悪夢の再開 5
ラツィエルの権能の穴というのは、展開出来る技の数だ。
ラツィエルの権能が具体的などのようなものなのか、そこまでは把握していない。が、これまでの攻防戦でラツィエルが攻撃しながら防御の技を展開したり、防御しながら反撃したりなどをしていなかった。このフィールド内では詠唱も、魔力も必要ないのに、だ。
となれば、考えうる答えは一つ。
技の展開は一つまで。
攻撃している間は、身を守ることが出来ない!
(ミトラが意思を逸らしてくれたことで、攻撃を入れる隙が生まれた!今、全力で押し返し、ラツィエルを倒す!)
血液だけじゃない。この場にある水分をかき集め、一斉に発射させる。先ほどまで蜂の巣にされていたのはミトラたちであった。が、立場が一気に逆転し、今度、体に穴が開けられていくのはラツィエルの方であった。
形勢逆転されてしまったこと、身体中に開いていく穴、脳に送られてくる苦痛、それらがラツィエルの思考を乱していく。権能からの術展開が出来ない。
「はぁぁぁぁぁ!!」
ミトラもまた、動き出す。
腕に力を入れ、すぅー、と呼吸を整える。
「上級剣術〈瞬時断絶〉!』
詠唱と共に刃に魔力が灯る。そして、勢いよく胴体を切り裂く。
「ッ!」
切断、とまではいかなかった。ミトラにも疲労が溜まってきている。魔力量だってかなり消費してしまっている。〈瞬時断絶〉の威力が本来よりも数段、落ちているのは明らか。それでもぐちゃり、と肉が切り裂かれ、斬り口から骨が垣間見える。
今のラツィエルになら、この程度の攻撃でも充分なダメージを与えられるだろう。だが、それだけでは終わらない。ラツィエルの血液が凝固し始め、まるで釘のように尖り、体を突き刺し始める。
いける。
このまま押し切る!
しかし──
「舐めるなァ!」
ラツィエルを中心に大きな熱風が発生。それは竜巻のように渦を巻き、また雷が発生する。それにより二人は一気に態勢を崩し、大きく後方へと吹っ飛ばされる。
「はぁ……はぁ……さすがに冷や汗をかきましたね」
ラツィエルは急いで自分の権能を用いて体の治療を行なっていく。
(しかし、もう私の権能をここまで分析するとは……!?さすがはアナーヒター先輩だ。でも、もう油断はしません。ここで二人を確実に仕留める!)
ラツィエルは自分がこの空間に広げた力を今度は肉体へと収集させていく。それだけではない。この世界に広がる熱量、星の輝き、重力全てがラツィエルの創り出したモノ。宇宙からどんどん輝きが失われていく。と同時にこれらのエネルギー全てがラツィエルの中へと収まっていく。
そのラツィエルから漏れ出るエネルギー量は太陽フレアにも匹敵する。まさにその姿は神そのものに感じてしまうほど、恐ろしいものであった。




