外界からの脅威 2
シャルチフ会長はそのままふらふらとなりながら、ボトボトと自身の内臓を床に散らしながら、部屋の奥へと進んでいく。ミトラは懐から魔法陣が描かれた木の札を取り出すと、「アナーヒター、来てくれ。シャルチフ会長を見つけた』と連絡を入れる。そして部屋の中を警戒しながら一歩、また一歩と進み、彼を追いかけていく。
相手はもう死にかけ。反撃する余裕も残っていない。シャルチフ会長自体は警戒しなくても良いだろう。だが、この部屋は別だ。何かトラップが仕掛けられている可能性は捨て切れない。
最後の最後、自分を巻き込んで死ぬつもりなのかもしれない。
しっかり周囲を確認する。
大きなテーブル、その上には色んな書類や実験メモ、緻密な計算が書かれた資料が杜撰に置かれている。近くにはふかふかのソファーが置かれており、疲れた時にはベッドとして使用していたのだろう。本棚も難しそうな本ばかりが並んでいる。
この部屋だけ見れば、シャルチフ会長が優秀な魔術師であるというのが分かる。自分の目標のために計算を行い、実験を繰り返す研究者気質の真面目な魔術師。しかし、彼はその目標のためであれば手段を問わない冷徹で、恐ろしい人物であるというのも事実。
道さえ間違えなければ……。
そのように考えながら進むと、そこにあったのは巨大な魔法陣。床に彫って描かれている。そしてその中央にシャルチフ会長が座り込んでいた。今にも死にそうな状態でひゅー、ひゅーと浅い呼吸を何度も繰り返している。
「諦めろ、何をしようとしてるか分からない。が、これ以上長引かせても意味はない。お前は苦しみ、被害が増えるだけ。お前一人が諦めるだけで何十人もの命が救われるんだぞ」
そのアナトの言葉はシャルチフ会長には届かなかったようだ。彼は必死に魔力を生成、ゆっくりと練り上げて体外へと放出し始める。
そこに先ほど連絡を入れたアナーヒターもやってくる。
「待たせたな、アナト。しかし、何だこれは……?この魔法陣がお前の奥の手ということか?」
アナーヒターは魔法陣を見て分析を始める。
魔法陣というのは基本、いくつもの円陣を重ねて描く。例えば、最も中央にある円内部には魔力を別のエネルギー……熱や光といったエネルギー変換を行う。二つ目の円陣には必要な計算式。必要な魔力量であったり、質量、熱量を書く。三つ目はエネルギーを拡散させるのか、一点に集中させるのかと方向性を決める。円陣を重ねれば重ねるほどより複雑で、さまざまな魔術を発動させることが出来る。が、無限に円陣を増やすと魔力効率は悪くなっていく。ので、三つで構成するようにまとめるのがセオリーだ。
しかし、この魔法陣は何かが変だ。
明らかに三つ以上……数え切れないほどの円陣で緻密に計算式や図形が描かれている。複雑すぎて何をしたい魔法陣なのか全く読めない。そのうえに効率がかなり悪い。どんな質の悪い三流魔術師でもこの魔法陣が駄作以外の何物でもないのがはっきり分かる事だろう。




