第10話 骨、メルヴィン教会に行く
「メルヴィン教会?」
エメラが提案してきた単語に聞き覚えがあった。
「確かエメラが勤めてる教会だっけ?」
「はい、私は普段、聖護院の治癒院で働いています。治癒力を上げる修行の一環で骨の洞窟に行き、クレストさんにであったんですよ」
「なんか、そんなこと言ってたな。そんでメルヴィン教会で学ぶってのは?」
「はい、メルヴィン教会は大きく聖護院と教護院にわかれているんです。聖護院ではメルヴィン教徒の僧侶が日々研鑽を積み己を高める修行をしています。私はそこに併設されている治癒院に勤めています」
ふんふん、回復魔法なんかを鍛える場所ってことかな。あと普通に教会なんだから礼拝堂みたいな場所でミサとかすんのかな。パイプオルガンとかあってステンドグラスとかから陽光が差し込んできて、信徒が歌を歌ったりするんだろ。俺、あの雰囲気嫌いじゃないんだよな。パイプオルガンの音も好きだし、ステンドグラスはキラキラして奇麗だし。教会の歌って荘厳な感じがしていいよな。
「次に教護院は、孤児院と学校だと思っていただければいいと思います。クレストさん、聖護院で光魔法を学んでみてはどうでしょう?」 と提案してくる。
一応エレーネさんの意見も聞いとくか 「エレーナさんはどう思います?」
「・・・いいと思います」 なんか今ちょっと間があったな。大丈夫か?
「おそらくクレストさんには向いているかと思われます」 向いている?治癒魔法の勉強が俺に合っているってことか。なら迷う必要はないな。なによりエメラが俺を陥れるはずないもんな。短い付き合いだけどそんなことくらいわかる。しかし問題もある。
「その提案はありがたいけど、俺今金持ってないのよ。さすがに世話になるのに何も支払わないってのはなぁ」
「そ、それは確かに。あ!そういえばクレストさん骨の洞窟で宝石拾ったって言ってたじゃないですか」
おおう、そうだわ。なんかもう結構前だから忘れていたわ。
「エレーナさん、これ換金とかできます?」 といい俺は、骨の洞窟で拾ってきた宝石や石ころなどをだしてみた。
「ええと。なかなか純度の高そうな宝石ですね。それとこれは魔石ですか。では、ギルドカードの作成と一緒に査定してきます。しかし魔石の方は、この大きさでしたらたいした値にはならないでしょう。また、ギルドカード作成前の討伐ですので、討伐実績はつかないことをご了承ください」
「あいあい」 と返事をしてエレーナさんに全部手渡した。街に来るまでの間にエメラが教えてくれたのだが、俺が様々な骨からとりだした石は、魔物の魔石だったようだ。しかし小さすぎて値段がつかないかもと前もって言われていたのだ。
「では少々お待ちください」 といいエレーナさんは奥に引っ込んでいった。
待ってる間暇なので、エメラと話をしたり依頼表をプラプラ見ていたら、アレクサンダーとクリスティーナの二人が戻ってきた。
「どうだ?無事冒険者になれたか?」 「うまくいった?」 どうやら心配してくれていたらしい。なんだよ、いい奴らだな。
「おう、うまくいったよ。今ギルドカード待ち」
「おう、そりゃよかったな」 「これで私たちの後輩ね。わかんないことがあったら、聞きなさい、教えてあげるから」
「おお、ありがとうな。ノリがいいだけじゃなく気前もいいなんて、さすが貴族風ネームのやつらよ」
「やかましいわ!」 「そのネタ引っ張んの?貴族の前ではシャレにならないこともあるからやめてほしいんだけど」
「・・・貴族ってあんま冗談通じない感じ?」
「時と場所と人によるな。いきなり斬られることは少ないが、投獄くらいは普通にあるな」
少ないって斬られることもあるのかよ。マジかよ。貴族怖え。 「俺、このネタもうやめとくわ」
「それがいいと思うわ」 さっそく一つ教えてもらった。
「ところで属性は何だったんだ?こーゆーのは他人にあんまし言うもんじゃないし、聞くもんじゃないけど、なんかアドバイスできればと思ってな」 こいつマジでお人好しだな。会って30分も経ってない赤の他人にここまで親身になるか。逆に心配になってきたわ。いやむしろ警戒したほうがいいのか。
エメラの方を見ると 「この二人なら大丈夫です。信頼できますよ」 とのこと。ふーむ、じゃあ言うか。そういえば俺ってスケルトンのくせに光属性って超すごい骨だったな。とりあえずこいつらにドヤ顔してマウントを取ろう。
「ならば聞いて驚け、・・・いやちょっと待って言い直すから。えーと、コホン、遠からん者は音に聞け!近くば寄って目にも・・・「やかましい!そんな大声でしゃべったら他に聞かれるだろうが!」・・・あ、はい、すいません」
「で、なんなのよ?」
「あ、はい、光属性でした」 「フーン、光属性ねぇ」 「じゃあ回復系か、よかったじゃねぇか。悪くない属性だぜ」
あれ?なんかリアクション薄くない?疑問に思いエメラの方を向くと 「アレクサンダーさん、クリスティーナさん、骨人族のクレストさんが光属性なんですよ。驚かないんですか」 と代弁してくれた。
「ああ、そういえばそうね」 「ああ、そういうことか。すごいな」 いや、だから、薄いんだよ反応が。なんかあんますごくない気がしてきた。うん、調子に乗るのはやめとこう。
と決意を改めていた俺にアレクサンダーが 「じゃあ回復魔法を学ばなくちゃな。学校行くのか?」 と聞いてきた。そうか、学校とかもあるのか。でも俺はもうエメラに誘われているからな。
「メルヴィン教会に学びに行くつもりだよ」
ザワッ!言った瞬間空気が変わった。二人が驚いている。「お前マジか?」 「本気なの?」 と言ってきた。どうしたんだ二人とも。
「なんかまずいことがあるのか?」 と疑問を呈してみたらアレクサンダーが 「いや、だってあそこは・・・「どうしました?」・・・い、いやなんでもない」 途中でエメラがニコニコ笑顔で入ってきた。 「い、いやでもエメラちゃん・・・「何か問題が?」・・・ないです」 クリスティーナも何か言いたそうだ。
「お待たせしました」 そうこうしてるうちに、エレーナさんが戻ってきた。
この場の微妙な空気を感じ取ったのか 「どうしました?」 と聞いてきたのだが、 「い、いや、なんでもねぇよ」 「そ、そうね、なんでもないわよ」 と打ち切られてしまった。
「?そうですか。ではクレストさん、これがギルドカードです。初回は発行手数料が千メルクですが、紛失など使用不可にした場合、再発行に1万メルクかかります。
ここに来るまでに、エメラに金銭についても聞いておいた。この国の通貨単位はメルクで物価事情も聞いてみたところ、1メルク=1円って感じだった。これは素直にありがたい。お金の相場で混乱しなくてすむし。
「それと、先ほどの魔石と宝石の査定も終了しました。発行手数料を差し引きまして、199万9800メルクになります」 マジかよ!おおよそ200万円ってこと?やったぜ!
「内訳をお聞きになりますか?」 「お願いしやす」 俺の戦果の内訳だ、魔石はいくらくらいになったんだろう?
「まず、宝石が全部で200万メルク、次にネズミ型スケルトンの魔石が30個で30メルク、ウサギ型スケルトンの魔石が25個で25メルク、シカ型スケルトンの魔石が5個で25メルク、クマ型スケルトンの魔石が1個で20メルク、ホーンラビットスケルトンの魔石が1個で200メルク、最後にホーンソルジャースケルトンの魔石が500メルク、以上になります」
「・・・・・・・・・えっと、ちょっと待って。魔石の合計って、えーとネズミが30メルクだっけ?それとウサギが・・・「魔石の合計は全部で800メルクですね」・・・ということは、もしかして宝石がなかったら俺ってギルド登録もできなかったってこと?」 「そうなります。ただ、ホーンソルジャースケルトンに関しては魔石にヒビが入っていたので査定額が低くなりました」
おっふ、マジかよ。冒険者人生、開始早々詰んでたじゃねぇか。
「だ、大丈夫ですよ。その時は私が立て替えます」 ジーンとくるセリフありがとう。でもね、子供に払わせるのはちょっと大人としてね、いやね、いよいよとなったら土下座でもなんでもしますけどね。マジで危なかったー。
そんなこんなで、冒険者登録も済んだってことで俺とエメラはメルヴィン教会に向かった。
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クレストとエメラの二人がギルドを出たところでアレクサンダーがエレーナに質問を投げかけた。
「なぁ、エレーナさん。本当に良かったのかよ。クレストの奴をメルヴィン教会に行かせて」 「そうよ、あの暴力魔達の吹き溜まりに。回復を学ぶだけなら他にいくらでもあるじゃない」
「大丈夫ですよ・・・・・・多分」 「多分なのかよ!」 「私も未来を見通せるわけではありませんので」 「い、いや、そりゃそうだろうけど」 「それに、あの場所がクレストさんに向いていると思ったのは本当ですから」 「まぁ、それはちょっと俺も思った」 「大丈夫かな、クレスト。人格が変わらなけりゃいいけど」
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ギルドを出て、俺たちは一路メルヴィン教会に向かう。
「すっかり遅くなっちゃったな。本当にエメラには世話になりっぱなしだよ。なぁ宝石のお金の半分、本当にいらないの?」
「ええ、それはクレストさんが使うべきお金です。これからいろいろと必要になるでしょうし」
実は、街に来る前に宝石の取り分を半分渡そうと提案したのだが、固辞されてしまったのだ。
「しかし、ここまで世話になったのに何もしないわけには」
「ふふふ、ではいつか私が困ったときにクレストさんが助けてくださいね」
つまり、これは借りってわけだ。なんか冒険者っぽくていいな。
「わかった。ここは借りておくよ。いつ倍にして返してやるよ」
「ええ、期待しておきます」 これまでの恩は別の形で返そう。俺はそう心に刻んだ。
そんなふうに楽しくおしゃべりしながら歩いていたら 「あ、見えてきました。あれがメルヴィン教会です」




