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間章「サタンちゃん幼稚園へ行く!(後編)」

――前回までのあらすじ――


妾はママ役のピピにベッタリでしゅ!

ピピママに甘えっぱなしで、ピピママがいればいいんでしゅ!


でもなんかミカエルがよくわかんないことを企んでいるようでしゅ!

ピピママも妾を幼稚園に入れたいと思っているようでしゅ!


妾はピピママが一緒ならどこでもいいでしゅ!

でしゅ!


――――


その日は朝から昼でしゅた。

この世は天国、ピピがママならキュウリがパパでしゅ。

妾はいちゅものようにピピママに髪をとかしてもらうんでしゅ。


ちょっとだけくすぐったくて、ピピママの冷たい手が気持ちいいでしゅ。

ツインテールを作ってもらって、最後に赤いリボンを結んでもらいましゅた!

今日はお出かけということでフリフリのスカートも一緒でしゅ。


でしゅ!


……あ、そろそろー……ナレーション……代わってもらっていいっすかー?

あざーっす!


……コホン。


さて、お出かけというのは他でもありません。

そう、幼稚園です。

実は公立幼稚園の入園手続きは済ませており、この度入園が決まったのです。


そうとは知らずサタンちゃん、ピピママとお出かけと信じ込んでウキウキでしゅ。

さっきから尻尾がブンブンでしゅ。


でしゅ!


……え? また伝染ってる?


「さあ、行きましょうか。サタンちゃん」

「どこへいくんじゃあ?」


「幼稚園ですよ。今日から通うんです」

「しょーか! ピピと一緒ならどこでもいいじょ!」


サタンちゃんはピピママと手を繋いでもらってご満悦。

頭隠して尻隠さず。角はごまかせても尻尾までは出来ない幼いサタンちゃん。

外では結構目立ちます。


「あの尻尾、どうなってるの?」

「ママー尻尾ー!」

「ワンちゃんみたいー」


やがてママと子供集団に取り囲まれて質問責めです。


「これ本物ー?」

「そうじゃ!」


「どこで買ったのー? 欲しー!」

「売り物じゃないじょー」


「触ってもいい? うわ! 凄ーい! ぷにぷにしてるー!」

「しゃわりゅなぁ!」


「見せて見せてー!」

「ずるいー! こっちにも見せてー!」

「勝手に見りゅなー!」


「お子さん、凄いアクセサリーですね……」

「よく言われます」


その後も質問責め、見せて責めは続き、ラチが明かないと判断した二人は……


「あー!! 大天使ー!!」

「え!? どこどこ!?」


「今のうちに退散しましょう」

「もうしつこいじょー」


…………


子供集団を抜けたサタンちゃん。

しかし、幼稚園までの道のりは遠いのです。


「みゃー」

「わー、猫じゃー」


サタンちゃんは猫を見つけるとそれを尻尾でじゃらします。


「みゃっ、みゃっ!」

「はははっ、それそれー」

「みゃー、みゃー」


「くるしゅうないじょー! くるしゅうないじょー!」

「これでは幼稚園までが遠そうですね」

ピピママはそう言いながらも優しい目でサタンちゃんを見守るのでした。


「サタンちゃん、猫ちゃんが疲れちゃったって言ってます。

そろそろ行きましょう」

「しょーなのかー? バイバイじゃー」

なんとか猫ゾーンを切り抜けたピピママはサタンちゃんを抱っこして歩き出します。


「遅れちゃいそうです」

「ピピママちめたくて気持ちいいじょー」


道中、サタンちゃんの尻尾がまるで生き物のようにぴょんぴょん跳ねて、

通りすがりの人々を何度も振り返らせました。


「え!? 本物!?」

「最近のおもちゃって凄いのねー」


やっとの思いで幼稚園に到着したサタンちゃんとピピママ。

ピピママはため息をつきながらも、微笑みを浮かべています。


「ふう、ようやく着きましたね。サタンちゃん、今日はお友達がいっぱいですよ」

「ともだち? 妾に友達なんかいらないじょ! 妾は魔王サタンじゃ!」


サタンちゃんは胸を張って威張ってみせますが、幼い体ではただの可愛らしいポーズにしか見えません。

尻尾が興奮でくるくる回り、角がピョコンと飛び出しています。


ピピママはそっと角を帽子で隠し、尻尾をスカートの中に押し込みますが、すぐに尻尾がはみ出してしまいます。

幼稚園の入り口では、先生が明るく迎えてくれました。

優しそうな女性で、名札には「あすか先生」と書かれています。


「こんにちはー! サタンちゃんですねー。今日はみんなで遊ぼうね」

「それでは先生、お願いします」


ピピママは先生にサタンちゃんを預けるとそそくさと退散しようとしますが、

ここで事件が起きます。


「ピピー、どこへ行くんじゃー?」

「サタンちゃん、ママはこれから他にやることがあるから、

 サタンちゃんは先生といましょうねー」


「嫌じゃあ! ピピー! ピピー!」

「サタンちゃん、ママはすぐ迎えに来てくれるから大丈夫よ?」

「嫌じゃ嫌じゃー! ピピー!」


サタンちゃんはあすか先生の静止を振り切って、

ピピママの元へ向かおうとしますが、

幼い体では力は出ず、あすか先生に抱っこされてしまいます。

サタンちゃんは尻尾でなおも抵抗しますが、ぎゅっと捕まれここで試合終了です。


……てか、この先生、なんの躊躇いもなく尻尾掴んでますよね……


「ごめんなさい……サタンちゃん」

「ピピー!」


初登園での分離不安による「ママコール」はよくあることで、

それは魔王サタンちゃんとて例外ではありませんでした。

ピピママは心を怨霊のように冷たくして、目を赤くしながら立ち去ります。


「ピピー! ピピー!」


…………


「サタンちゃん、ママならすぐ来てくれるから、それまでこっちで遊びましょう?」

「ふんじゃ! なれなれしくするでないわあ! 妾はサタンじゃぞ! 魔王じゃぞ!」

「はいはい。それじゃあ魔王様、みんなと遊んでくださいねー」


サタンちゃんは威張ってみせますが、本音は寂しくて仕方がありません。

尻尾が元気なくだらんと下がっています。


が、園内に入ると、色とりどりのおもちゃや絵本、元気に走り回る子供たちに目が釘付け。

尻尾が勝手にわくわくして、近くのブロックを突っついてしまいます。


「ねー、みんな! 新しいお友達だよー!」 あすか先生の声に、子供たちがわらわらと集まってきます。

さっきの道中と同じく、すぐにサタンちゃんの尻尾に注目が集まります。


「わー、尻尾だー! 本物?」

「そうだじょ! 魔竜の尻尾じゃぞ!」

「すげー! 触りたいー!」


子供達は好奇心旺盛。サタンちゃんは得意げに尻尾を振ってみせますが、

すぐに大勢に囲まれてパニック気味です。


「みんな近すぎるじょー! ピピー!」

「ふふ、大丈夫ですよー。みんないい子よー」

「あしゅたろとは黙ってるじょ!」

「先生はあすかだよー。アスタロトはソロモン七十二柱だよー」


サタンちゃんは尻尾で床を叩いて威嚇しますが、逆にそれが子供達を喜ばせて輪が広がるばかり。


「なんでじゃー」


サタンちゃんは子供パワーに押されて泣き顔ですが、それもここまで。

お遊戯の時間になると、みんなで輪になって歌を歌います。

サタンちゃんは最初こそ「こんなのくだらないじょ!」と文句を言っていましたが、

みんなの楽しげな声に心が踊り、尻尾でリズムを取って参加しるんでしゅ。


「お昼ご飯の時間ですよー。今日はカレーだよ!」

「カレー? 辛いヤツか? 妾を試す気じゃな!」


サタンちゃんは目を輝かせますが、出てきたのは甘口カレー。

一口食べて「こんなの子供だましじゃー! 辛くても余裕じゃぞ!」と強がりますが、

スプーンをペロペロ舐めて満足気です。


尻尾も上下にぴょんぴょん跳ね、体は常に正直です。

午後の自由時間では、サタンちゃんは砂場で城を作ろうとします。

やはりここは魔王らしく「魔王城じゃぞ!」と叫びながら、尻尾で砂を掘りまくりです。

子供達も「魔王ー」と大喜びで参加し、みんなで巨大な魔王城を完成させます。


「ふふん、どんなもんじゃ!」

「わー、すごいね! サタンちゃん、魔王なの? かっこいいー!」


子供達から褒められて、サタンちゃんは照れくさそうに尻尾を隠します。

その後のお昼寝では、すっかり仲良くなったのか、

みんなと仲良くすやすやと眠ります。


そしてお迎えの時間。


「ピピーーーー!!」

「サタンちゃん!」


サタンちゃんはピピママを見るなり猛ダッシュ。

胸に飛び込んでぎゅっと尻尾まで使ってしがみつきます。


「もう離さないじょ!」

「大丈夫ですよ。サタンちゃん」


サタンちゃんのママ離れはまだまだ時間がかかりそうです。



――――

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