↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖なる骨  作者: 骨素子 陽晶


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/33

第29話 骨、キノコ狩りに行く

 「キノコ狩りに行かねぇか・・・」




 家族が増えて1か月がたった。あの生かしておけない盗賊共は、どうも懸賞金がかけられていたらしく結構な金が入ってきた。あの盗賊の首領(ボス)はかなりの実力者だったようだ。確かに真っ向勝負をしていたら確実に負けていたと思う程には強かったが、俺が真っ当な戦い方をするわけがないのでご愁傷様だ。


 毒消し草の依頼報酬と合わせて懐に余裕があるが、俺には子供たちを食わしていくという使命がある。今後のことを考えたら全く余裕などない。この1か月でガリガリだったあいつらもだいぶマシになってきたがまだまだ健常とは言えない、もっと食わしてほっこりさせるのだ。そのためには、もっとジャンジャンバリバリ稼いでいかねば。


 くわえてルビアはまだ幼い。本人が何も覚えていないので暫定5歳ということにしたが、やはり教育のことを考えねばなるまい。エメラに相談したらメルヴィン教会の教護院に通わせたらどうかと提案された。


 そういえばあそこは孤児院と学校があるって言ってたな。聞けば、時間のある時はサリーも教護院に勉強しに行っているらしい。確かにここから近いし、俺は日中依頼で家を空けるからナイスな提案だ。学校でルビアの友達ができればなおいい。朝飯を食いながら、サリーに学校でルビアのことを気にかけてもらおうと見てみたら、サリーがルビアに 「いい、サリーおねえちゃんだよ。ほら言ってみて」 「サリーおねえちゃん」 とか言っていた。あの様子ならほっといても気にかけてくれるだろう。おねえちゃんって呼ばれたかったんだな・・・


 横にいるエメラも 「あの・・・私もエメラおねえちゃんって・・・」 「エメラちゃん」 「いえ、その・・・エメラおねえちゃん・・・」 「エメラちゃん」 「その・・・はい・・・」 とかやってる、エメラもおねえちゃんと呼ばれたかったようだが、一足先にサリーの教育がすんでいたようですでにエメラちゃん呼びになっていた。


 そんな感じで朝食が終わると、ルビアとエメラと俺と時々サリーで教護院まで送り届けて夕方仕事が終わると迎えにいく。そんなサイクルができつつあった。そうやって生活サイクルが落ち着いてきた頃にラージーから誘いがあったのだ。




 「キノコ狩り?」


 「おうよ、魔の森にキノコ狩りに行こうぜ!」


 「別にいいけど、お前のチームメンバーは?」


 「あいつらは行かねぇって・・・俺とお前の二人だな」


 「そうなのか、まぁいいよ。しかし、キノコ狩りかぁ・・・なんか準備するものとかある?網かごとか手袋とか?」


 「あん、そんなもんいらねぇよ。じゃあ明日な!」


 いらないって・・・まぁマジックバッグがあるからいいのか・・・





 二つ返事で仕事を引き受けて翌日、エメラと一緒にルビアを教護院まで送り届けた。エメラにキノコ狩りに行く話をすると微妙な顔をしていた。そんなエメラの表情が気になったから理由を聞いてみたが 「あのキノコはあまり私は好きではないので」 という返事を頂いた。もしかしてまずいのだろうか、気になるがもうラージーに引き受けると宣言した以上行かねばなるまい。


 教護院に着いた俺は入り口でマローダーに言い聞かせた。

 「いいか、ルビアとお前が俺の家族になって今日初めて俺は街の外へ行く。俺がいない間お前がしっかりルビアを守るんだぞ」


 「ワンワン!」


 マローダーは元気に吠えてシッポをふっている、大丈夫か少し不安になるがこいつはとても賢い。俺の言いたいことは理解しているだろう。俺はマローダーに想いを託してギルドに向かった。



 「おう、来たかクレスト。そんじゃ行こうぜ」


 ギルドにはすでにラージーがきていて俺を待っていた。




 俺たちはベルガイアの西門から魔の森に向かった。今日は三馬鹿はいなかったので別の門で馬鹿をやっているのだろう。


 「そんで、魔の森のどの辺にいくんだ?」


 「おう、中層だぜ」


 「え、中層?二人じゃ危なくないか?」


 魔の森は中層から危険度が激増するってエレーナさんから教えられていた。そもそもブロンズランクは中層に踏み入ることは推奨されていない。ラージーがシルバー相当の実力があるといってもたった二人で中層に入り込むのは自殺行為だ。いくら冒険者は自己責任といっても無謀な冒険をするつもりはない。俺には家で帰りを待っている子供と子犬がいるのだ。


 「ちっげーよ、今から行く中層は特別区域だ」


 「特別区域?そんなもんあるのか?」


 「ああ、ベルガイアから魔の森の浅層に入るルートで骨の洞窟に向かう方向に中層エリアがあるんだよ。そこが今日向かう場所だ」


 それはエメラに聞いたことがあるな。最初に骨の洞窟からベルガイアに向かう途中に危険な区域があるから迂回するって。後で、ギルドの図書室で地図を開いてみたら、魔の森の浅層エリアでそこだけ突き出したかのように中層エリアが広がっていた。確かにあの位置関係なら骨の洞窟に向かうためには迂回しなければ危険だ。


 「特別区域っていっても中層エリアなんだろ?俺たちだけで大丈夫なのか?」


 「ああ、命の危険は全くないぜ」


 「それならいいか、しかし今日採る予定のキノコって美味いのか?」


 それが一番重要だ。いくら割が良くても美味くないなら俺はもう行かない。


 「それなんだがよ・・・俺は好きなんだよ、酒に合うからな。でも割とクセのある味でな、女どもは食いたがらない奴が多いな。だからミリアは今日ついてきてくれなかったんだよなぁ。ガルドルムの奴は用事があるって言うしよぅ」


 ふーむ、クセのある味ねぇ。しかし食う前から叩くのは俺の信条に反するしな、一度は食ってみなければ何も言えまい。それに俺は前世でもドリアンとか好きだったしな、クセツヨの食材は結構いけるクチなのだ。


 「そりゃあ、楽しみだな。ルビアは気に入ってくれるかな」


 「何とも言えねぇなぁ。ガキでも好きな奴はいるぜ」


 そんな感じでべちゃべちゃ喋りながらのんびり魔の森を歩いていく。この間のガングロオークの時とはうってかわって平和だ。ラージーいわく本来ベルガイア近くの魔の森の浅層はこんなもんらしい。たまにノーマルオークやゴブリン、コボルトが出るくらいで、だからこそアイアンランクの冒険者の稼ぎ場として重宝されているようだ。


 「クレスト、もうすぐだぜ・・・」


 「・・・おう」


 魔の森の浅層から目的地の中層に入り始めたあたりから空気が変わった。ぴりついた空気があたりを支配している。しかしこの空気、覚えがある。まるでメルヴィン教会で修行をしている時の様な・・・



 「・・・ここだ」


 ラージーが連れてきた場所は森の中で急に開けた広場だった。体育館くらいの広場で奥にかなり大きな大樹がある。立派な木だ、枝に木霊とかいそうな雰囲気で実に俺の好みだ。しかし目当てのキノコは一本もないんだけど・・・


 「おい、ラージー、キノコは・・・」


 広場の中央辺りに来たところで俺がラージーに問いかけたが、その前に奴は口を大きく開いて・・・


 「スーー、たのもぉぉぉぉぉ!!!」 と大声で叫んだ。


 あまりにも大きな声に俺が驚いていたのだが、本当に驚いたのはこの後だった。


 「おい、ラージー!何を・・・ん?」


 ラージーを問い詰める前にそ(・)れ(・)ら(・)は姿を現した。


 ポコポコポコポコ・・・


 な、なんだ!?


 地面から一斉にキノコの集団が生えてきた。多いな・・・100はあるぞ。しかも大きい・・・一体一体が俺の背丈の半分くらいある。これ魔物じゃね?キノコ狩りってこういうことかよ・・・


 「クレスト、武器を置け。これから俺たちはこいつらと素手でタイマンはって認められたらキノコをもらって帰る・・・わかったか」


 「いや、わかんねぇよ!ちゃんと説明しろ」


 「なにぃ・・・仕方ねぇなぁ・・・ちょっと待ってくれるか、説明すっから」


 ラージーがそういうとキノコの集団の中で一体白の道着に赤のハチマキをしたキノコが前にでてうなずいた。ってかなんでこいつ道着着てんの?


 「いいか、こいつらは求道キノコっつってな。ベルガイアの人間と友好関係にある魔物だ。こいつらは己を高めるために日々戦う相手を探していてな、冒険者を見つけたら勝負を挑んでくるんだよ。でも、戦っても相手を殺すことはねぇ、そんで昔ベルガイアのテイマーが求道キノコにこの中層(エリア)限定で生存してくれないかって交渉したらしいんだよ。当時は見境なく勝負を挑まれてケガ人が結構出たらしくてな、お互い話し合ってルールを決めたらしいぜ。訓練したい冒険者をこの中層(エリア)に来させる、求道キノコは戦う相手を待つ。それでケリがついたらしくてな、以来修行者や冒険者がここに来て求道キノコと戦うって図式が出来上がったんだよ」


 「・・・・・・」


 えーと、色々ツッコミどころが多くてどこからツッコんだものか・・・


 え、だからあいつ道着着てんの?修行者だから?キノコなのに?・・・もしかしてこの考え方って差別なのだろうか・・・ツッコんだらまずいのだろうか・・・いやだって、認めさせたらこのキノコ持って帰るんだよな?そんでもってそれを食うんだよな?嘘だろ・・・認め合った後に食うの?


 「油断すんなよ、求道キノコの猛者はゴールドランクを超える奴もいるって噂だぜ」


 「まじかよ!?超あぶねぇ奴らじゃねぇか!!」


 そんなヤバい奴らがこんな近所に住んでんの?


 「心配すんな、そんな上澄み共は下級のキノコを倒さねぇと出てこねぇさ、俺だってまだお目にかかったことはねぇ」


 そんなに選手層が厚いのかよ、こいつらマジで危ない集団じゃねぇか・・・


 「そんなにクレイジーな奴らを相手になんで武器無しなんだよ!?縛りプレイか!」


 「縛りプレイってなんだよ?別に武器を使ったらダメって決まりがあるわけじゃねぇ」


 「え、そうなの?」


 「ただし、それで勝った場合はもらったキノコの味が落ちる」


 「・・・・・・それはよくないな」


 「お前ならわかってくれると思っていたぜ」


 キノコが美味くないなら本末転倒だ、それはとてもよくない。


 「それによ、格が上のキノコほど味がいいって噂だ」


 「よし!かかってこいやぁ!キノコどもがぁぁ!!」


 俺の叫びに周りのキノコたちが歓声を上げた。なんだここ・・・ファイトクラブか・・・


 そして10分後、俺は地面に転がっていた。




 マジかよ・・・こいつらクソ強い!ゴングが鳴った途端(なぜかキノコの一体が持っていて鳴らした)白道着のキノコに4つの突起物が突き出て両手両足みたいに操って飛び出してきた。俺は不意を突かれてボコボコにされた。明らかにこいつ、ブラックナイトオークより強いんですけど・・・


 この間の盗賊がうんこに思えるほどにやばい。下級でこの強さって信じられないんだけど・・・となりでラージーも地面をなめている。こいつシルバーランク相当の腕前のはずなんだけど・・・


 「くそっ・・・あいかわらず強えぇなドラゴン」


 「ドラゴン?今ドラゴンって言った?何だよドラゴンって?」


 「何ってあいつの名前に決まってんじゃねぇか」


 「えぇ・・・あいつ名前あんの?しかもドラゴン・・・超カッコいいじゃん」


 俺がそういうと白道着のキノコは頭の傘より少し下部分あたりを赤くし手を頭においた。もしかして照れているのか?超人間臭いじゃん・・・


 「ちなみにとなりのあいつはナックルだったっけな」


 ドラゴンの隣に赤い道着のキノコがいる。あいつはナックルらしい。よく見たら他にも頭の傘が軍人の帽子みたいになって肩パットのついた赤い軍服みたいな服を着てる奴や、タンクトップの軍人スタイルで頭の傘が刈り上げているかのように伸びているキノコがいる。個性(キャラ)強すぎじゃね・・・


 「他にも名前あんの?」


 「俺は知らねぇ、認めた奴には名乗るらしいがな」


 なにその強者と渡り合って認め合ったら名乗りあうみたいな感じ・・・そんでその後そいつを食うんだろ・・・それどんな感情だよ・・・


 「まぁいい・・・どのみち収穫なしじゃ帰れないからな。ぶっ飛ばしてキノコ持って帰るぞ!」


 「その意気だぜ!ちなみにこいつらが認めてキノコを寄こすか、満足するまでは帰してくれないからな。前に来たときは三日三晩戦ってようやく解放されたぜ」


 「それは最初に言っとけやぁぁ!!どうすんのこれ!?最初の遠出で無断外泊なんてできるわけねぇだろが!」


 ラージーはニヤリと笑って・・・


 「じゃあ今日中に勝つしか道はねぇなぁ・・・」


 「くそったれがぁ!かかってこいやぁ!」


 再びゴングが鳴った。



 俺が拳を構えたとたんドラゴンが両手首を合わせて腰の脇に構えた。


 「え?おい、ちょっと待って!?それって・・・」


 そして掌を広げて俺の方に突き出した。瞬間でっかいマナの塊が俺の方に飛んできた。


 「う・・・そだろ!?」


 すんでのところで横に飛んで回避した。


 「おいラージー!今の見たかあいつマナを飛ば・・・して・・・」


 見るとラージーがナックルと呼ばれた赤い道着を着た個体にぶっ飛ばされていた。ナックルは全身に火を纏い回転アッパーでラージーの顎を見事に捉えていた。キノコが火だるまになってるんですけど、焼きキノコにならないのかよ・・・食らったラージーも火だるまになってビルでいうと5階くらいの高さまで打ち上げられて地面に落ちた。


 なんか、K・Oって声が聞こえた気がしたんだけど・・・


 ナックルに気を取られていたのが良くなかった。よそ見とは余裕だなと言わんばかりに気が付いたら目の前にドラゴンが迫っていた。俺は慌てて拳を構えて応戦した。


 よく見るとこいつもマナを全身に纏って戦っている。マナの流れで理解(わかる)、めちゃめちゃ洗練されている。メルヴィン教会の狂信者どもでもここまで流麗なマナをしてる奴が果たして何人いるだろうか。確かにこいつらは求道者だ。


 そして俺はボコボコにされた。



 あれからいろんなキノコにボコされた。タンクトップ刈り上げキノコは遠距離から両手の突起物からブーメラン型のマナを回転させながら飛ばしてきて、近距離では上下の回転蹴りを食らわしてきやがった。赤い軍服キノコにいたっては、全身に雷のようなマナを帯電させてきて錐揉み状態に回転させて頭から体当たりしてきやがった。かすっただけで大ダメージだったんですけど・・・


 もう日が傾いてきている。そろそろなんとかしないと今日中に帰るのは絶望的だ。ラージーもボロボロになってるが、目だけはギラついている。


 俺はまたドラゴンと戦っている。何度もキノコとやりあっているうちにわかってきた。こいつらは俺たちと違って目でみて攻撃をよけているわけじゃない。マナの流れを読んで攻撃を予測し見切っているのだ。そういえばあの盗賊の首領(ボス)もマナの流れを読んで俺の剣を弾きやがったな・・・


 こいつらは、それがずば抜けて卓越しているのだ。なるほど、目で見るんじゃなくマナの流れを感じろってか。勉強になるな・・・まぁ、そもそもこいつら目がないから目で見ることができるわけもないんだよな。だからこそこいつらはこんなにマナの感知が上手いんだな。よし俺もこいつらを見習って・・・


 俺は目を閉じマナの流れでドラゴンの攻撃を見切ろうとした・・・次の瞬間左頬に衝撃が走ってぶっ飛ばされた。


 「何やってんだクレスト!馬鹿かおまえは!」


 そりゃそうだよね、一朝一夕でできるわけないよね。でも試してみたいじゃん・・・


 俺に今すぐ高レベルのマナ感知は無理だ。しかし無策であの攻撃をかいくぐるのは至難。俺が乗り越えなければならない課題は二つ、奴の攻撃をよける、そして奴に攻撃をあてる。当たり前のことを言ってるがどちらも正攻法じゃ分が悪い。なら、俺なりのやり方で対策を立てるしかあるまい。


 奴の攻撃をよける課題は簡単だ。マナ感知で無理なら生命感知でやるしかない。これはスケルトン種である俺固有の能力だ、このアドバンテージを生かさない理由はない。とはいっても生命感知で細かい流れを読むのは今の俺にはまだ無理だ。しかし、奴の初動の動きを察知するくらいなら・・・


 「っ!ここ!!」


 「!」


 わかる・・・これなら奴の攻撃を先読みして避けるくらいならおぼぅっっ!!


 初撃をキレイにかわせたことにうかれて二撃目をキレイにもらってしまった。だがこれで一つ目の対策はたてられた。次は二つ目の課題だが、マナの読み合いでは奴には勝てない。だから攻撃を当てるには俺は奇策に頼るしかない。まぁもともと小細工でここまで来た俺だからな。奇策なめんなよ・・・


 多少賭けの要素が加わるが生命感知でなんとかよけることができる。が、さすがに攻撃をあてるほどには先読みできない。だからこうする・・・


 「ふん!!」


 「!?」


 俺は攻撃を避けて即座にドラゴンの顔?めがけて右ストレートを叩き込んだ。奴は後ろにステップして避けたが、俺は腕のパーツを切り離して飛ばし、リーチを伸ばした。そう、ロケットパンチだ!


 ドラゴンは虚を突かれたが、なんと奴は上半身を横にそらしてこれも躱(かわ)した。だが甘い・・・


 「そいやぁ!!」


 「!!?」


 俺は飛ばした腕をマナを操って引っ張り、避けられたロケットパンチを軌道修正して体制を崩している奴の後頭部にぶち当てた。名付けてホーミング・ロケットパンチ!


 完全に虚を突かれたドラゴンはまともにくらって前方のうつ伏せに倒れた。瞬間歓声が上がった。口もないのにどうやって声を上げてるのかわからないが、周囲のキノコたちが俺を称えているのがわかる。K・Oという言葉が聞こえた気がした。


 ラージーがどうなったか気になってふいに横をみるとあっちも決着がついていた。なんとラージーがナックルが使っていたのと同じ技を繰り出したのだ。全身に炎を纏い回転アッパーでナックルを天に打ち上げていた。打ち上げられたナックルは上空で花火のように爆発した。マジかよ、ナックルの技よりさらに昇華してんじゃねぇか・・・ていうかあれ大丈夫か、死んだんじゃないか・・・


 そしてゴングが鳴った。


 やっと終わったかと俺は肩の力をぬいたら、ドラゴンが起き上がってこちらに近づいてきた。敵意はない、俺は黙って奴の行動を見守っていた。ドラゴンは俺の前まで来ると、突起物を片方俺の前に出し、親指を立てるみたいにジェスチャーした。


 こいつら器用だな・・・しかし、認めてくれたってことなんだよな。


 「ありがとう、強かったよお前。まともにやったら勝てなかった」


 ドラゴンは首を横に振り俺をねぎらってくれた。 「胸を張れ」 そういわれた気がした。


 俺が晴れやかな気持ちになっていると、ドラゴンはおもむろにハチマキと道着を脱ぎだしてキレイにたたんで地面に置き、そして倒れた。


 「ドラゴン?」


 俺はドラゴンの傍によったが奴は全く動かなかった。


 「やったなクレスト、これでキノコゲットだぜ!」


 横にラージーが来ていた。奴もナックルを肩に担いでいる。向こうに赤い道着が置いてあるな、どうやら爆散してなかったようだ。


 「え?今戦って互いに認め合ったんだけど・・・俺この後こいつを食うの?」


 「そりゃあそのために来たんだからよ。今更何言ってんだお前?」


 いやそうだけど、そうなんだけど!そのために来たんだけど!!


 ・・・で、でも確かにそうだ、俺たちはもともとそのために来たのだ。ドラゴンはもう動かない。あいつのために俺ができることはその命を美味しくいただくことしかない。俺たちは認め合ったんだ。だから俺の中であいつも生き続けていくんだ。


 俺がそんなことを考えていると、周囲のキノコの群れの中から一体が出てきていそいそと置いてあった白い道着を着て、赤いハチマキを巻いた。


 俺がその光景をボーっと見ていると横からラージーが・・・


 「おう、今日はありがとうなドラゴン。またそのうち来るわ」


 と言った。


 「・・・え?ドラゴン?」


 「あん、もしかしてドラゴンが死んじまったと思ったか?こいつら群体だからよ。本体が死なないと死なねぇよ」


 あっちを見ると、別の固体が赤い道着を着てる。


 「なんだったっけな・・・確か全は個、個は全だっけ。我は全であり、全は我である。昔のテイマーが交渉したときそんな感じのことを言ったらしいぜ」


 「・・・・・・」


 「我を楽しませたらキノコあげるってそういう感じで約束したんだってよ」


 「・・・・・・」


 「だからこいつらが満足すればするほどアクが抜けて美味くなるって話だぜ」


 みれば新(ニュー)ドラゴンが親指を立ててこっちを見ている。


 「・・・・・・」


 「な・・・」


 「な?」


 「なんじゃ、そりゃぁぁぁぁ!!!」


 俺はラージーと一緒にキノコを担いで帰った。




 ベルガイアに帰る途中、唐突にラージが言った


 「どうだ?ちったぁスッキリしたか?」


 「・・・何を?」


 「決まってんだろ。初めて人殺しをした後味だよ」


 はっきり言いやがる。


 「こーゆー時は、思いっきり暴れるのがいいんだよ。」


 「気づいてたのか?」


 「おめぇは何を言ってんだ?全員気づいていたわ」


 「・・・え、マジで?」


 「かぁーっ!お前は骨のくせに顔に出すぎなんだよ」


 マジかぁ・・・隠してたつもりだったんだけど・・・


 ラージーのいう通りだ。俺は盗賊共を殺したことを引きずっていた。いくらぶっ殺認定を受けた種族でも人間を殺したのだ。俺の感覚ではついこの間まで日本で暮らしていた人間がすんなり割り切れるものではない、何も感じないわけがないのだ。もちろん奴を殺したことを後悔したことは一度もない。むしろもっと早く殺せれば被害が減らせたんじゃないかという後悔ならするだろうし、似た場面にいきあったらまた何度でも殺すだろう。だが何も思わないわけではない・・・


 「まぁ、あのガキの前では隠せてたみたいだからいいんじゃねぇか」


 「・・・そうか。それならいいや。しかしな、ラージー・・・」


 「あん?」


 「ガキはやめろ。そんな汚い言葉遣いは許しません。ルビアの教育に悪いからな。ルビアちゃんと呼べ!」


 「はぁ!なんで俺がそんな・・・「ルビアちゃん!」・・・い、いや俺は・・・「ルビアちゃん!!」・・・いや、だってよう・・・「ル・ビ・ア・ちゃん!!!」・・・・・・る、ルビア・・・ちゃん」


 「よし!」


 それでいい、ガキ呼ばわりは許さん。


 「それとな、ラージー・・・」


 「なんだよ、まだなんかあんのかよ」


 「ありがとな」


 「・・・ケッ!俺はキノコが食いたかっただけだ」


 「お前は人が良いくせに目つきとべしゃりで損してるよな」


 「うるっせぃわ!!」


 そんな感じで二人で馬鹿話をしながらベルガイアに帰った。俺は前世でもこんな友達がいたんだろうか。虫食い状態の記憶じゃもはや確認する術(すべ)もないが、もしいたのなら俺が死んできっと悲しんでくれているだろう・・・



 ギルドに戻った俺たちをみたエレーナさんは俺の顔をみてどことなくホッとした表情を見せた。本当にラージーのいった通りみたいだ。心配かけてすいません。


 「おかえりなさい。無事で何よりです」


 「おう、エレーナさん。見てくれよこの丸々太ったキノコを」


 そういってラージーが旧(オールド)ナックルを見せた。もうすでに己の好敵手(ライバル)を食材としてしか見ていない。


 「では依頼完了ということで受注いたします。お疲れさまでした。キノコの配分はどうしますか?」


 「おう、俺たちが持って帰る分を残してギルドにおろすわ。それでいいよなクレスト」


 「いいよ」


 「了解しました。では報酬は査定が終了したら支払います」


 「おう、たのむわ。クレスト!今日はキノコパーティだぜ!」


 「おお!なんか楽しそうだな。じゃあテッドに料理頼んで金の小麦亭で飯食おうぜ」


 「おう!俺はガルドルムとミリアに声かけてくるぜ!よっしゃー!キノコ、キノコ!」


 あいつ実はホントにキノコを食いたかっただけなんじゃ・・・


 ラージーが二人を呼びに行ったところでエレーナさんから声がかかった。


 「それで・・・クレストさん・・・そのですね」


 ん?なんかエレーナさんが顔を赤らめてもじもじしている。こんな表情初めてだ、なんか新鮮でかわいい。


 「どうしました?」


 「キノコパーティなんですけど・・・その」


 ・・・もしかして


 「エレーナさんもどうですか?俺が獲ってきたキノコ食べてくれます?」


 「はい!・・・あ、いえ・・・コホン、失礼しました。ご相伴にあずかります」


 「女の人にはウケが悪いって聞いたんですけど、エレーナさんは好きな感じ?」


 「ええ、まぁ・・・それなりに・・・」


 表情から察するにだいぶお好きなようだ。これは俺の期待値も高まるというもの。


 「あー!クレストいたー!」


 そんな会話をエレーナさんとしていた時ルビアが走ってきた。後ろにはマローダーとエメラがいる。


 俺の顔を見たルビアが・・・


 「あー!クレスト元気になった。良かったね!」 とか言われた。もしかしてルビアにも気づかれていた?


 「ルビア、俺元気なさそうだった?」


 「ううん、クレスト元気だったけど。もっと元気になった!」


 もっと元気になったか・・・それならいいや。


 「クレストさん、お帰りなさい。思ったよりずっと早かったですね。今日は帰ってこれないかと思っていたんですが・・・」


 エメラが俺に言う。朝キノコ狩りに行くって伝えた時すごく微妙な顔をしていたのはこれが理由か。帰ってこれないと思っていたのね・・・


 「エメラただいま。だからルビアを迎えに行ってくれたんだな。ありがとう。今日はキノコパーティだ。あんま好きじゃないって言ってたけど、とりあえず食ってみてくれ」


 そういうとエメラは笑顔で・・・


 「はい、ごちそうになります」 と言ってくれた。



 その日は金の小麦亭でキノコパーティで盛り上がった。初めて食ったキノコはなんと絶品だった。テッドの腕もいいんだろうが、ラージーいわく 「こんな美味い求道キノコは生まれて初めてだ!」 とか。


 どうも、旧(オールド)ドラゴンを相当満足させることに成功したようで、俺が今まで食ったキノコの中で一番美味かった。マローダーもキノコが気に入ったようでご満悦だ。ちなみにサリーは 「・・・やるじゃん」 とか言ってた。君はどこポジションで語っているのかな


 ガルドルムも 「こりゃあ酒のツマミに最高じゃわい」 と言い、ミリアも 「求道キノコってこんなに美味しかったっけ?」 と言っていた。エメラなんかは 「・・・これなら、狩りに行くのもアリ・・・」 とか呟いていたし、エレーナさんに至っては 「・・・・・・」 と満面の笑みで食っていた。ってか、初めてのエレーナさんの最高の笑顔がキノコって・・・


 そんななか、一番気になっていたルビアの反応は・・・


 「美味しい!」 と本日一番の笑顔をくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。