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聖なる骨  作者: 骨素子 陽晶


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第25話 骨、街道を行く

 思い出のクマアーマーからスーパークマアーマーにレベルアップを果たした俺は、やっとエレーナさんのお許しが下りたので、依頼を果たすべくゴブリン狩りに街の外へ向かった。しかし新しいこのヨロイすごくカッコいいな。前のやつもよかったんだけど、今着てるこれは赤みを帯びていて超カッコいい。少し暗い感じの赤っていうか、例えるなら夕焼けだな。すこし暗くなりかけてる夕焼けの色だ。俺あの空好きなんだよなぁ。そうだよ、まさに赤銅色の空って言葉もあるしな。


 そういえば、ゲンガイの所のチーム名が”赤銅”だったな。あれも赤銅熊となんか関係あんのかな。


 そんなことを考えながら街の門まで来たら・・・


 「あ、お前は!」


 なんかまた聞き覚えのある声だな・・・


 「そうだ、確か、フレ〇コ」


 誰がスーパーマーケットだ、全国的にはマイナーかもしれないけどな、近畿圏ではすごいんだぞ!


 「俺の名前はクレストだ、三馬鹿」


 「「「誰が三馬鹿だ!」」」


 「っていうかなんでお前ら、北門にいるんだ?西門担当じゃないのか?」


 俺が今来ている門は北門だ。ベルガイアは街の東西南北にそれぞれ門が設置してある。魔の森はベルガイアの西に位置するので今日はメローネにつながる北門に来ていたのだ。


 「左遷か?」


 「違うわ!」 「なんてひどいこと言うんだ!」 「俺たちゃ、真面目に仕事してるわ!」


 こいつら息ぴったりだな。


 「じゃあなんで?」


 「門の警備は持ち回りだ」 「今日は北門の配置なんだよ」 「おかげでエリザベスちゃんの店が遠いんだよ」


 こいつまだエリザべスちゃんをあきらめていなかったのか、っていうかエリザベスちゃんって誰だ?


 「ふーん、そう」


 「なんだ、その薄っぺらい反応は!」 「そうだ、もっと会話を広げろよ!」 「エリザベスちゃんはもっと親身に聞いてくれるぞ!」


 エリザベスちゃんは仕事だから聞いてくれてるだけだと思うよ。


 「じゃあ、会話を広げるか。この門はだいぶ人が多いのによく俺が分かったな」


 この北門は、メローネとの交易路なので人の往来が激しいようで人混みであふれていた。俺は街をでる手続き待ちの人の列に並んでいたのだがそこでこの三馬鹿に見つかったのだ。


 「そりゃ、わかるさ!」 「俺たちの仕事を何だと思ってやがる!」 「門番だぞ!人を見分けるのも仕事の内だ!」


 まぁそりゃそうか、街の玄関口の任務に就く兵隊が抜けてちゃ話にならないからな。ここでしっかり見張って街の治安を守ってくれているのだろう。


 「まぁ、お前は分かりやすいからな」 「うん、スケルトンだし」 「一目瞭然だもんな」


 うん、わかってた。どんなに人混みに紛れても俺ほどわかりやすい奴はいないだろう。今、街で骨人族は俺だけらしいからな。識別率は街で一番なんじゃないか。


 「なるほど、しっかり職務を果たしているんだな」


 なんか面倒臭くなってきたから適当に返事しておいた。


 「そうだ、わかってるじゃないか!」 「俺たちがしっかり見張ってるからな!」 「怪しいやつは1人たりとも見逃さないぜ!」


 うーん、心配。



 「じゃあ、俺行くから」


 いつまでも三馬鹿に付き合っていたら日が暮れるので、俺は会話を切り上げた。


 「おう」 「気をつけろよ」 「日が暮れる前に帰って来いよ」


 エメラも言ってたけど、こいつら根はいい奴っぽいなぁ・・・馬鹿だけど。


 そういえば、今日はヘルメット、凹んでなかったな。



 三馬鹿と別れて街を出て、メローネへと向かう街道をプラプラ歩いていく。


 「フンフンフフフーン♪」


 気分がいいので鼻歌を口ずさみながら歩いている。いやー、いい陽気だ。天気もいいしおろしたての装備もご機嫌だぜ。街を出る前はスーパークマアーマーにうっとりしていたけど、このいぶし銀な剣もかっこいいんだよなぁ。道行く人もまばらになってきたあたりで、剣を抜いて眺める。陽の光に照らされて銀色に輝くマイソードはまさに聖剣!俺、伝説の聖なる剣をめぐる物語は2作目が好きだったんだよなぁ。そうだよ、マナが存在する世界なんだ。マナの木とかもあったりして。もしあるなら是非一度お目にかかりたいもんだ。俺は剣を眺めてそんなことを考えながら歩いていた。


 俺は気づいていなかった。いや、忘れていたといった方がいいのかもしれない。ベルガイアの街に馴染みすぎて、その外の世界でどうみられるのかを。骨人族が希少種族で初めて街に来た時にどんな目にあったかを・・・剣を抜いて歩いているスケルトンが周りの人々にどんな目で見られえていたのかを・・・



 「あ、あそこです!」


 ん?なんだ、なんか騒がしいな。


 「ちょっとどいて、そこ通して」


 あれ?さっきまであんま人いなかったのに、なんか増えてない?


 「みんな下がって!危ないから。我々に任せて下がって!」


 どうしたんだろう・・・危ないって、魔物でも出たのか?俺も下がった方がいいな。その声を聞いて俺も一緒に避難しようとしたときに・・・


 「大人しくしろ!スケルトンめ!」 「抵抗しても無駄だ!」 「こっちは三人だ剣をおろせ!」


 マジかよ・・・剣をもったスケルトンが近くにいるのか、危ないから俺も逃げないと・・・ん?剣を持ったスケルトン?


 声の方を振り向くと・・・


 「「「「あ!」」」」


 俺と三馬鹿の声が重なった。




 俺は剣を没収され、ベルガイア北街門の兵士詰め所に連行されていた。


 「お前マジかよ・・・」 「街道で剣を抜いて歩くなんて・・・」 「信じられないんだけど・・・」


 「・・・・・・」


 返す言葉もなかった。そりゃそうだよな、ベルガイアの街ではみんな俺の姿に慣れてきてたけど、普通に考えたら、街の外で一般人が歩いている中、剣を抜いたスケルトンが歩いていたら魔物がいるって思うよな。ていうか人間でも抜刀してたらアウトか・・・


 「・・・すいません」


 「俺たちだからよかったものの」 「他の兵士だったらまずかったぞ」 「もうちょっと常識をもとうな」


 くそっ!こいつらに常識を説かれてしまった。でも返す言葉もねぇ。


 「まぁ、もうすぐ身元引受人がくるから」


 詰め所で、絞られている俺に三馬鹿の一人がそんなことを言った。身元引受人って誰だ?そんな人いたっけ?


 そんなことを考えていた時・・・


 急に、寒気がした。温度が5、6度下がったかのような感覚が俺の全身を伝ってきた。


 コツコツコツ


 詰め所の部屋の外の廊下から誰かの足音が聞こえる。ドアの外から冷気が漏れてくる、音が近づく度に俺の震え何故か増していく。ダメだ、あのドアを開けてはいけない。俺の本能が全力で警戒音を鳴らしている。逃げなくては・・・今すぐ逃げなくてはならない。でも逃げたら・・・もっとまずいことになる気がする。


 ギィー・・・


 油を指していないのだろう、古い木製のドアが音を立てて開いていく。ドアのむこうに鬼(エレーナさん)が立っていた。



 「クレストさん、私が悪かったのでしょうか?」


 「い、いえ。最初から最後まですべて私が悪いです。すいません」


 「いいえ、私がちゃんと街道で無意味に剣を抜かないように言わなかったからこんなことになってしまったんでしょう?」


 「いいえ!すべてこのクレストの不徳の致すところなわけで・・・すいません」


 俺は今、詰め所の兵隊も震え上がる尋問を受けていた。三馬鹿もさっきから一言も発さない。こいつら馬鹿のくせにこんな時は空気を読みやがる。いや、気圧されて半目で気絶している。俺も気絶したい。


 溢れ出るマナが抑えきれないエレーナさんが俺の剣の鞘を左手でにぎり、剣の柄の頭を右手の人差し指でコツコツ叩いている。詰め所の部屋の静寂の中、剣の柄の頭を弾く音だけがこだましている。まったく苛立ちを隠さない様子が見て取れる、超怖い!


 「じゃあ、聞きますけど、なんで、街道で、剣を、抜いて、いたんですか?」


 「そ、それは、その・・・すいません」


 「謝ってほしいわけじゃないんですよ。なんでそんな馬鹿な真似をしていたのか教えてほしいんです」


 「あ、あの、いろいろ事情がありまして・・・すいません」


 「おかしいな・・・私の声が聞こえていないのかな・・・私は理由を聞いているんだけどな・・・」


 「い、いや、つまり、そのぅ」


 「早く教えてくれませんかねぇ・・・私が理性を保っていられるうちに・・・」


 ヒイッ!怖い怖い怖い!!誰か助けて!!エレーナさんが剣の柄の頭を弾く音が加速している、苛立っておられる!


 「つ、つまりですね・・・」


 「つまり?」


 「その・・・買ったばかりの剣がですね・・・その・・・すごく、かっこよくて・・・ちょっと眺めていた・・・みたいな?」


 瞬間、バキィ!って音が詰め所に響き渡った。見るとエレーナさんが左手で俺の剣の鞘を握りつぶしていた!噓でしょ!?素手で鞘を砕いた!俺のおニューの剣が悲鳴を上げている。そして俺の悲鳴も上がっている。


 「ひぃぃ!!ごめんなさい!ごめんなさい!!ごめんなさい!!!」


 俺は必死になって土下座した。見ると何故か三馬鹿も土下座している。


 「かっこいいから眺めていたですって!子供か!?初めて憧れの剣を握って振り回している子供かあんたは!?」


 「街道で剣を抜いたら、危ないのくらいわかるでしょ!そんなこともいちいち注意しなきゃいけなかったの!?私が悪いの!?私がちゃんと注意しなかったのが悪いの!?街道では危ないから剣は抜いちゃだめだよって言わなかったから悪いの!?」


 「も、もちろん違います!全部俺が悪いです!疑う余地もないです!」


 「当たり前でしょ!クレストさん、あなたにわかりますか!?ギルドで仕事をしていた私に衛兵の人があなたのことを知らせに来た時の私の気持ちが!しかもこんな馬鹿な理由でここまで来た私の気持ちが!」


 「す、すいません!本当にすいません!!」


 「こんな恥ずかしいこと生まれて初めてよ!剣を抜いて遊んでいたスケルトンを連行したから引き取りに来てくださいなんて言われたのよ!馬鹿なの!?ホントに馬鹿なの!?どこまで馬鹿なのよ!!?」


 「ごめんなさい!本当にごめんなさい!!」


 この後エレーナさんの怒りは2時間ほど続いた。俺はその間ずっと土下座していた。



 怒れるエレーナさんの猛攻をようやくしのいだ俺は、砕けた鞘の修理にグリスギンの店に行った。事情を聴いたグリスギンは何とも言えない顔をして、代わりの鞘を売ってくれた。幸いと言っていいのか、刀身は無傷だった。


 「新しい鞘の方が、デザインがかっこいいな」 と言った俺を見て・・・


 「・・・やっぱりお前反省してねぇんじゃねぇか?」 と言われた。


 断じて違う、反省はちゃんとしている。もうエレーナさんをあんな怒らせたくない。すごく怖かったし。


 その日は遅くなったので、宿に帰ったが、晩御飯の時にサリーに 「今日街の外に行ったんでしょ、どうだった?」 と聞かれて 「だいぶ刺激的だった」 と答えておいた。


 翌日、改めて依頼を果たすべく、ギルドに出発の挨拶を言いに行ったが、エレーナさんは行ってらっしゃいの挨拶をしてくれなかった。そしてギルドの入り口で・・・


 「よう、もうお務めは終わったのか?」 「詰め所に引っ張られたんだってね」


 と、アレクサンダーとクリスティーナに言われた。


 昨日衛兵がギルドに連絡に来たことでその場にいた奴らはみんなエレーナさんと衛兵のやり取りを聞いていたらしい、怒気を発し始めたエレーナさんが怖くて静かにしていたが、俺を引き取りに出発したのを見た後に全員で大爆笑していたとか、ぐぬぬぬ、悔しいが何も言えない。


 「クッ!確かに軽率だった。反省してる。・・・あの、みんな知ってるの?」


 「おう、もうベルガイアの冒険者は大体知ってるんじゃねぇか」 「伝説作ったわねぇー」


 「おおう、もう街を歩けない」 と言って、両手で顔を覆った。


 「まぁ、すぐ解放されてよかったじゃねぇか」 「よく、その日のうちに返してもらえたわね」


 ほんとそれな、エレーナさんと、まぁ・・・三馬鹿に感謝しとくか。


 「そんでお前らは何やってんの?なんか仕事に行くのか?」


 「ん?うーん、まぁこの間の報酬がたんまり入ったからなぁ。なんかいい依頼があったらやるけど・・・」 「そうねぇ、別に急いで何かやる必要もないわねぇ」


 やる気なさそうだな、こいつらは依頼ボードの周りをうろつくNPCと化しているようだ。


 「じゃあ俺は行くわ、またエレーナさんに怒られるからな」


 後ろを向く勇気はないが、もう圧じゃなく殺意を感じるので早々に出立したほうがいい。


 「なんかあっさりしてるな」 「あんたホントに反省してる?」


 グリスギンにも言われたな。反省してるとも、だからこそ次に活かさなければ。


 「では、さらばだ!」


 俺は一歩も振り返ることなく前だけをみて走り出した・・・怖いんで。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。もし面白いと感じていただけたら、差し支えない範囲でブクマ、感想、評価をしていただけたら嬉しく思います。

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