悪夢の再開 10
「落ち着け、そもそも私たちも宣言しか聞いていないんだ」
そういってアナーヒターはトーゼツを落ち着かせようとする。その言葉を聞いたトーゼツはミトラの肩を掴んでいた両手を離し、深呼吸を行う。
……ようやく脳が冷静な判断を出来るようになったのか、彼の口から出たモノは「ごめん」とミトラに向けた謝罪の言葉であった。ミトラはその言葉にこくり、と頷き、謝罪を認めるのであった。
「冷静になったか?」
「あぁ、問題ない。説明を続けてくれ」
「それじゃあ、より詳細な説明になるが、宣言は今から一時間ほど前にメイガス・ユニオン全体に行われた。宣言の声はシャルチフ会長の声だった。だが、宣言内容は『ミトラを討伐した』だけ。死んでるのか、生きているのかも分からない。嘘か、本当かもな。だけど、そのせいでメイガス・ユニオンの下がっていた士気が戻りつつある。この状況が続けばどちらが勝者になろうと、負傷者、死者数がとんでもない数に跳ね上がるぞ。今すぐにシャルチフを捉えるか、アナトを見つけるかしないと──」
それを聞いて、トーゼツは歩き始める。
「もう大丈夫だ。俺のやるべき道は見つかった。二人はこのままシャルチフ会長の捜索を続けてくれ」
その言葉に、アナーヒターはすぐに察する。それは彼と何年も旅をしてきた経験からか。それとも──
「ま、待ってよ。アンタはどうするつもりなのよ!?」
それに対し、ミトラはトーゼツの行動、発言を理解出来なかった。今、ここから立ち去ろうとする彼の手を掴み、引き止める。
「俺はいつもと同じだ。俺の行動指針はいつ、何処であろうと変わらない」
ミトラの眼に映るのは、いつもと変わらない彼の姿。まっすぐ、迷わず自分の理想へと向かって進む少年の姿がそこにはあった。
「助けに行く!それがミトラでも、冒険者でも、メイガス・ユニオンでもな!」
ミトラは思い出す。この男はどうしようもない馬鹿だった。それでいて、子供のような夢を胸張って語る、どうしようもなく明るく輝き続ける星。私も、彼の光を知って……。
「今も一刻と状況は悪化してるんだろ?今も戦いは続いている。あちこちで死ななくて良い命が散っているんだ。それを助けられるというんだったら、俺は行かなきゃいけないんだ」
「……アンタはそういう奴だったね。シャルチフはこっちに任せて!」
そう言って、ミトラは手を離す。
「ああ、そっちも頑張れ!!」
そう言って、トーゼツは走っていく。多くの人を助けにいくために。
「さて、私たちも行こうか。シャルチフ会長を見つけにね」
そのアナーヒターの言葉と共に、ミトラもまた進み続ける。
自分のやれる事を全力で。この戦争を終わらせるために……。




