外界からの脅威 3
しかし、アナーヒターはこの異様な魔法陣に嫌な感覚を覚える。不気味で気持ちの悪い、術聖の自分でも理解出来ない得体の知れないナニカであると理解する。
「もっとゆっくり理論を練り上げるつもりだったんだがな……仕方ない」
シャルチフ会長は魔力を魔法陣へと流し込み始め、魔法陣が動き出す。それぞれの円陣、図形、計算式がまるで機械の歯車のように互いに呼応し合い、回り出す。
さらに彼は懐から何かを取り出す。それは何かの破片であり、また異様な気配と魔力を放っている。
その正体は元々、調和神アフラによって生み出された武具の一つ。彼女が人々へと時代を明け渡す事を決めたその時、自身の意思によって神具保管庫の最奥に封印、管理されていたモノ。そして今から半年以上ほど前、メイガス・ユニオンによって雇われた傭兵によって盗まれた神代の遺物の一つ。
神槍レヴァレ・ケルム、そのオリジナルの破片である。
シャルチフ会長はそのレヴァレ・ケルムを魔法陣に向かって突き刺す。すると、周囲の物質、空間を含めて泥のように変化し、情報が書き換わっていく。
一体、彼が何をしようとしているのか。気になる所ではあるが、このまま見逃すわけにもいかない。なるべき生きたまま捕縛したかった。だが、選択の機会は与えた。もう見逃すことはできない。ミトラはシャルチフ会長を止めようと剣に魔力を込め、攻撃を行う。
「絶大剣術〈ケレリタス〉!」
詠唱と共に振られたその刃はまさに光の如き速度でシャルチフ会長に襲いかかる。が、魔法陣から大きな魔力が巻き起こり、その反動で周囲に強い衝撃を与える。空間は震え、力強い突風を生み出し、その刃の動きは完全に止められてしまう。
刃だけじゃない。アナーヒターとミトラ、二人もまたその場に留まるのが難しいほどの力でどんどん後方へと飛ばされそうになる。部屋の天井、壁にはヒビが入り、今にも壊れそうだ。
「これが……神の力ってやつなのか………!?」
この魔法陣は人を神へと押し上げる神誕計画の要なのか!とアナーヒターは考える。他者の魂を取り込ませるという実験内容は知っているだけで、実際に実験に参加、見学をした事があるわけではない。ので、この複雑な魔法陣で周囲の魂を取り込もうとしているのかと予測を立てる。
だが、シャルチフ会長は馬鹿にするように嗤う。
「く、クククッ、アナーヒター。キサマは昔から優秀な魔術師だった。だからこそ術聖へと上位職を手にし、神誕計画へとたどり着いた。だが、最後までキサマが気づかなかった点がある。それは神誕計画には予備のプランがあったということだ……!」




