終え、アルテナの街への帰路についた。
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