悪夢の再開 11
再び視点は戻り、そこはメイガス・ユニオンの地下実験施設。シャルチフ会長率いる研究員たちがアナトを神に生まれ変わらせようと着々と準備を進めていた。
「脳波、心拍、共に正常。MALも安定している」
「こちら、準備完了。いつでも魂を送る事が可能です」
「こちらも準備完了、あとは会長の合図だけです」
どうやら、もう準備は終わったようだ。
シャルチフ会長は緊張していた。あとは自分が実験開始を宣言するだけで、我々の悲願が叶う。シャルチフ家の目的が達成されるのだ。
彼の手が小刻みに震えていた。それは歓喜から来る震えなのか。それとも神を生み出すという禁忌に触れた実験を成功させてしまったという恐怖からか、もしくは──
(……いいや、違う!失敗などありえない。私の理論は完璧だ。今、ここで私は解放される。この国は前に進むのだ!そして新たな時代の幕をあげる!)
シャルチフ会長はとうとう宣言を行ってしまう。
「始め!!」
その言葉と共に、周囲の魔法陣が展開され、機器が作動し始める。そして、どんどんアナトの肉体に何かを注ぎ、満たしていく。彼女の体が得体の知れない何かが体を駆け巡り、細胞一つ一つを書き換えていく、それは彼女を今とは別の存在へと造り直していくため。
さぁ、どうなる!
さぁ、神が降臨するのか!!
そのシャルチフの大きな期待と予想は今、大きく裏切られてしまう事になる。
「ッ!!」
突如として大きく地面が揺れ動く。
地震か?いいや、前にも同じ事があった。既視感。そうだ、五年以上前、アナトに実験を行ったあの日。調和神アフラがメイガス・ユニオンへと侵攻してきたあの時と同じ!
彼女は理を超えた存在に生まれ変わったのだ!
「はははははははははッ!そうだ、成功だ!私の実験は──」
彼の笑いが響くその瞬間、地震とは違う大きな衝撃が襲いかかる。
……。
…………。
一体、何が起こったのか、理解出来なかった。
全身が痛い。眼も眩んでしまってまだ周囲の状況が分からない。キーンと耳鳴りも酷い。鼓膜は破れていないようだが……無事というわけでもなさそうだ。骨や内臓にもダメージが入っている。無理に体を動かそうものなら、より出血するだろう。だが、動かないわけにもいかない。
体を起こそうとするとガラガラ、と瓦礫が崩れるようなよく分からない音が耳に入ってくる。それから立ち上がり数秒後、ようやく眼が、意識が戻って来る。そして、そこにあったものは──
崩れた実験室。私以外の研究員も吹っ飛んでおり、運悪いものは明らかに頭が割れて死んでいる。しかし、その空間でただ一つ、無傷で立っている姿があった。
それこそ、被験体アナト・サンキライ。いいや、神へと昇華しただろう完璧な存在。
「新神アナト・サンキライ……!」
シャルチフ会長から無意識のうちに出た言葉であった。




