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三話「新年だ! 初詣だ! トリエルだ!」

時は12月の31日大晦日。


トリエル(エミエル)の大暴れで騒がしくなった部屋も元通りになり、

なんだかんだでみんな寝静まる。そんな時間です。


ピッピッピッピー……


暗く静かな部屋で無機質な音が新年を伝えます。


「新年おめでとうございます……あゆむ様」

「今年もよろしく……ピピ」

「はい……今年も、来年も、末永く……」


ピピはそう言うとゆっくりとその手をあゆむの頬へ近ずけます。

ふわりと香る森の香り。


そして……


ぺちーん――と後頭部に当たる尻尾と、ぶっ――とかほるガス。


そう、あゆむが座っているベッドでは

サタンちゃんがアンポンタンことタンタを抱いて寝ているのです。


ターン――ついでにタンタの尻尾も追撃。


「おのれー」

(黒いオーラを出さないでください、ピピさん)


あゆむは苦笑いを浮かべつつ、

「兄貴に電話でもするか」とスマートフォンを取り出します。


……


「メッセージでいいか」


……


「『あけおめ』……と」


数秒で通知がなり、スタンプで『ことよろ』と返されました。


「そういえば、奥さんが妊娠したって言ってたな……」


(俺もお年玉をあげる立場か)


そんな事を考えるあゆむでした。



…………



新年の朝というのは爽やかなものです。

日頃のカオスも嘘のようで、

7畳の部屋には魔王、大天使、転生天使、悪魔、怨霊、おばけがひしめき合っております。

……いや十分カオスですね。慣れかな。『ナレーター』なだけにってか。

……仕事します。


「ふあぁぁぁぁ」


そして、このように大きなあくびをしながら、

尻尾で器用に身体を掻くのは新入りの魔王――サタンちゃん。


「人間ー、妾は腹が減ったじょー」

「パンでも食べてろよー」

「おまえはマリーアンチョハネッチョかー!!」


サタンちゃんはそう叫び、尻尾で器用にアッチを掴むと、

まるでフレイルのように、それをブンブンと振り回しています。


「HEY! HEY! HEY!」


サタンちゃんの尻尾でクルクル回るアッチの手には、

ハンマーに化けたポンポが握らせております。


それを……


「フッ!! そう何度もくらう俺ではないわぁ!! ハーッハッハッハ!! ふぎゃぁ!!」


華麗にバックステップでかわしたあゆむでしたが、

背後からのバアルゼブルの強烈な蹴りが炸裂!!

それをサタンフレイルがカコーーン!!


そこをさらにドギューン!!

もういっちょカコーン!!


ドギューン!!

カコーン!!


ドギューン!!

カコーン!!


とまるで餅つきのようにお手玉されて……

「いよーーーーーー」っというタンタの声に合わせて、バゴーン!!


とサタンフレイルとバアルゼブルのかかと落としが同時ヒット!!


「お、おのえら……かならぎゅほへえ……」


チーン――とポンポが金を鳴らして、タンタが尻尾で「女王様とお呼び!!」とターン!


今日もあゆむはボコボコにされるのでした。


「弱すぎだよー!!」

「なぁぁぁぁにぃぃぃぃぃぃ!!」


ハチマキ姿のアンポンタンの煽りも添えて。



…………



「いてててて……」

「大丈夫ですか……?」


あゆむは今、ピピに膝枕で介抱されております。

今回は特に酷くやられたようで、あゆむはうなされているようです。


「もう……ダメじゃあ……ピピー……」

「そんな事言わないでください……

 ピピは無駄に戦い続けるあゆむ様が大好きです」


「どっちの味方じゃあ……」

「95%あゆむ様です」


そう言うとピピはあゆむのおでこを指で突き、

ニコリと雪のような微笑みをあゆむに向けました。


「だらしない……おしるこが冷めますよ、人間」


本来、こういった役目は天使がするべきなのでしょうが、

ガブリエルママにそんな気は1ミリもなく、彼女は悪魔のように、家主のあゆむを突き放します。


「おのれらは俺に冷たすぎるぞ!!」


ペチン!

あゆむの意見など聞く気もなく、サタンちゃんは尻尾であゆむをペチン!


「うるしゃい! 抱き枕風情が、妾に意見言うでないわあ!」

「ならば! もうトイレについてってやらん!!」

「ふんじゃ! 妾にはピピがいるんじゃ!」

「はい。サタンちゃん」


ピピはそう言うと、サタンちゃんの後ろに回ってツインテールを結ってあげます。

サラサラの金髪が二本の愛らしい尻尾を作り出し、

赤いリボンが角と同じで、まるでそういうアクセサリーであるかのようです。


「……いつの間に、そんなに仲良くなったんじゃ……?」

「ふふっ、女子三日あれば刮目してみよ……ですよ」

「そうだじょ!」

「それを言うなら、男子三日会わざれば刮目してみよだぞ」

「聞いてないじょ!」


スルーされました。


「ふふ。じゃあ、おしるこにしましょうか」


ピピのその声に反応するように、みんなテーブルの周りに集まってきます。

先にトリエル……というかエミエルが食べていますが、

あゆむのことをじーっと見つめながら餅をびよーーんと伸ばしていますね。


「もう……見てたなら止めてくれよー、エミ」

「……応援はしてたよ」


あゆむは食べながらエミエルを見ますが、

その彼女の視線はピピに向いています。


「……応援してたもん」


いくら笑顔の天使といえど、エミエルこと桜井恵美は人間の少女だったわけです。

つまり、ジェラシーを感じてしまいます。

しかしエミエルは笑顔の権能を持つ天使なので、それが強制浄化される……わけなんですが、

やっぱりそこは乙女心。

強制浄化されてもジェラシーが湧いてしまって、たまに暴走するわけです。


例えるならばブレーカーが落ちるみたいなイメージですね。


……


すると、そうこうしてたら、エミエルの意識を感じてかなのか、

彼女のハローがピンクの煙をあげてポミーーーーーー!! っと鳴っております!

これは嫉妬の熱暴走による、笑顔の権能強制発動です!


「なんじゃあ!? エミの暴走か!?」


そう、それはまさに恋と嫉妬の大暴走!!

その暴走は、おしるこのお餅が意志を宿します!


「Happy New Year」


おもち達は何故か英語で挨拶をすると、ペターーーー!!

彼らはあゆむとエミエル以外の口と目と耳を全部塞ぎ、


「エミちゃんはあゆむが好き好き好きーー!!」と大暴走!


これにはエミちゃんもポミー!


「いやああああ!!」


眷属がいっぱい現れて、クマさんやおもちゃ箱も大暴走ー!

キラキラのリボンが飛び交い、

カーンカーーン!! とベルまで鳴らして、そこはもう結婚式会場です!

エミちゃんの願望を叶えようと、可愛く暴走しています!


ポミーーーーー!!


エミちゃんのハローは煙を出しながらピンク色にピコンピコン!

もう限界突破です!


「エミちゃんはあゆむが好きで好きで仕方がないのーーーーーー!!」

「やーめーてーーーーー!!」


ポミーーーーーー!!


あゆむを思うエミちゃんパワー大暴走でお部屋全体がポーーーーン!!

ダメージこそありませんでしたが、煙のせいでお掃除が大変だったそうです。


なお、おしるこは無事でした。


…………


無事掃除も終わり、あゆむはお茶をすすりながらため息を吐きます。

新年早々、権能暴走で大掃除ですからね。

それはため息の一つでも出ようというものです。


「はあ……エミでも油断出来んな。おいアンポンタン、羽子板でもやるか?」


あゆむは何気なくアンポンタンを誘っただけですが、

この誘いを挑発と受け取ったのか、アンポンタンは親指を下げて返事してますね。


「ピピに膝枕でもされてな!」

「どんな返事の仕方じゃい! クソ! 吠えずらかかせてくれるわ!」


…………


かくして舞台は何故か超展開の河川敷へ。

おばけ達がポテチとコーラを売り、トリエルがポテチをバリボリ食べながら見守る中、

アンポンタンとの新春初対決が始まろうとしております。


「フッ……ゆくぞ!!」

あゆむが取り出したのは一見普通の羽子板ですが……

「ただの羽子板ではない!! この羽には朱色が使われておる!! 覚悟せえ!!」


どうやら朱は魔除け、つまり除霊効果があるという理屈らしいです。

大丈夫なんですかねえ……?


「ヘッGoHOME!!」


アンポンタンはグイッと指を下げてやる気十分です。


「くらえい!! あけましてさよなら羽子板じゃあーー!!!」


そんなことを叫びながら、ポーン! とあゆむは朱色の羽を打ち出しますが、

アッチがペッと霊気を吐くと、それは意志を持って、くるりと一回転!

そのままあゆむのアゴにスカーン!


さらにそこにアッチがタンタを打ち出してズドーン!!

あゆむは後ろからどてーん!!


そしてトドメはお約束の……スリスリから……ぶーーーーーー!!

最後はターン! と尻尾ビンタ!

ポンポも顔をペチペチ叩いております!


「……お前らズルいぞ」


今日も今日とてあゆむはコテンパンにやられ、

「あんぽんたん……っと」お正月らしく(?)墨汁でおでこに落書きされました。


「書くな! ええい、もういいわい!」


あゆむはどっこいしょと起き上がると、ズカズカと歩き出します。

すると興味を持ったのか、離れた位置で見てたトリエルが飛んできました。


「どこ行くのー?」

「初詣じゃい」


初詣と聞いて、トリエルもニコリと、新春初の『桜色の微笑み』であゆむの後ろを歩きます。


「トリエルも行くー!!」


トリエルも行くということで、どっかのバカ親もマッハで参上。

こういう時の彼女は本当に風です。ビューン!


「トリエルが行くならママであるわたくしも」


そこに面白そうだと思ったのか、続々と集まって来ます。


「では執事である私も」「妾も行くぞー!」

「ではわたくしも」


こうして、結局みんなで初詣に行くことになりました。



――――



近所の神社では赤いのぼりが多く上がり、

出店のいい匂いもしています。


太鼓の音や空高く上がる凧が、お正月特有の高揚感をあげてくれます。



「ドンドコドン! ドンドコドン! ドドンド、ドンドコドン!」


そんなお正月の空気にハイテンションのトリエルが、

太鼓を叩くように指を動かすと、笑顔の権能が発動して

おばけ達が太鼓を叩きながら行進していきます。


それは空中を舞い、虹色の音符を映し出しながらキラキラと広がって行きます。


「ママーアレすごいねー」

「なにかの撮影か知らねー」

「ネットにあげればバズるかなー」


あゆむも、そんな笑顔の権能を温かく見守りながら神社に入るのですが……


「……なんか今神社に入る瞬間にバリって鳥居から音しなかったか?」

「知らなーい!」


まあ、笑顔の権能だし大丈夫かと、

あゆむは一抹……いえ、三抹の不安を抱えながらも奥へ入るのでした。


……が、


「ねー、このおみくじ、大凶しかなくない?」

「なんか空気重くない?」


などと異変が……起こり始めます。


「おい……トリエル」とあゆむはトリエルを見るのですが、

そこへ忘れていた存在が横切ります。


「フン! ここが神社か! ちゅまらんところじゃ!」


そう、サタンちゃんです。

元とはいえ、魔界の長であり、悪魔王。

最強にして最悪の悪魔であるサタンです。


「あ……」


ここであゆむはあのバリっという音を理解します。

そうです。サタンちゃんが壊したのです。

サタンちゃんのその権能は反逆。


大幅に弱体化したので気にしていませんでしたが、その権能は健在です。

サタンちゃんの権能が神力とぶつかり合って、

サタンちゃんが勝ってしまったのです。


「何してくれとんじゃい!!」

「知らんわ! 妾のせいでないわぁ!」


ぺちーん!!


サタンちゃんの尻尾叩きは通常何も出ませんが、

壊れた神力がサタンちゃんと共鳴したのか、

その音に合わせてこうもりが飛び出します!


「きゃーーーーー!!!!」

「怖いよーーーー!!!!」


「ええい!! やむを得ん!! トリエル、許す!! やれい!!」


このままサタンちゃんによって神社の力が壊されるのはまずい。

あゆむは仕方なく、最後の手段(破壊神)を使います。


「はーい!」


トリエルがそう言うと彼女はシルクハットをぽーい!

ハローがピカー!


そして


「Hello」


さあ……あけおめ(権能発動)だ……



ゴゴゴゴゴゴ…………



ポエーーペーーーペーーー!


すると、どこからともなく、このような音と共に空から牛車が出現!

中からは神様の使いが!!


「新しい神様の……おなーーりーー!!」


そう言って勝手にトリエルを神様に指名!!

トリエルは社の中にスー!


扉パカー!!


「みんなーー笑おーー!!」


トリエル神はおばけを引き連れパァァァ!!


「え……あれほんとに神様?」

「なんか胡散臭くない?」


これにガブリエルママカチーン!!


「よくもわたくしの

可愛い可愛い可愛い可愛い可愛いトリエルを侮辱しましたね……!!」


ガブリエルママメガネをぽーい! ハローがピカー!!


大天使ガブリエル様の降臨です……


ドドドドドド……


ハァァァァ……アアアアアアア!!!


空から光と羽が歌声を共にパサー!!


神社から大量の天使がバンザイしながらわーーーい!!


大天使ガブリエル様の繁栄権能発動で、

神社は神界と天界のスーパーハイブリッド状態に!!


なんかもうすっごーーーい!!


「すげー!! 買うおみくじが全部トリ吉だって!!」

「やったー!! ガチャ大当たり!!」

「FXで大当たりきたぞーーー!!」


「な、なんかすごいことになってるな……!!」


このまま行けばワンチャン平和なんじゃ?


とあゆむは思いましたが……そこは破壊神(トリエル)でした。


ビリ……ビリビリビリビリビリビリビリビリ!!


突如神社全体がスパーーーク!!

白い煙もモクモクー!!


「フン! 異なりゅ力がこんなにあちゅまっとりゅんじゃ!! 喧嘩になるわぁ!」

「その権化はお前じゃい!!」

「主に向かって無礼な!」


ここでバアルがあゆむを上空へキーーーーク!!

あゆむ「ぎょえええええ!!!」


「わー! トリエルも飛ぶー!!」


ここで喧嘩になったトリエル神パワーが大ばくはーーーつ!!


お社ドドドーーーンと大空へーー!!


天使も神様の使いもみんなお社を追いかけてーーー…………



ちゅどどどどどどーーーーーん!!!



様々な神や天使の力が一箇所に集まり、そこに複数の権能が集中して強化された結果、

一時的に超幸運をもたらしましたが、それはすぐにオーバーヒーーーーート!!!!


大爆発を起こし、神社は木っ端微塵に壊滅しました。


「あははっ!! お正月って楽しいね!!」

「どこがじゃーーーーーーー!!!!」


ピューーーーーー…………キラーーーーン!!


あゆむはそのまま空高く飛ばされ、月まで行った後に

かぐや姫から借りた牛車で帰ってきたそうです。


「あのー……牛車って借りられます?」

「お代は月見バーガーでいいですよ」

「……覚えてたら買っときます」


…………


「月のお土産はー?」

「あるかーーーー!!!!」



――――


どこぞの異世界――ドコカーノ。


あゆむ達の世界では新年ですが、

この世界にはそうした暦の概念は薄いようです。

当然新年の祝いなどあるはずもなく、

荒廃した荒野には、長い金髪をなびかせる一柱の大天使様が、

夜明けの城を眺めております。


「……魔王を倒せば、きっと家に帰れる……」


ミカエル様は魔王城を見上げながら、剣の柄を強く握ります。


「……終わらせる」


遠くの空にヒビが入り、赤い目を覗かせた気がしましたが、彼女は歩みを止めません。


「ミつ……ke……タ」


そんな声が聞こえた気がして、ミカエル様は一瞬だけ足を止めました。

しかし、すぐに前を向いて、魔王城へと突入していくのでした。



――――

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