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七話「雪だ! トリエルだ! 大災害だ!」

雪。


雪という気象現象がこの地球上には存在します。


「雪」で検索致しますと……


雪とは、雲の中の水蒸気が冷えて凍り、成長した氷の結晶が地上に降ってくる白いもの、


またはそれが積もった状態を指し、気温や湿度によって結晶の形や状態が変わる自然現象です。

主に水からできており、降り積もって「積雪」となります。


およそこのような答えを得ることができるでしょう。

また日本という国においては「ゆき」という名前の女性も多く存在し、


その一例として、由紀、友紀などと記載いたしますが、そのルーツは紛れもなく「雪」であり、

「雪」は日本にとってある意味、切っても切り離せない、そんな存在であると言えるでしょう。


例えるならば、それはこたつの上のみかん、あるいはイチゴにとっての練乳、

ラーメンに対するナルト、ハンバーガーに対するピクルス、布団と言えば吹っ飛んだ。

そんなポジションであると言えるでしょう。


と、言うことで今回はそんな「雪」に関するお話です。


どうぞお楽しみください。


――――


チッ……チッ……チッ……


…………


時刻は深夜2時。


俗に言う草木も眠る丑三つ時という時間帯、

壁に掛けられたオルゴール付きの時計の針の音、


それが明確に聞こえるほどに

あなたの部屋は静まり返り、夜の静寂に包まれております。


普段は空飛ぶ暴走トラックことトリエルもソファで

スウ……スウ……とアンポンタンを抱っこしながら寝ており、

その様は昼間の騒がしさとは真逆です。


「わー! 面白そう!」 という時のトリエルの笑顔はさながら

「殴りたい、この笑顔」でしょうが、


ぬいぐるみのようにコミカルなおばけをぎゅっと抱き、

スヤスヤと笑うように寝ているこの寝顔は


「守りたい、この笑顔」です。


きっとこの二つが同居する天真爛漫さこそが彼女の最大の魅力であり、


これがあるからこそ、普段どれだけ暴れてもなんだかんだで許してしまうのでしょう。


…………


7畳ほどの広いとは言えない部屋に、今でもおばけ達はおよそ16匹ほどぷかぷかと浮いております。


今彼らは鼻ちょうちんを作ってプープー寝ており、その様はなんともメルヘンチックです。


もっとも、普段の地獄を知るあなたからは「どこがじゃ!!」というツッコミが聞こえてきそうですが。


そして、そのあなたはというと、この部屋において唯一寝ない存在、ピピに見守られております。


「………」


ピピはいつものようにあなたの髪を優しく撫で、寄り添うようにギリギリまでその霊体を寄せています。


あなたが起きている時は、彼女はここまで近寄ってくることは決してありません(嫉妬(ヤンデレ)モード)の時を除いて……ですが。


しかし、誰にも見られず、そして邪魔されないこの時だけは彼女は大胆になります。


あのバレンタインデー以降、彼女はあなたに対してさり気なく見せる好意、すなわちアプローチが増えました。


あなたが出掛ける際は必ず背中にそっと触れるようになり、朝食はあなただけ「少し」豪華になりました。


例えば今朝、トリエルはトーストにハムエッグでしたが、

あなたには追加のベーコンがこっそり裏に付くようになりました。


そして今はあなたの手に人差し指でそっと触れ、その頬は一足早い桜色に染まり、

顔をあなたの寝顔に近づけると、彼女の頬は春から秋に一気に飛び、今は紅葉のように真っ赤です。


「あなた様の匂い……」

ピピは寝ているあなたに寄り添うように浮かぶと、そっと手のひらであなたの顔を撫でます。


その顔は首筋にあり、見る見るうちに彼女の顔が、

まるで生きている人間かのように赤く鮮やかになっていきます。


「あなた様の匂いだけで、溶けてしまいそうです……」

ピピの甘い言葉が寝ているあなたの耳まで届きますが、

あなたは目を覚ますことなく、夢の中。


おばけ達も寝ている今、彼女の秘め事を邪魔するものはいません。


「あなた様……」


彼女がそう呟いて唇をあなたの頬に近づけた時でした……


スカーン!!!


「えへへ……おばけみさいるー」


どうやらトリエルが夢の中で遊んでいるらしく、アンポンタンを壁にシュート!


それがボヨンボヨンと跳弾となって彼女の後頭部に直撃したようです。

「……おのれー」


一瞬彼女から怨霊時代を思わせる黒いオーラが出ましたが、ピピはアンポンタンに軽くチョップをキメると、

それをトリエルに戻し、その桜色の髪をそっと撫でました。


「雪……」


ふと窓を見ると外は雪化粧を始めていました。

「素敵です……」


ピピはスウッと窓際まで移動すると静かに雪を見つめました。

「今朝はおしるこが良さそうですね」


そう言うと彼女は気恥ずかしくなったのか、

黙ってあなたの顔をそばでそっと見守ることにしました。


「どうしてこうも、胸が熱くなるのでしょうか……」


あなたを見つめる、ピピのそんな声だけが部屋には響きます。


――――


「今日はおしるこを作ってみました」


そうピピがテーブルにおしるこを並べます。時刻は7時を過ぎ、外では完全に雪が積もっています。


あなたはトリエルと向かい合うように小さなテーブルへ腰掛け、

部屋の奥、隅っこでは線香が焚かれおばけ達が集まっています。


これが普段のあなたの家の食事風景です。


「いただきまーす!」


トリエルが大きくバンザイをして、早速おしるこを口にします。


「美味しいー!」

天界にはない食べ物だったのでしょう。


トリエルはむしゃごく! むしゃごく! いういつもの爆速でおしるこを食べ進めます。


しかし、そんなペースで食べると……

「おいおい、喉につかえるぞ?」

「ふへへ、らいじょうー……ぶぅ!!」


ほら、言わんこっちゃない……という見事なタイミングでおもちがつかえたようですね。


すかさずピピが背中を叩くとトリエルはゴクン!

どうやら飲み込んだようです。


「ゲッホゲッホ」

「慌てるからですよ……食べ物は逃げませんから」

ピピがそういった時です。


トリエルが咳をした際、天使の吐息があなたのお餅にかかると、いやーな予感。


彼女の権能が発動しちゃったようで、赤い目がピカーン!


「hello!」とおもちが喋りだしました。何故か英語で。

外国産のもち米使ってるんですかねー?


「……黙らっしゃい。食べるぞ」

ガブ……しかし餅は抵抗を見せます。


「Nooooooooooooo……」


びよーーーーーん! とのびーーる!


「あはは! 面白そう! びよーーん!」


あ……これはマズイやつだ。あなたの直感は当たりました。


トリエルはお持ちの袋に指でピン! と力を送ると……

ムクムクムクッ! とおもち達は大きくなりだし、意識を持ちます。


「てやんでえ! そんなんで餅って言えるかい! 餅ならもっと伸びて、餅道を貫いてみせろい!!」


何故か江戸っ子口調の餅親分? が声をかけるとあなたが食べてる餅はハッパをかけられたのか、

「here we go!!」と叫び、尻尾(?)であなたの顎をパチーン!


「そうだ! それが餅道でい!」

これには餅親分もさらにハッパをかけます。


「hey!! go home!!」

「やかましい!! ここが俺の家じゃい!! おのれ!! 餅の分際で!! 人間様をなめるなよ!!」


あなたが箸で餅を掴むと餅は箸にグルグルと巻き付き……

「yeah!!」とその箸を持ち上げグサリ!


「ふが!」あなたはバランスを崩し、そのまま後ろから床にどでーん!


「よくやった! それでこそ俺の弟子でい!」と餅親分があなたにヒップ(?)アタック!


「boss!!」

「弟子ー!!」

彼らは抱き合い、その上からアンポンタンがケラケラと尻尾でペチペチとあなたを叩くのでした。


「………うぬら、まとめて胃袋(地獄の釜)行きにしてくれる……」とあなたはリベンジを誓うのでした。


…………


あなたと餅の壮絶な(?)戦いは辛うじて、

トリエルの力が切れたことであなたの勝利で終わります。


あなたがその余韻に浸っているとき、トリエルが外を見ます。


「ねえ、外スゴいよ! まるで一面お餅みたい!」

あなたは一抹の不安を覚えますが、


「ふふっ。トリエルさんらしいですね」

このピピの可憐な笑顔を見てしまい……ぐらりと揺らいじゃいました。


「外に出てみるか?」と、そう自ら地獄に片足を突っ込みます。

「いくいくー!!」

これにはトリエルは大喜びで、おばけ達を連れて外の広場をぶーん! と飛び回ります。


「みんなー! トリエルと雪だるま作ろー!」

トリエルがそう「にぱあっ」と笑うとおばけ達は飛び跳ねて「はーい」とやる気満々です。


「グルグルグルー」とトリエルは飛びながら雪玉をグルグル……おばけ達も続きます。


「あははっ!!  雪って楽しいね!!」


「トリエルさん、もっと大きくしましょう」とおばけが言えば。

「やろやろー」とトリエルも乗り気です。


あなたというと、そんなトリエルの「守りたい、この笑顔」を見守りつつ、

ピピに「かまくらでも作らないか?」と誘うと、

彼女は頬を赤く染め上げて黙ってうなずきます。


白い霊体の肌が雪の光に照らされて、その様子はなんとも幻想的です。


ピピが髪の毛をそっとかきあげると、

ふわり……と


森の香りがあなたの鼻腔まで届き、ヒンヤリとした外の空気とは対照的に、その胸が熱くなるのを感じます。


…………


「ふう………出来たな」

「……はい」


そういうとあなた達はどちらからともなく

出来上がったかまくらの中に入ると、

互いに見つめ合います。


狭い空間内では森の香りが広がり、

まるで雪山で遭難中、かまくらの中で救助を待つ二人のようです。


外からは遮断され、あなた達はそっと手を伸ばす……のですが――


むにゅ。


「ILoveYou!! PIPI!!」

「えっちーん」

「すけっちーん」


「……ワンタッチはないんかい!!!」とあなたは癖でツッコミ。もう毒されてますね。


またしてもアンポンタン《アッチ、ポンポ、タンタ》に邪魔され、あなたの怒りはピークに達します。


「おのれ!! 毎度毎度!! 今日こそは貴様らをあの世(チートなしの異世界)へ送ってくれる!!」


「アッカンベー!! EZ!!」

「やってみなー!!」

「お前の姉ちゃん化粧美人!!」


最後のそれは褒め言葉じゃないのかと思いつつ、

あえてツッコまずあなた対アンポンタンの戦いの火蓋がまたしても切って落とされるのでした。


「ふふふ……俺が毎度毎度やられっぱなしだと思うなよ……雪を見た時点で俺は用意したのだ! 対貴様ら用の秘策をな!」


そう言うとあなたは彼らアンポンタンを指さしますが……


「I’ll bury you in an avalanche of wins.」

《また勝って雪崩見たく埋めてやるよ》


「お尻ペンペーン」

「お前の兄ちゃん社畜ー」


と煽ってきますが、あなたは彼らに指を指します。ビシィッ!


「やい! 雪合戦で勝負だ!! 受けて立つな!?」とマイクパフォーマンスのように煽り返します。

これには彼らも闘争心に火がついたのか、シャドウボクシングをはじめました。


どうやらやる気まんまんのようです。


かくして、あなたとピピのチームとアンポンタンとの雪合戦が始まります。


「ふ……今回に秘策はこれじゃい。ピピ」

「はい」とピピはあなたに雪玉を渡しますが、それは霊気を帯び、青く光っております。


「俺は閃いたのだ。目には目を歯には歯を……ならば貴様らにはピピをだ!」


そういうとあなたは霊気のこもった雪玉を投げつけます!

ヒョイ。


アンポンタンはそれを軽く避けるとバットになったアッチがポンポをカキーン!


スコーン!! とそれはあなたにクリーンヒット!


「ズルいぞ! 貴様らー!」


「アッカンベー!」


「おのれ……ならば奥の手じゃ……」そういうとあなたは防寒着に身を包むとあさっての方向を指さし……


「あー! ピピ! あそこに俺を見る女の霊が!」とわざとピピの嫉妬心を煽ります。すると……


ギィィィィン……とピピの目が赤く光り、霊体からはドス黒いオーラが溢れてきます。


「女……低級霊の分際で、この人に近づく気ですか……どこですか……」


ピピの黒いオーラは一気に周囲を包み辺りは極寒の寒さに!

これにはアンポンタンもガクブルです。


「もらった!!」とあなたが確信した時でした。


「面白そー!!!」と、ここでタイムアップの号砲が。


「トリエルも雪合戦するー!!!」

そう言ってトリエルはシルクハットをぽーい! 天使の輪(ハロー)がパアァァー!


Hello(ハロー)


そう、これは天使の権能(地獄の始まり)が本気で発現する合図です。



ゴゴゴゴゴゴ…………



「みんなで遊んで笑顔になろー!!」


「あ……やべぇ」

とあなたは逃げようとしますが、やはりいつものように、二瞬三瞬遅く……


「ゆきゆきおばけミサイルー!」


トリエルの天使の権能が雪にかかると意志を持った彼らが自ら雪玉になり、やがて目が出現します。


キラーン! とそれは怪しく光り、あなたをロックオン。

「いっけー!」とトリエルが指示すると一直線に向かってきます。


ヒュルルーン……しかし。


「なんのー!」

しかし、あなたも負けっぱなしではありません。


ピピを連れてかまくらへ逃げ込み、正気に戻ったピピと二人で雪玉を投げ合います。


「痛! やりましたね! トリエル様!」ピピの反撃の雪玉がトリエルにヒット!


「冷た! でも雪合戦って楽しいね!!」とトリエルはどんどん雪ミサイルでバシュシュと攻撃します。


「ふふふ……勝てる……今回は行けるぞ。

奴は普通に雪で攻撃してるだけ! ならばいける!」と、あなたが勝利を確信したのも束の間。


すぐにそんなことはなかったと思い知らされます。


「よーし! 最後はこれだよ!」とトリエルが言うと……どこから来たのか2メートルほどの大きな雪だるまが。


「雪だるまなのだー」彼はそういうと、自らをゴリッと削り小さな雪だるまを発進させます。


ガリガリガリガリ……

それはそんな音を立てながら、ちまちまとあなたを目指し前進していきます。


「……んだこれ?」あなたは無謀にもかまくらから出てそれを眺めますが……


「mission received《任務了解》 ppppp……3……2……1」


「あ………」


ちゅどどどどどーん!!


それはそんな音を立てて大爆発!! あなたも雪も吹っ飛びます!!


「今日はゆきゆきマインだよー!」

子雪だるまは地雷となってあっちこっちで大爆発!!


こうなったらトリエルは止まりません!!

「さらに! おばけミサイルー!」


「やめろーーー!!」


やっぱりいつものも飛んできてどかーん!と爆発。

背後のかまくらは吹っ飛び、あなたを守るものはなくなりました。


そして……


「みんな……さようならなのだ……」親雪だるまがそういうと、自らを全て子雪だるまに変えてぞろぞろと進軍……


「悲しさアピールなぞすなー!! やめろやめろやめろー!!」



「mission received」「mission received」「mission received」


「mission received」「mission received」


「mission received」


ppppppppp………



ちゅどどどどどーん!!!


広場は大爆発!! あなたはぴゅーっと飛ばされていくのでした。


「また遊ぼうねー!」

「誰がやるかーーーー!!!!」


…………キラーン。


「待ってくださーーーい」


ピピはあなたを追いかけて、健気にも飛んでいくのでした。



――――



「楽しかったね」


その夜、トリエルはあなたの枕元に、爆発しない雪だるまをそっと置きました。

彼女の目は窓から漏れる月明かりで、茶色く神秘的に輝いていました。



次回!


「お雛様は飾りますか? 遊びますか? あるいは……」


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