悪夢の再開 15
アナトはニタニタと不気味に笑い出す。それもまた、殺意や怒りといった重く、鋭い感情から来るような表情ではない。壊れないおもちゃを見つけた、自分の心を強く刺激する道具があったという、まさに嬉々。楽しく遊ぶ子供のように軽く、しかし衝動的なエネルギーに満ち溢れた恐ろしい感情であった。
それを見たトーゼツの心を一瞬にして恐怖が支配する。
これは本当に自分が知っている姉なのだろうか?いいや、そもそも自分と同じ人なのだろうか?もとよりアナトは人の身を超えた力を持っていた。だが、これは力の強さ云々ではない。明らかに人の持つ感情、意思、姿ではない。
一体、アナトは何になってしまったんだ?考えれば考えるほど、トーゼツの中にあった恐怖と困惑が増大していく。
そんな中、アナトはガタガタと今にも壊れそうなマリオネットのように、関節を動かしながらトーゼツを指差し始める。
「お、おオ…おマえ………」
音声もまた壊れかけたラジオのようである。
「おマえ……おもシロい、良イなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そういって、アナトは再びトーゼツを壊そうと近づいていく。
(考えてる暇はないか!殺すわけにはいかないけど、あんな化け物、手加減していたら止まんない!とりあえず、四肢でも斬り落として自由を奪う!)
トーゼツの固有技能も利用すれば、四肢程度、簡単にくっつけられる。今はこれ以上、被害を増やさないようにすることが重要。そう判断したトーゼツは魔力を刃に込め、詠唱を開始する。
「上級魔術〈アウラ・プロスペラ〉!上級剣術〈瞬時断絶〉!」
一つ目に詠唱した上級魔術によって強い風が吹き荒れ、振り下ろそうとする刃の速度を上げる。そして、二つ目の上級剣術で素早く、アナトの体を斬り刻もうとする。のだが──
ガチッ!ガチガチガチッ!
鉄が砕ける嫌な音が響く。
トーゼツの剣撃は全てアナトに命中した。諸に攻撃を喰らったのだ。というのに、アナトの肉体には一切、傷がない。傷がついているのは、刃の方であった。刃こぼれ、という言葉では収まりきれないほどに、ひどく鈍った状態になっていた。
「おいおい、硬すぎんだろ……」
思わずトーゼツの口からぽつり、と呟いた。その刹那、トーゼツの肉体は強く吹っ飛ばされ、何度も血だらけの地面をバウンドしていく。骨は砕け、尖った骨が内臓を突き刺す。身体中の血管がちぎれ、出血を起こす。身体中を痛みが襲う。
すぐさま固有技能『不屈の魂』を用いて、肉体の再生を行う。
(俺程度の攻撃じゃあ、姉貴にダメージすら与えられないのかよ……。固有技能で蘇るからって無限ってわけじゃない。いずれ細胞が劣化していき、終わる。このままゾンビ戦法を繰り返すだけじゃあダメだ。アナトをなんとか目覚めさせないと──)
トーゼツは立ち上がる。彼が決して諦めることはない。アナトを助けるまで。




