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聖なる骨  作者: 骨素子 陽晶


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第9話 骨、冒険者になる

 「あの」 ダメなおっさんに打ちひしがれている俺たちに、別の受付のお姉さんが話しかけてきた

 「先ほどは、うちのものが申し訳ありませんでした。それで当ギルドに何か御用ですか?」


 「エレーナさん。ただいま戻りました」


 「ああ!エメラちゃん。遅いから心配してたのよ。大丈夫だと思っていたけど、無事で本当に良かった」


 おや、知り合いのようだ。


 「はい。ご心配をおかけしました。骨の洞窟について報告がありますが、その前にこちらはクレストさん。ギルドに登録したいとのことです」


 「クレストといいます。冒険者になりたいんです、登録をお願いします」


 「クレストさんですね。初めまして、冒険者ギルドベルガイア支部受付のエレーナと申します。新規登録とのことですが、冒険者ギルドの説明は必要ですか?」


 「はい、お願いします」


 「では最低限の必要事項だけ説明いたします。さらに詳細を知りたい場合は二階にある図書館に冒険者ギルド規則がありますので御参照ください。それでは、まず第一に冒険者は自己責任の名のもとに自由を表明する職業です。依頼を受け、報酬をもらう。究極的にはそれだけです。冒険者ギルドはその仲介役だと思ってください。冒険者にはランクがあり、下から順にアイアン、ブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、オリハルコンとなっています。原則自分のランクを超える依頼は受けられません。あとは犯罪など法を犯さないようによろしくお願いします」


 「・・・・・・え?それだけ?」


 「はい、それだけです」


 「そんなんでいいの?」


 「そんなんでいいのです。あまり細かく規約を設けても冒険者の方々は覚えてくださらないので」


 なるほど、シンプルな奴らばっかりってことね。でも一応聞いとくか


 「冒険者同士でもめた場合は?」


 「よほどでなければギルドは介入しません。もちろん相談されればアドバイスはしますし頼まれれば仲介もしますが」


 おお、それはありがたいな。


 「あと、壁や物品を破壊した場合は損害賠償を求めます」


 ・・・・・・サラサラーっとセリフがでてきたな。あー、これやってますね、後ろの連中。


 「なるほど、理解しました。ありがとうございます」


 「はい、ではギルドカードの作成に移ります。この水晶に手をかざしてマナを注いでください」


 「これは?」


 「これは魂の水晶といってクレストさんのアニマを記録して、その情報を紐づけしてギルドカードを作成します。これによってクレストさん以外の方の悪用を防ぎます。加えて魔物の討伐実績なども記録されます。情報については具体的には種族名と主属性がわかります」


 「属性とは?」


 「属性とはその人が持つマナの種類です。地、水、火、風、光、闇があります。人は主属性と副属性のニ属性をもちそれぞれのマナの魔法の適性と耐性を持ちます」


 ふむふむ、じゃあ俺も魔法を使えるようになるのか。それはテンション上がるなー。


 「しかしクレストさんは骨人族なので光と火は無理でしょうが」 なんですと!?


 「それは、またどうして?」


 「スケルトンは光と火に特に弱いですから、種族的にあり得ないといわれています」



 「そうなんですか?」 俺には光と火の才能はないのか


 「かわりに。闇に対して高い適性と耐性をもっていますね。骨人族の方々は主属性と副属性のどちらかは必ず闇になりますからね」


 ほうほう、闇ねぇ。まぁそれもかっこいいからよし。


 「じゃあ、副属性はどうやって調べるんですか?」


 「修行してください」


 「・・・あ、はい」


 「あ、種族名とは?」


 「種族名とはその人がその種族としてどのくらいの位階に達しているかの指標です。あらゆる命はアニマを鍛え上げることでその存在を更に高位の存在へ押し上げることができます。いわゆる存在進化のことです。スケルトン種なら最下級のレッサースケルトン、スケルトン、ハイスケルトン、ナイトスケルトンや、メイジスケルトンなどですね。もちろんセンシティブな情報ですので非公開にもできます。属性についても同様です」


 そういえば、エメラがそんなこといってたな。進化いいなぁって。とか考えてたら 「そうなんですよ!クレストさんは一度進化してるらしいんですよ!すごいですよね!」 と大声で言っちゃった。当然酒場の連中にも聞こえてしまったようで  「なんだ、なんだ?」 「あいつ、進化したらしいぞ」 「うそ、すごいじゃない」 「まじかよ!?めったに起こらないのに」 「いいなぁ。あたしも進化してみたい」 とか聞こえてきた。そんなにすごいのかよ進化。


 「あ、す、すいません。私ったら個人情報なのに」 と申し訳なさそうにされてしまった。種族名とか属性とかこの世界ではプライバシーみたいなものなのだろうか。


 「いいよ、いいよ。減るもんじゃないし。それに進化ってすごいんだろ。じゃあ見てもらおう」


 「よろしいのですか?」


 「あいあい。大丈夫」


 「では水晶にマナを注いでください」


 差し出された水晶はキレイな透明なまるい球だった。占い師が使ってそうなやつだ。言われるがままに、マナを注いでいるが何もおきない。エメラだけじゃなく、酒場の奴らもこっちに来て俺の様子をみている。もしかして俺異世界人だから反応しないんじゃと不安になってきたところで、水晶が白く光り始めた。


 「!これは、そんなばかな!?」 エレーナさんがなんかえらく驚いているが、もしかして俺ってなんかすごい力とかもってたりして、そんな顔されたら期待しちゃうじゃない。やっぱ異世界転生はチート持ちってか、うへへへへ。


 しばらくして光が収まると水晶の中に文字が現れた。現れたんだけど読めない。


 「あの、これなんて書いてあるんですか?」 エレーネさんに聞いてみるが彼女は聞こえていないのか難しい顔をしている。


 「あのー!エレーナさん?」


 「は!し、失礼しました。その、驚かないで聞いてくださいね」 なんて思わせぶりなことを言ってくれちゃった。おいおいそんなにすごいのかよ。ワクワクがとまらないんだけど。


 「まず、クレストさんの種族名は、その、レッサースケルトンでした」


 ・・・うん?レッサースケルトン?  「しかし、主属性がひか・・・「レッサー!?レッサーってどーゆこと!?普通のスケルトンより下ってこと!?」」


 「え、ええ、そうなります。しかし主属性が・・・「うそでしょ!?俺一回進化してんだよ!さっき最下級がレッサースケルトンって言ってなかった!?一回進化してレッサースケルトンだったらその前の俺は何だったの!?」」


 衝撃の事実に俺がフリーズしていると後方から 「はっはっはっは!」「おいおい、マジかよ!」「レッサースケルトンって!」 「進化してやっとレッサースケルトンになれたって、ぷぷぷ!」 などと大爆笑されていた。エメラは俺と連中の間でオロオロしているようだが俺にはそちらに気を回す余裕すらなく膝から崩れ落ちた。

 「そ、そんな。あんなに頑張って生き抜いたのに、確かに進化して骨も頑丈になってかっこよくなったはずなのに。あんまりだ、俺頑張ったのに、頑張ったのに!うおおおおおおん!!」

 気づけば俺は、床に突っ伏して大号泣していた。周囲に笑われていたと後で教えてもらったがその時は全く気付かないほど、俺は取り乱していた。

 「あんまりだ、あんまりだ。ちくしょう!」 ひたすら泣いている俺を見て、周りの奴らも


 「お、おいちょっと笑いすぎじゃないのか」 「あんなに泣いて可哀そう」 「あんたがあんな大声で笑うから」 「俺のせいかよ。お前も進化してやっとレッサーって笑ったじゃないか」 「い、いや、まさかあんなに傷つくなんて思わなくて」


 「な、なぁ、その、悪かったよ、笑って。種族名を笑うなんてよくないよな。ごめんな」 「そ、そうよ、あたしも言い過ぎたわ。ごめんね」 「そ、そうだ、レッサースケルトンならすぐに進化できるんじゃないか。低い位階ほど進化しやすいっていうし」 「そ、そうよ、あなたならきっとすぐに進化できるわよ。レッサーなのにかっこいい骨をしているし、進化したらもっとかっこよくなるわよ!」


 「お、おまえら、俺を慰めてくれるのか。おお、友よ、ありがとう。冒険者Aと冒険者Bよ」


 「だれが冒険者Aだ!」 「だれが冒険者Bよ!」


 「だって俺お前たちの名前知らないし」


 「アレクサンダーだ!」 「クリスティーナよ!」


 「おお、あらためてありがとうな。貴族っぽい名前なのに全然貴族っぽくない顔をしたやつらよ」


 「「やかましい!!」」



 コホン とエレーナさんが咳払いしたところで全員の目が彼女に向かう。


 「茶番は終わりましたか?」


 「はい、大変お待たせいたしました」


 「茶番だったのかよ!」 「切り替え早いわね!あんた実はそんなに傷ついてないでしょ!」


 「話が進まないので他の皆さんは戻ってください」


 「「「「あ、はい」」」」


 モブどもがいなくなったところでエメラが 「あの、私が叫ばなければこんなことにはならなかったので、その、すいませんでした!」


 「ああ、いいよ、いいよ。いい余興だったし」


 「よ、余興ですか」


 「うん、よきょ...「続けても?」あ、はい、すいません」 エレーナさんの圧が増してきたので真面目に聞こう。


 「話を止めてすいません。でもエレーナさんも悪いですよ。こ、これは!?そんな馬鹿なー!?なんて思わせぶりなこというもんだから」とちょっと反論してみた。


 「私が驚いたのは種族名の所ではありません」 とジロリとにらまれてしまった。


 「クレストさん、あなたの主属性が光だったんです」


 「え!?」 とエメラもえらい驚く。うん?そういえばさっき


 「スケルトンは光属性はありえないって言ってませんでしたっけ?」


 「そのとおりです。だから驚いたんです。これは本当にあり得ないことなんです。そもそもスケルトンに光属性の治癒や浄化は弱点です。まともに食らえば普通に死にます。しかしクレストさんは主属性が光。ならば治癒や浄化に耐性があることは間違いありません。もしかしたらスケルトンでありながら治癒で回復することができるかも・・・・・・」 最後の方はなんか独り言みたいにブツブツ言い始めた。呼びかけても返事がないので、エメラの方を向くと


 「私も聞いたことないです。光属性のスケルトンなんて、すごいですよ、クレストさん!」


 「んー、でもホントに大丈夫なのか不確実なんでしょ?大丈夫だと高を括って浄化でウギャァー!ってなったら怖いなぁ」


 「確かにそうですね」 と話してると急にエメラが何かを思いついたようにポンと手をたたき 「そうだ、だったらちょっと試してみませんか?」 と言ってきた。


 「試すってまさか?」


 「はい、治癒魔法をクレストさんにかけてみましょう」 と名案を思い付いたような顔をして提案してきた。


 「・・・・・・」

 確かに俺は一度は死んだ身、ここで浄化されて死んでも後悔はない。ましてや俺に魔法をかけるのは、そんな俺を洞窟から救い出してくれた大恩あるエメラ。悔いなど残ろうはずもなし。覚悟を決めよう。

 「わかった、一思いにやってくれ。俺が灰になったらベルガイアの空に解き放ってくれ。風になって君を見守ろう」


 「あ、あの。そこまで決意を固めなくても、指先にほんのちょっと軽く治癒魔法をかけるだけなので、死ぬことはありませんよ」


 「・・・・・・」


 「・・・・・・」


 「あ、そうなの?」 「はい、そうです」


 「じゃあ、お願いします」


 エレーナさんは考察の海からまだ戻ってきていないようなので、彼女を帰還を待つ間に試してしまおうってことになった。ちょうどさっき子芝居をしてた時に、拳を床にたたきつけていたので、少しすりむいている。


 「じゃあ、行きますね」 と俺の手に手をかざすエメラ、ちょっと怖いなぁ、ホントに大丈夫かな?


 「最小の威力で≪ヒール≫」 彼女がそう唱えた瞬間、白くて淡い小指の先ほどの大きさの光が俺の擦り傷に触れた。なんかこう、温かさを感じる光だ。


 「・・・どうですか?」


 「うーん、なんかピリピリする?なんか微妙」 「そうですか。あ!クレストさん見てください、傷を」


 「ん?おお!治ってる。すげー!」 「す、すごいですよ!クレストさん。多分あなたは世界で初めて治癒魔法で回復したスケルトンです!」


 お、おお!なんかそういわれると誇らしいな。俺が世界初か、おほふふ。


 「これは素晴らしい、クレストさんあなたはぜひ光魔法を学ぶべきです」 といつの間にか帰ってきたエレーナさんがそこにいた。 「そうでなくても回復職は数が多くありません。覚えておいて損はないスキルです」


 「そりゃ確かにまぁ、覚えられるなら覚えたいけど」 と返事をしていたら 「それなら!」 とエメラが切り出してきた。


 「クレストさん、メルヴィン教会で学んでみませんか?」

 ここまで読んでいただきありがとうございます。もし面白いと感じていただけたら、差し支えない範囲でブクマ、感想、評価をしていただけたら嬉しく思います。

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