第2話 骨、遭遇する
部屋から廊下に出たけど石畳が続いている。相変わらず壁や天井が薄く光ってるので見えやすいとはいえないが、視界は確保できている。道は左右に分かれているがどちらに行ったものか?
よし!左にしよう。なんか左のほうがいい気がする。なんかそんなことを本で読んだような気がするし。
正直どちらがいいなんて全くわからないのだから適当に行くしかないよな。なんとかなるだろ。
適当に入り組んだ道を左、左に進んでるが何も変わらない景色が続いている。
本当に長いな、どこまでつづいているんだろう?左を選択したのが間違いだったか?でもいまさらもどるのもなぁ。
しかし退屈だなぁ。人っ子一人いやしない。ていうか昔やったメトロイドヴァニア系ゲームの地下墳墓ステージがこんな感じじゃなかったか?そう考えるとなんか怖くなってきたな。あのゲームちょっとホラーテイストだったんだよなぁ。まぁ今誰かと遭遇したらどちらかといえば俺のほうがモンスターか。だって俺今骨だし。
ガリ ガリ ガリ
ん? 今何か先のほうで音がしなかったか?お!向こうに曲がり角が見える。その先からしたような。
ガリ ガリ
おお確かにするぞ。曲がり角の先だな。誰かいるのかな?曲がり角の手前からそーっとのぞいてみると。
ガリ ガリ ガリ ガリ
?! 骨が動いてる! 反対側を見てるからまだこっちには気づいてないけど、歯をカタカタ鳴らしてうごいている。見た感じボロボロの服を着て右手に剣をもって引きずっている。さっき聞こえた音はあいつが地面を引きずる剣の音だったのか。両手剣っぽい感じだ、グレートソードってやつだろうか?
ど、どうしよう。まだこっちに気づいてないしいきなり後ろからガツンといくべきか?いやいやなに物騒なこと考えているんだ。彼(あるいは彼女)はまだ俺に対して何もしていないし、そもそも俺も骨だから向こうも友好的かもしれない。案外気さくに挨拶したら返事を返してくれるんじゃないか。
HEY兄弟今日もいい天気だな。天井あるから天気わかんないけどなHAHAHA!ところで兄弟いい上腕骨だな。いい感じに仕上がってるぜ。みたいな。
・・・うん。俺前世うろ覚えだけど絶対こんな陽キャな感じじゃなかったと思う。
まぁとりあえず挨拶してみるか。いきなり襲い掛かるなんておよそ文明人のすることじゃないしな。
「こんにちわ。いい天気・・・・・・じゃなかった、あのぅすいませんがここどこだかわかりますか?」
「!?」 カタカタカタ
「あの、なんか返事してくれませんか?無言で剣もって近づいてくるのすごい怖いんですけど」
カタカタカタ
「いや、気に障ったなら謝りますからそのへんで止まってきただけたら・・・」
ダダダダダダ!!
!?!?!?すごい勢いでこっちに向かってきた!!やばい!逃げなきゃ!
急いで反転してきた道を逆走する。
ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!振り返ったらすごい走って向かってくるぅ!
なんだよなんだよあれ!?なんで何も言わずに走ってくるの?挨拶したんだから返事くらいするのが人ならず骨としても礼儀じゃないのかよ!やっぱあいつただのモンスターなのかよ!?じゃあ俺もやっぱモンスターなのかよ!!??いやいや俺は理性あふれるナイス骨だけどあいつはさっきから「ヴォアオアアア!」みたいなことしか言ってないからね。俺とは違うからね。うぉおぉ。言ってる場合じゃねぇ。追いついてきたぁぁぁ!くそ!昔の映画はゾンビもスケルトンもヴアヴア言いながらチョー遅かったじゃん。なんで昨今のスケルトンはあんなはやいんだよ!。どれくらい早いかって?最近の海外ドラマのゾンビなんか短距離走者もびっくりの全力疾走をしてくるじゃねーか。あれぐらい腕振りかぶって走ってくるんだよ!骨だから表情わからないのにチョー怖ええよ! ノオオオ!マジで言ってる場合じゃねぇ!振ってきた剣がかすったぁぁぁ!!
がむしゃらに走り回ってもはやどこ走ってるのかもわかんねぇ。骨なのに息も切れるし。しんどすぎる。
! しまった足元の石に躓いて転んでしまった。振り返ったらもう振りかぶって剣をふりおろそとしている! 体を横にひねって何とかかわしたら剣が地面に刺さって抜けないようだ。
チャンス!右足で蹴り飛ばして剣から引きはがすことに成功した。奴は俺に蹴られて倒れてしまう。そのスキに立ち上がって地面に刺さった剣を思い切り抜いて奴の脳天向けて振り下ろした。しかし奴も体をひねり頭をかわしたが、左肩を砕き左腕から下を地面に落とした。返す剣で横なぎに振り奴の胴体を両断してやった。地面に崩れ落ちる奴にこれで勝ったと油断したのがいけなかったのだろう。なんと奴は残った腕で俺をつかみ噛みついてきやがった。
驚いた俺は一瞬硬直してしまった。もともと喧嘩なんかもしたことなかったんだから無理もないと思うがそんなことも言ってられない。もつれ合って転がりあって引きはがそうとしてるのに奴は俺をはなそうとしない。奴の狂気的な殺意に本気で恐怖を覚えた。奴は俺を本気で殺しにきているという圧倒的な実感。やらなきゃやられる。俺も生まれて初めて殺さなければならないと心の底から思った。
奴の口に手を入れ体の芯から力を入れ思い切り上下に引き裂いた。奴は頭を口から上下に裂かれ倒れた。しかしそれでも奴はまだ動いている。動いているが右手を足で踏み砕いたらろくに行動できなくなってもぞもぞ動くだけになってしまった。くそ!嚙まれたところにひびが入っている。骨の体なのにズキズキ痛い。だがこれは殺し合いを甘く見た俺の怠慢がまねいた傷だ。むしろこの程度ですんでよかったとさえいえる。これは教訓だ。そう思えるほどに濃密な時間だった
しばらく戦いの余韻に浸っていたが、目線はずっとあいつから話すことができない。なにしろまだ動いているんだから。こいつどうやったら死ぬんだ?あと体が痛い。痛みは慣れてきたのか少しマシになってきたけど、ヒビは変わらず入っているからな。これ治るんだろうか?
しかしさっきは自分でも信じられないほど力が出たな。いくら渾身の力をこめたからって頭蓋骨を上下に引き裂くなんてできないよな。あの時は無我夢中だったから気づかなかったけど、なんか不思議な力がみなぎってきたんだよな。なんというか。気?魔力?みたいな。考えてみれば今自分骨なのに不思議な力で動いてるもんな。魔力的なものがあったって何ら不思議じゃない。気のせいじゃないかって?だって今も感じてるし。
なんか体の中丹田のあたりから不思議な力があふれて体に巡っているのを感じる。この力で俺は動いているんじゃないかと思われる。ということは今そこに倒れてもぞもぞしてるあいつも同じような力で動いているんじゃないかしら。あらためてよくよく観察してみるとなるほど確かにあいつからも何かしら力を感じる。
・・・・・・なんかあの力、奪えそうな気が。
手をかざしたのは何となくだった。後で考えてみれば本能のようなものだったのだろう。俺は奴から力のようなものを吸い取っていた。力を吸いながら自分の体が熱く力が充満していくのを感じていた。なんというか自分がより高みに昇っているかのようなそんな錯覚を覚えた。体全体が熱を帯びているようなそんな感覚の後、気づいたら肩のヒビは治っていた。
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