第23話 魔物を討伐する
それから一行は数日間いくつかの討伐依頼を受けて、近くの森にやってきていた。
そして現在、大型のトカゲのような魔物と交戦中である。
硬い鱗に岩を砕く膂力を持ち、鋭い爪が地面に食い込んでいた。
アレスが魔物の攻撃を受け止め、その後ろにヴァレリアとノイジーが隠れている。
「ヴァレリア! ノイジー!」
「ん」
「あいよ!」
後方から弓による射撃支援をしているオフィリアからの指示に従い、アタッカーの二人がアレスの後ろから飛び出した。
それと同時に魔物の視界を奪うために、フィリスが閃光瓶を振ってから投擲する。
「見ないで!」
強い閃光を放ち、それは辺りの影を消すほどだった。
そして魔物の無秩序な攻撃を避けると、ヴァレリアが喉元に攻撃を仕掛けようとした時、同じ位置にノイジーが攻撃しようとしているのに気が付く。
そのまま喉を攻撃して起点を作りつつ、剣を鞘に納めて両手の糸で腕と首を絡め取り、魔物の動きを拘束する。
「あとはお願い」
「任せろ!!」
ノイジーがヴァレリアの付けた傷口にさらに追撃をかけて、そのまま喉を抉って止めを刺す。
「うっし、いっちょあがり」
「お疲れ様」
糸から抵抗が消えたのを確認すると、拘束を解いてヴァレリアが糸を回収する。
「案外、苦戦せずに倒せたわね」
「メンバーが増えて、連携も楽になったおかげだろうな」
ノイジーの元にオフィリアとアレスが話しながらやってきた。
「じゃあ、解体しちゃおっか。腕が鳴るね」
フィリスがカバンから一本の剥ぎ取り用の大型のナイフを抜いて、魔物の肉質を触って確かめている。
「このトカゲデスの頭部素材は、剥ぎ取り速度と方法で品質が変わるんだよ」
「へー、初耳だな」
「まじか!? 今まで普通に剥ぎ取ってたぞ」
アレスとノイジーが興味深そうに耳を傾けている。
「トカゲデスは死亡後に骨髄より後ろから特殊な物質が頭部に流れ込むの、だからその前に解体しないといけないんだ。というわけで、二人とも、この首の部分持ち上げてもらえるかな」
「「任せておけ」」
そう言うと男二人が魔物の首元を持ち上げると、首下に鱗の隙間ができる。
そこにフィリスがナイフを差し込んで、返り血を浴びながら綺麗に筋肉を切断していき、筋に沿って刃を流していく。
小柄なヴァレリアは、手伝うのが難しいため、糸で頭部を固定して剥ぎ取りをしやすくするなどの細かい手伝いをする。
そしてフィリスがトカゲの首の上に登り、力を込めて背骨を切断しようと試みていた。
「ッ!! かったいよ~」
「手伝う」
ヴァレリアが身軽にトカゲの首の上に登ると、糸を編んで一本の糸にすると、糸を超振動させて糸のノコギリのように骨を削り切っていく。
「もうちょっと右側に寄せることできる? そこだと髄液が漏れちゃうかも」
「ん。こんな感じ?」
「そうそう! いい感じだよ~。ありがとう、ヴァレリアちゃん」
「……」
表情こそ変わらないが、どこか少し嬉しそうな雰囲気が漏れ出ていた。
そんな不器用な違いにフィリスが気が付いて、小さく微笑する。
「もう切れる」
「二人ともー、もう切断できるんだけど、受け止められる?」
「うーん……無理だな。多分、普通に潰れる」
アレスが少し考えるが、頭部だけでも自分たちで受け止められる未来が見えなかった。
そんなことをしていると骨が切断され、頭部が切断された。
「糸がボロボロ」
ヴァレリアが繊維が切れて解れている糸に視線を向けた。
死の森で手に入れたカマキリの糸はメンテの為に、宿に置いて来ていたのだ。
市販のピアノ線と比べると、やはりカマキリの糸が使いやすいと改めて実感する。
「フィリス、次は何を解体するの?」
周辺の索敵から戻ってきたオフィリアが、解体に参加した。
それ以降はフィリスが解体を行い、残りのメンバーはそれを補助する形で進められた。
さすが錬金術士だ。
そう言いたくなるほど、フィリスの解体は丁寧かつ素早かった。
ヴァレリアたち四人では、こんなに手際よく解体はできない。
それだけにフィリスの解体技術には、一行は感嘆の息を漏らすしかなかった。
「ふふん、いい感じだね。あとはこれをしまってっと。……これでよし!」
フィリスが素材を丁寧に袋や採取カバンの中にあるガラス瓶の中に詰め込んだ。
「で、めっちゃ気になってたんだが、この頭どうすんだ? まさかこのまま持って帰るとかないよな?」
「そのまさかだよ。トカゲデスの頭部素材は、剥ぎ取ると一気に品質が一定まで落ちる性質があるんだ。だから、酷い絵面にはなるけど、このまま持ち帰った方がいいの」
「くぅー、門番に止められないことを祈るしかないな」
ノイジーが門番に止められる未来を想像して頭を抱えていた。
それでなくてもこれを五人で牽引して持っていく絵面を想像して、オフィリアが苦笑いを浮かべる。
一行は、全ての討伐依頼を達成し、街へ戻ると案の定入場の列では目立ち、門番にも止められて詰め所に行くことになった。
フィリスがことの経緯を説明して、全員が冒険者カードを見せることで何とか理解してもらえたが、兵の目は終始奇異なものを見るような視線だった。
「あーー!! やっぱり止められた!」
「オレは入場待ちであれを持ってる方が、精神的になんか疲れた」
「気持ちはわかるが……やっぱり詰め所に行く方が心臓に悪いな」
「ハハハ! オレたちは最悪ノイジーを切り捨てれば問題ないから気軽だったぞ」
「おい、アレス! それでも仲間か? お前らもなんか言ってくれよ」
ノイジーが他のメンバーに視線を移すと、全員が目を背けた。
「うぉーい! お前らなぜ目を背ける。さすがに酷――」
「やっと着いたわね。皆、さっさと売却してご飯食べるわよー!」
冒険者ギルドに到着するとオフィリアが容赦なくノイジーの言葉を遮った。
その光景にフィリスが何とも言えない苦笑いを浮かべて頬を掻く。
そして一行が冒険者ギルドに入るとまたしても奇異な視線を向けられる。
ヴァレリアはまったく気にしていないようだが、他のメンバーは少し恥ずかしそうにしながら受付まで歩いていく。
「依頼達成確認と素材の買取をお願いします」
「わかりました。素材は……」
一行が持ってきたトカゲの生首に受付嬢のシアが顔を少々引きつらせながら、どうしようかと少し考える。
「大きさも大きさなので、奥の解体場へお願いします」
「わかった。ありがとうシアさん」
アレスが礼を言うと一行はギルドの解体場へ向かうのだった。
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