四話「約束の箱庭と魔界の影」
冒頭うんちくコーナー! はーじまーるよー!
――BGM――
♪テッテレテテレーテ テッテレテテレーテ テッテレテテレーテ
♪テッテレテッテー
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。
本回より始まりますは、冒頭うんちくコーナーでございます。
ほら、昔から言うじゃないですか。
パクがないシーンはアドリブを入れろ。
キャプションは遊び倒せと。
そういうアレですよ。
ところで、皆さまゲームはお好きですか?
まあゲームと一言で言ってもいっぱいありますね。
例えば知恵のスポーツと言われる「将棋」、「チェス」、「囲碁」
この辺りも広義的には立派なボードゲームであり「ゲーム」でございます。
ただ彼らを指して「ゲーム」と呼ぶ人は少ないでしょう。
オセロなんかは「ゲーム」なんですけどねえ。
彼ら知恵のスポーツと呼ばれるエリートゲーム達、いわゆるエリゲー。
いますよねー。学校でも。
塾通ってるだけで「僕は君たちとは違うんだよ」って顔する子。
そんなポジションです。
ま、そこはいいです。
後はやっぱりビデオゲームですよね。
昔はテレビゲームなんて言われてましたが、最近はビデオゲームですね。
ちなみにそのさらに昔はなんて呼ばれていたか、わかりますか?
はい。ファミコンと呼ばれていました。
いやいやそれゲーム機でしょう? と思うでしょうか。
ところが本当なんです。
あまりにもファミコンが社会現象になり過ぎてゲームの代名詞になってしまったわけですね。
これをファミコン現象って言うんですよ。知ってました?
今考えました。
ところでなんで「ゲーム」というか、ご存知ですか?
ゲームというのは芸夢と書きます。
つまり、芸に夢中になる。だから芸夢です。
まあ今適当に考えたんで合ってるかどうかは知りませんけどね。
はい。
というわけでですね。
今回はその「ゲーム」に関するお話です。
どうぞお楽しみください。
地上の地下深くに広がる死の世界――魔界。
ここには瘴気と呼ばれる『混沌の空気』が漂い、それを幾千年この間吸い続け、
神話の時代より、今なお生き続ける『最悪の悪魔』
それが、奥深くに光の鎖で封じられております。
…………
かのモノ――
七つ頭は独立して動き、まるで一つ一つが大罪を表しているかのように、
計り知れない表情を一つ一つの頭が不気味に作り出します。
六枚の翼は幾度となく、光の鎖を引きちぎろうとしたのか、
もはやボロボロに朽ち、頭上に浮かぶ黒ずんだハローは、
憎しみを訴えかけるように黒い波動を放ちます。
そんな赤黒い魔竜に、
しばらくして一匹の大きな蝿、2m程のそれが現れ近づきます。
「お呼びでしょうか。我が主、サタンよ」
「来たか……ベルゼブブ」
ベルゼブブ。かつてバアルゼブルと呼ばれ、
孤高の武神だったそれは、ルシファーとともに反逆し、
魔界へ落とされ――蝿の王ベルゼブブとなりました。
その神話の悪魔が――サタンとベルゼブブが、
今再び暗躍しようとしているようです。
「ここに」
「一柱の天使が新たに現れたようだ」
(天使? 天使ごときで、主は何を焦っているのだ)
「天使……でございますか?」
「神が何か企んでいるのやもしれん。探れ」
……
「御意に」
(たかが天使一匹、捨てておいてもよいものを……それほどか)
ベルゼブブは、「ふむ……」と唸ると、
地上へと静かに飛び去りました。
トリエルの堕天は本当にイタズラが原因なのか、
あるいは、何か別の意思が神様にあったのか……
新たな勢力が静かに動こうとしております。
……さて。そんな魔界の動きなど知る由もないあゆむは、
今夜もまた夢を見ておりました。
――――
「歩、母さんとさよならしような」
水墨画を濡らし、さらにぼかした様な、そんな儚い夢の映像が広がります。
前方には黒い服を着た少年が。
歩にはすぐにわかりました。
(兄貴)
「兄ちゃん……これからどうなるの」
歩には『進』という5歳上の兄がいます。
責任感が強く、成績も優秀、有名な公立高校への推薦も決まり、入学目前のところで――
それは辞退せざるを得なくなりました。
「これからは……これからはな、兄ちゃんが母ちゃんの変わりも務めるんだ」
進は夢の主、あゆむ少年を強く抱き締め、涙を必死に堪えていました。
彼は、母が残してくれた僅かな生命保険を受け取ると、
ローンの残る家を引き払い、工場へ勤めだします。
そして、今のあゆむの家――小さな7畳のアパートに、二人で引っ越します。
ここで視界が歪み、夢が切り替わります。
…………
(またいつもの誰かの夢か……?)
ぼやけた視界の端には明るいネオン。
中央には大きな家電量販店が見えます。
両隣には大人の男女が立っています。
夕暮れなのでしょうか、ネオンの明るさが目立ち、
それに負けないぐらいに胸の奥が輝く感覚が走ります。
「ゲームステーションが欲しいの?」
女性が夢の主に、そう優しく語りかけます。
彼女の目の前には『沢山の夢が詰まった箱庭』、ゲームステーション。
それが山積みされ、そして次々とPV映像を流す巨大モニター。
夢の主はキラキラと瞳を輝かせて、じっとモニターを見つめています。
やがて彼女はニコリと微笑むと、夢の主の頭を優しく撫でます。
先の夢と同じ人物である。分かるのはそれだけです。
しかし、すごく楽しそうで――
そして、幸せな気持ちが伝わって来ます。
「7ヶ月後の……の誕生日に買ってあげるね」
「えへへっ、⬛︎⬛︎⬛︎くんと一緒に遊びたいな!」
「⬛︎⬛︎は本当に、⬛︎⬛︎⬛︎君が好きなのね。今度連れてきてね」
「うん!」
ぼやけた景色の中で、声は聞こえるのですが、
名前を指す部分。やはりそこだけが聞こえません。
どうやら、夢の主は7ヶ月後に誕生日を迎えるようです。
そこで買ってあげると約束し、夢の主も喜んでいます。
しかし、その約束は……
…………
ここで、世界が明るくなります。
どうやら時が来たようです。
――――
ゴツーン!
このような爽快な音で、いえ、痛みであゆむは目を覚ましました。
時刻は5時40分。
枕元にあるスマートフォンは心なしか、申し訳なさそうにあゆむを見つめている。
そんな気さえします。
もしスマートフォンに心があるならば、
20分後アラームが鳴るのに、その前に目を覚ましてしまったあゆむに申しわけなさ――
あるいは、あゆむの眠りを妨げたものへ、強い怒りを覚えることでしょう。
しかし、現状スマートフォンはただのスマートフォンであり、
AIはあれど、残念ながら、彼らのように『生きて』はいないのです。
「悪い、頭が滑ったぜ」
そう、あゆむの眠りを妨げる張本人、それは彼らおばけ隊。
トリエルに忠誠を誓い、トリエルの命令のみを忠実に実行する特攻部隊。
あゆむの平穏を脅かす諸悪の根源であり、しかして憎みきれない、どこかそんな美味しい存在です。
ただ一人、およそ約一名の被害者を除けば……ですが。
「だったらそのまま、あの世まで滑らせてやるわ!」
「バーカ」
おばけはまるでゴムのように伸びてあゆむをかわし、その手は虚しく空を切ります。
「お尻ペンペンー」「女王様とお呼びー」
「さすがアニキでゲスねー」「かっこいいザマスー」
「てやんでい、てやんでい」
おばけ達はあゆむの周りを飛び交いながら、数の暴力で罵倒の嵐。
太鼓を叩いたり、メガホンで叫んだりとやりたい放題。
しかし、そんな時です。
「はーい、そこまでだよー」
トリエルが珍しくおばけ達を注意してくれました。
その命令を受けて、おばけ達はピタリと止まり、
トリエルの周りをクルクルと漂います。
(気のせいか? 目の色が茶色だった気がしたが)
しかし今見たら彼女の目は赤く、それはいつもの色です。
「助かったよ。トリエル」
「アッチ、ポンポ、タンタは特にやんちゃだから、気を付けてね」
(アッチ、ポンポ、タンタ……?)
どうやらおばけ達の名前のようですが、あゆむの目には同じにしか見えません。
しかし、トリエルには区別がついているようです。
あゆむは改めて周囲を見渡します。
どうやら、悪ふざけをしているのは主にこの三匹だけ。
他のおばけは比較的普通の性格のようです。
ここであゆむは、この三匹がいつも絡み、それによって周りも悪ノリするという結論に至ります。
「……そういう事か……ていうか」
ここであゆむはあることに気が付いたようですね。
その顔はニヤリとしております。
「アッチ、ポンポ、タンタって……アンポンタンじゃんか。三匹揃って」
あゆむは、ここでこの三匹をアンポンタン・トリオと命名し、彼らを宿敵と認定します。
「ところで他は?」
ここで、他のおばけ達が浮いたまま来てくれました。
彼らは手を振って、ちょっと遅い自己紹介をしてくれるようです。
意外と可愛い奴らです。
「ゲンゲでゲスー」「ザンザでザマスー」「てやんでい、てやんでい」
(お前は絶対、てやんでいしか言わんのだな)
「なるほど……ゲザイトリオってところか」
その命名はどうかと思いますが、当のゲザイトリオは中々気に入ったようです。
「ゲザイでゲスー」「ユニークザマスー」「てやんでい、てやんでい」
(こうして名前がわかると、ちょっと面白いな)
あゆむの口角が自然と上がり、笑みが溢れると、
それに呼応するようにゲザイトリオも微笑みかけます。
「朝食の準備が整いました」
そこへ、その笑みを加速させるように、
美味しそうな匂いがキッチンから7畳の部屋に伝わってきます。
するとトリエルは早速テーブル席へ腰掛け――
「ごっはん! ごっはん!」とまるで皿を叩くように机をポンポンします。
それに釣られて、おばけ達もお腹を叩き始めます。
「線香を炊けー!」「飯だー!」「ご飯だわよー!」
「飯でゲスー」「今日は高級線香ザマスよー」「てやんでい、てやんでい」
(愉快な奴らだ)
ピピは「お料理は逃げませんから」と、オムレツとフレンチトーストをテーブルへ並べ、
最後にニコリと微笑みます。
(彼らには高級と偽って、やっすいお線香でもあげますか)
こうして語り手として、神の目線だと、ピピさんの腹黒さがちょっとわかってきました。
「いただきまーす!」
早いか、食べるのが先か。
トリエルは電光石火の速さでフレンチトーストをパクリ。
むしゃごく! という超爆速食い。
普通の人間は『むしゃ、むしゃ……ごっくん』でしょうが、
彼女の場合は『むしゃごく』です。
ちゃんとしっかり噛みましょうね。
「おいしー!」
トリエルは舌で口のまわりをペロペロして大喜び。
あゆむもどれどれ……とフレンチトーストをパクリ。
「うん。確かに美味い」
これにはピピも嬉しいのか、恥ずかしいのか顔を赤くしてシーツおばけに戻ってしまいました。
「キッチンのあと片付けをしてきます……」
(ふふふ、あの人の料理にだけ、わたくしの霊気を入れておきました……)
「こっちはどうかなー」
あゆむは次にオムレツを口にします……が。
「げっふぉ!!!」
ああ、なんということでしょう。
それはまるで塩の塊。食べれば高血圧待ったなしです。
一方、トリエルはというとオムレツも美味しそうにパクリ。
この瞬間、あゆむは直感します。
「アンポンタンだ……」
そう、現に先のフレンチトーストは美味しく食べられました。
先に味付けを一気に済ますフレンチトーストに対し、罠を仕込むのは難しいですが、
一個一個作るオムレツであれば簡単です。
アンポンタンこと彼らは、ピピの一瞬の隙を突いて、砂糖と塩の位置を入れ替えたのです。
霊体であるピピには味覚がないので、それを利用したわけです。
そのずる賢さたるや、「あゆむを徹底的に困らせてやる」どこかそんな執念すら感じます。
ただし、アンポンタンのせいだけとは言い切れない部分もございまして……
その……霊気とか、霊気とか、霊気とか。
(めんどくせぇ……)
「えへへっ、美味しいね!」
「そ、そうだな……」
トリエルはいつもの『桜色の微笑み』を向けますが、
メインのオムレツを台無しにされたあゆむは、なんとも言えない苦笑いを向けるのでした。
…………
「あ……ゲームステーション3だ。わたし、やってみたかったんだ……」
食後の時間、暇なのか、部屋を見渡すトリエルは一台のゲーム機を発見します。
一瞬、ゲーム機の前で彼女の動きが止まると、
まるで旧友と再開したかのように、ゲーム機を茶色い瞳で撫ではじめます。
(ゲームステーション3……? 小学生の頃やったなあ……)
あゆむはこのように懐かしみますが、今は5の時代です。
「いや、それはゲーステ5だよ。やっと抽選で買えたんだ」
「え? 3じゃないんだ」
ここでトリエルの目の茶色い輝きが消えて、いつもの赤い色に戻ります。
「キュアプリの旧シリーズといい、ゲーステといい、お前妙に人間界知ってるよな」
「トリエルさんは生前、人間であったとか?」
あゆむとピピは、そう疑問を投げかけますが、
トリエルは首を振り否定します。
「それはないよー。だって天使は「天使の種子」から生まれるんだから」
「天使の種子?」
「人間界の願いや祈りが形になったものだって、神様が言ってたよー」
「ほー……つまり、天使は人間からの転生では生まれないと?」
「そうだよー」
(その割にはだな……)
あゆむは、その説明に違和感を覚えましたが、それ以上は追究せず、話題を変えます。
今ここでトリエルを追求したところで、彼女自身何も知らないと判断したからです。
「ゲーステに興味あるのか?」
「うん。やってみたいなー」
「あ、実はわたくしも……とても懐かしい感じがして」
「そういやピピは人間だったもんな……ゲーマーだったのか?」
「覚えてはおりませんが、ゲーム機を見ると、胸がときめきます」
(目付きがヤバいな)
(フフフ……怨念がたぎります)
危ないからそんなものをたぎらせないでください。
「な、なるほど? まあ別にいいぞ。色々入ってるし」
「いいのー? えへへっ! 君って優しいね! じゃあみんなでやろー!
そーれ!」
(あ……これヤバいやつだ)
あゆむはそう直感しますが、退避が一瞬、いや三瞬遅く、
トリエルはシルクハットをポイっと投げると、頭上に天使の輪が「Hello」と出現します。
「みんなで遊んで笑おーねー!」
彼女は目を赤く輝かせ、天使の権能たる奇跡の力が発動し、
部屋は眩い光に包まれてしまいます。
その光は10秒ほど続き、収まった頃には部屋にはあゆむ達の姿はなく、
ただ――壁時計の音だけが部屋から微かに漏れるだけでした。
…………
ブゥゥゥン……
あゆむがトリエルの力により室内から消えた直後です。
蝿にしては大きなそれが、黒いモヤをまとって、あゆむの部屋に現れます。
「強い天力反応があったのだがな……気のせいか」
…………
ベルゼブブはしばらく、部屋を監視するように見渡します。
壁時計、ガラステーブル、ソファ、ベッド、
そして……ゲームステーション。
「なんだ、この箱は……?」
(僅かな天力の残滓があるな……しかし、忽然と消えている)
ベルゼブブは、しばし考えます。
(外に逃げた? いや違う。転移を繰り返し、移動しているのか)
どうやら、ベルゼブブは件の天使、
つまるところのトリエル。
彼女の正体を転移を繰り返す天使と判断したようです。
「逃げた後だな……ここにはもう戻るまい」
ゲームステーションを一瞥し、
その蝿、ベルゼブブは黒いモヤとなって消えていきました。
…………
――――
「これは……フィートナイトの世界!?」
あゆむは気が付くと、そこは青空の下、苔の生えた廃墟の戦場でした。
手にはアサルトライフル、体にはサバイバルジャケットが装着されています。
「ふふふ……フィートナイトはやりこんだゲームだ! 負けん!」
(9人……全員プレイヤーか)
あゆむはミニマップを確認し、プレイヤー数から部屋の全員がいると把握します。
廃墟エリアはあゆむが得意とする場所です。
「さあ……カモーン……」とあゆむは銃を構え、宿敵アンポンタンを待ち伏せします。
しかし……
「レーザーサイト……? どこから……?」
その正体は直ぐに分かります。
「Hiya, Georgie!」
《ハーイ、調子いい?》
そうです。アンポンタンがおばけの特性を活かして、壁抜けで直接狙って来たのです。
「Aren't you gonna say, hello?」
《やり込み勢だからって調子乗ってんなよ?》
「Oh my god……」
《お前……それはズルいぞ……》
「You float too!」
《吹っ飛びな! ベイビー!》
ズドン!
あゆむはヘッドショットを決められ、敢えなく1キル――
「うわっ!!??」「あゆむ君!!」
(ん……!? 羽ばたきの音……まさか……)
「あゆむ君!!」
(声が違う)
……
(その呼び方、どこかで……)
そこには、茶色い瞳を輝かせ、今にも泣き出しそうに手を伸ばす天使――トリエルがいました。
「お願い!! やめてーー!!」
「なんだ!!??」
何が起きたのか、あゆむには理解が出来ませんでした。
突如目の前が眩い虹色の光で遮られて、意識が混濁します。
…………
(何が起きた)
気が付くと、フィートナイトは終わり、
戦闘とは無縁のすごろくゲームにいました。
「面白そー!」
その無垢な声で意識が引き戻され、
視界にはポップなフィールドと、そこを赤い目を輝かせるトリエルが、
何事もなかったかのように、無邪気に駆け回っています。
(…………)
あゆむは何も言えず、背筋に寒気を覚えます。
トリエルの二面性、ゲームとはいえ、戦場であゆむが傷付いた――
その瞬間、力を発揮した『かの力』
それは、先日の車を止めたものより、遥かに強いものでした。
(一体何者なんだ……)
あゆむは『かの力』とそれを使う『彼女』について考えますが、
視界に移るのはその表層――無邪気なトリエルのみです。
「何してるのー? キミもやろうよー!」
「『キミ』……か」
(やはり別人だな)
『彼女』はあゆむを『あゆむ君』と確かに呼びました。
しかし、現在のトリエルは『キミ』と呼ぶだけ。
やはりトリエルにはもう一人の『誰か』がいる。
あゆむのその疑念は確信に変わります。
……
「……とはいえ、今は遊ぶか」
…………
この後もあゆむ達は複数のゲームを楽しみ、
あゆむはボロ負けして、無事帰還出来ました。
「またゲームしようね!」
「中に入るわけじゃないならな」
…………
昼間の騒ぎが嘘のように、夜21時の7畳の部屋は、就寝前の静けさで包まれています。
あゆむはある人物へ、通話をかけます。
「どうした、歩」
「あー、いや……大した用じゃない」
(なんで……兄貴の声聞きたくなったんだろう)
「金か? いくらあればいい?」
「違うよ。兄貴は新婚なんだ。そっちに使えよ」
「弟が生意気言うな。5万でいいか? もうすぐ更新だろう? 出してやるよ」
「ありがとう……兄ちゃん」
スピーカーの向こうで進の笑い声が聞こえ、そこで通話は終わりました。
……
「ポテチでも買っといてやるか」
あゆむは空っぽになった棚を見て、財布を取り出します。
夜風が今のあゆむには心地よく、気付けばトリエルの笑顔が浮かんでいました。
(兄貴もこんな気持ちだったのかな)
あゆむの中で、確かに彼女らと共に歩もうとする心が生まれていました。
――――
ルビの受付少なすぎじゃないですかね(愚痴)
偽字幕ネタ出来ないんだわ




