第3話 骨、検証する
力を吸ったからだろうか、奴は死んだように全く動かなくなった。今気づいたけど周りが石畳じゃなくて土の地面になっている。だから剣が地面に刺さったのか。本当に運がよかった。石畳だったら剣が刺さらずにおそらく俺のほうがやられていただろう。よくよく見てみると、奴は体のあちこちがガタガタで骨もヒビだらけだった。だから俺なんかの攻撃で簡単に両断できたんだな。それも倒せた要因の一つだろう。しかしおかげでここがどこか全く分からなくなって最初に目覚めた部屋にもどれなくなってしまった。まぁ戻れたとてってところはあるんだけれども。
あたりを見渡すとここは広い場所でまるで洞窟の中にいるようだ。さっきまでの場所が地下迷宮なら今いる場所はまさに地下洞窟って感じだ。向こうのほうに広い水辺がある。まるでラ〇ュタの地下洞窟のあの爺さんでも出てきそうな雰囲気だ。湧き出てるのは地下水だろうか、かなり広く見える。戦いの余熱が引いてきて落ち着いてきたからか喉が渇いた。考えてみれば目覚めてから飲まず食わずの上にかなり走り回ったから喉が渇くのも当然か。水辺により手ですくって水を飲もうとするが骨だから全部こぼれてしまった。
おおふ!そうだ俺いま骨なんだった。この状態でも喉は渇くのかよ。四つん這いになって直接口をつけて飲んでみた。おお!冷たくておいしい。確か洞窟とかの水ってミネラルだかを多く含んでの硬水とかだから、飲み水には向いてないんだっけ?ああいやむしろいろいろ含んでるから運動した後はこっちのほうがいいんだったかな?まぁどっちでもいいやおいしいし。ていうか今俺は骨なんだからミネラルとか多いほうが骨にいいんじゃねって思うし。実際生前よりよっぽどおいしく感じる。つーか舌もないしなんなら胃袋も何もかもないのになんで飲めるのかすごく疑問だ。胃袋のあったあたりで吸収される感じで消えてるなぁ。まぁ喉を潤せたのは僥倖だ。しかしつまりそれはこの体になっても水あとおそらく食べるものも必要なんじゃないかと予想される。飲まず食わずでも大丈夫だろうと楽観視するのはやはり危険だろう。だが空腹感はなくもないのだが、さっきスケルトンから何かの力(とりあえず便宜上魔力としておくか)を吸収したら、軽く満足感があった。あれを繰り返せばとりあえずは食いつなげるんじゃないだろうか。なにもかもわからない状態なんでこれ以上のことは考えても仕方がないか。とりあえず行動しよう。
さっき倒したスケルトンが皮袋のおそらく水筒に使っていたものを持っていたのでこれを拝借して使わせてもらおう。生前は冒険者だったのだろうか、ボロボロだが他にも大きくはないが革袋もあるしこれもありがたくいただこう。しかしありがたいのだが他人の、それも死者の水筒を使うのはすごく抵抗がある。俺はキレイ好きなのだ。ボロボロだがそれでも念入りに、さらに壊れないように繊細にそして念入りに、さらに念のため念入りに洗って水を詰めた。
一応ほかのスケルトンのほかの荷物も探ってみたが、ボロボロすぎて他のは使い物にならないかあきらめよう。
ん?死体のそばになにか落ちてるな。拾ってみると小指の詰めの先ほどの石が落ちていた。小さくて見落とすところだったが宝石のようにキラキラして輝いている。
奇麗だなぁ。よし袋に詰めて持っていこう。
これで準備はできた。だが行動する前にさっきの戦いについて考える必要があると思うんだよ。あの時俺は自分でも信じられない力で敵を撃退できた。今後、また同じような危機に陥った時あの力がうまく使えるかどうかが今後の生死を分けると思われる。注意深く自分の体に冷静に意識を集中してみる。
...あるな。確かに。さっき一度使ったことで自覚できるようになったのがよかったのか、何かが俺の体を巡ってる。まぁ魔力でいいだろう。この魔力をもっと使いこなせるようになるべきだ。とりあえず座禅でも組んで、集中して体の中の魔力を動かしてみるか。こーゆーのは瞑想なんかで修行が定番だろうし。
・・・・・・・・・まったく動かないんですけど。
多分一時間くらいはあーだこーだやってたけど全然自分の意思でどーにもならない。うーむやり方が悪いのかな。あの時は必至だったからよく覚えていないけれど、確かに動いてそれで窮地を凌げたからなぁ。いつまでもここで修行するわけにはいかないけれど、このままなんの収穫もなしに動き出すってのもなぁ。どうしたものか。もうちょっとだけやってみるか。
・・・・・・・・・あれから三時間くらいは経ったと思う。
うがー!全く変化なしだ!何故だ!?あの時は確かに動いたのに。やり方が悪いのか?俺は立ち上がりやけくそ気味に前方へ正拳突きした。
!? 動いた!今確かに動いたぞ!
もう一度拳に気合を込める感じで突き出したら魔力が拳に充実した。そうか、動きながらのほうが効率いいんだ。ってことはさっきまでのやり方ってまるで真逆だったってことじゃん。くそー!かなり時間を無駄にしたぞ。瞑想中に心を無にしたほうがいいのかとか、漫画のイメージみたいに血管を巡るみたいにイメージしたほうがいいのかとか、いろいろ考えたのに。
あれからしばらく検証したがどうも魔力を鍛えるためにはやはり体を動かすっていうか普通に運動が一番いい感じだったのが分かった。魔力を意識しながら気合を込めて空手の正拳突きを交互にしたり下段蹴りなんかをしてみたら確かに魔力が乗ってるのが分かった。大事なのはイメージと運動って魔力以外は前世と大差ないなって感じだな。いや案外前世にも魔力ないしそれに類似するものは俺が知らないだけで、存在していたんだろうか?ていうかいい加減自覚したほうがいいかな。ここってやっぱり異世界なんだろうか。それとも俺が知らなかっただけで日本の地下には骨の世界が広がってたってことなんだろうか。
昔は日本も土葬だったしそれが地下に沈んでいって骨になって動き出したとかありえない話じゃ・・・
・・・・・・いやないな。
それはさすがにないだろう・・・・・・ないよな
まぁ現状確かめようがないからその件は後回しでいいだろう。
それよりも検証の続きだけど、あの後いくつか試して分かったことがある。
まず俺の魔力強化はそこまで大したものではなかった。とりあえず拳でその辺の岩を殴ってみたが転げまわるほど痛かった。骨にヒビが入ってなくて本当に良かった。次に魔力を込めて同じことをしたんだけど痛みはかなり軽減できた。これは嬉しかったのだが岩さんのほうは全くびくともしなかった。しかし嬉しい発見もあった。この力は武器にも乗せることができるようだ。確かにあの時スケルトンを剣で両断できたし、いくら奴が弱ってたといっても、ど素人の俺の剣捌きで両断できたのは武器が強化されていたからだと思われる。それとイメージしながら剣を素振りしてみると正拳突きの時より調子がいい感じなんだよな。もしかしたら俺は剣と相性がいいんじゃないだろうか。だとしたら地味にうれしい。あと何回か降っていて気づいたんだけど、どうも威力にムラがある気がするんだよね。
普通はブンッ!ブンッ! なんだけどたまにブオンッ!ビュンッ!とか変わるし。
威力にムラがあるってことはこの力は鍛える余地があるってことだと思うんだよ。これは楽しくなってきた。岩には切りつけないのかって?いやだよ刃が欠けるじゃん。
あれから二時間ほど楽しくって素振りしてて気づいた。
何やってんだよ俺!早くここから脱出しないといけないのに何遊んでんだ!俺いま迷子なんだぞ。ここがどこかもわかってないんだぞ。食料もなにもないし横に水場はあるけど余裕カマしてる場合じゃねぇんだよ!
い、いや収穫はあったんだよ。剣を振る音が ブンッ! だったのが ビュオンッ! に安定してきたから無駄ではなかったんだよ。
よしこれで準備はできた。いざ行かん出口を求めて。
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