悪夢の再開 12
アナトから放たれる魔力量、気配はもう化け物などというレベルを超えていた。あの時見た調和神アフラと同等。もしくはそれ以上。
シャルチフ会長は自身を襲う痛みなど忘れて、アナトへと近づいていく。
これこそが、自分の求めていた神!自分が望んでいた存在!
これさえあれば、今の戦況をひっくり返せる。神々を見返し、今度はセレシアが世界を支配する立場へとなれる!この実験データを以て、自分も神へと至ることだって──
どんどん頭の中で夢が膨らむが、とりあえずこの状況をどうにかするのが先決。
既に彼女には魔術で首輪をつけている。私の命令を無視しようものなら、彼女の脳に強い負荷を与えて行動、思考を簡単に阻害する事だって出来る。
「さぁ、新神アナトよ!地上へ行け!冒険者連合の奴らを倒すのだ!」
アナトは動かない。
「私の命令が聞けないのか?いいや、まさかまだ意識がはっきりしていないのか?しかし、瞳孔が動いている。完全に無意識というわけではあるまい」
アナトの状態をよく確認していると──
「ジャマ」
その言葉と共に、アナトの右脚がシャルチフ会長を吹き飛ばす。。
「ッ!!」
一体、どれほどのパワーだったのか。それは一瞬で地面を抜け、シャルチフ会長を上空数百メートルへと押し上げていた。ぐるぐると空中で体が回り、あちこちから肉が裂け、内臓が散っていく。
ぐちゃり、と生々しい音と共にシャルチフ会長は地面へと落ちる。しかし、人というのは脆いくせに、意外と壊れにくいようだ。それでも彼は生きていた。
「あ、あぁ……ぉ、ぉぉ!!」
俺は神を生み出した……はずだ。
だが、あれは本当に神なのだろうか?
神のはずなのだ!
なのに……この湧き上がる感情はなんなんだ。
頭の中で思考を繰り返す最中、アナトもまた大地から飛び出し、地上へと降り立つ。
「あぁ、あぁぁ!!」
情けない声をあげながら、ずるずる、と体を引き摺りながら、彼は何処かへと向かっていく。それはまるで逃げるように、しかし目的地があるようでもあった。
アナトを制御するための魔術を仕込んだ事も忘れて……いいや、そもそもそんな魔術があったところでアナトを彼が制御出来るとは思えないのだが。
しかし、もうアナトはシャルチフ会長に一切、興味がないようだ。彼女は遠くを見ていた。
「あ、ぁァ。ワタ、しは?ワタシは?ワタワタ、ぁ、あ」
それは壊れた機械音声のように。恐ろしく、不気味に繰り返す。
分からない。
何もかもが分からない。
場所、時間、自分自身すらも分からない。それは思い出せないというより、理解出来ない。
でも、一つだけ分かる。
自分は今、自由になったということだけ。
「ははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!」
その笑いがメイガス・ユニオン全体へと響き渡る。気持ち悪く、嫌らしく、最低なほどに。
そうだ、あの日の悪夢が再び始まったのだ。前回よりも、最低最悪な状態で。




