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聖なる骨  作者: 骨素子 陽晶


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第21話 骨、討伐に向かう

 街の門に向かうと、もうかなりの数の冒険者達が集まっていた。50人くらいいるかな。見知った顔がいるので、そちらへ向かう。


 「よう、お前ら」


 「おお、クレスト。お前も来たのか」 「おはよう、クレスト、エメラ」


 アレクサンダーとクリスティーナだ。ボッチの俺としてはこんなに大勢の集団の中にいるとそわそわしてしまうので、知った顔の傍にいると安心してしまう。


 「おはようございます、アレクサンダーさん、クリスティーナさん」


 エメラも挨拶を返す。


 「しかし、やっぱりって、俺がくることわかってたのか?」


 「まぁなんとなくな、そこそこ戦えて回復もこなせる冒険者は貴重なんだよ。エメラは絶対来るのがわかってたしな」


 「え、そうなの?」


 「オークはすべての女の敵だけど、特にメルヴィン教徒はオークに対して殺意が高いからね」


 クリスティーナが説明してくれたが、昨日の様子を見るに納得だわな。


 「そうですね、でも三つの殲滅種族の中でもオークは少しだけましですよ」


 エメラがそんなことを言うから少し気になった。


 「なんで?」


 「オークは死んだらその肉は我らの糧になりますから。そのくらいの価値しかない生き物ですけど」


 辛らつだ、でもちょっと待てよ。今気づいたんだけど、人間の女性が捕まってオークを出産することもあるんだよな。え、俺たちってそのオークも食べてたの?それはちょっと・・・いやかなりきついわー。


 「食べませんよ」


 エメラが答える。声に出てたか、顔に出てたか、とにかく食わないらしい。


 「さすがに人間から生まれたオークは食べません。その場で殺して焼いて供養します」


 「それって区別つけられるの?」


 「できます。死体のアニマを調べれば簡単にわかることです。知識があれば自分でもできますし、ギルドへ持っていけば、調べてくれます」


 遺伝子情報みたいな感じなのだろうか。しかしかなりホッとした。俺が先日ぶっ殺して食べたオークは、そっちじゃなかったってことだからな。


 「よう、クレスト。てめぇは来ると思ってたぜ」 「おはよう、みんな」 「腕が鳴るわいのぅ」


 声がしたので振り返ると、”炎の翼”の連中がいた。こいつらも調査隊に参加してたからな。討伐にも参加するようだ。


 「おはよう。お前ら、討伐にも行くんだな」


 「へ、当然よ」 「もちろん、オークは女の敵だからね」 「浅層にあんなもん(コロニー)作られちゃ迷惑でならんわ」


 そうやって、俺たちが雑談を続けていたら・・・


 「みんな集まったな!こっちに注目してくれ!」


と声が聞こえてきた。


 見るとでっかいハンマーを持ったドワーフのおっさんが声を張り上げている。


 「”赤熱”だ」 「すげぇ迫力だな」 「あれが、この街で3人だけのゴールドランクかぁ」


 どうもあれが今回の討伐部隊のリーダーのようだ。おっさんの横に二人の人物が見える、おそらくパーティーメンバーだろう。一人は弓を携えている、狩人かな。もう一人は神官風のいで立ちだ。

 あれ?近くにエイブラハムがいるじゃないか、あいつも今回参加するのか。エイブラハムは俺たちに気づいているようで、笑顔で手を振っている。


 「知らない奴もいるから自己紹介をしておく、俺がゴールドランクパーティー”赤銅(しゃくどう)”のリーダー、ゲンガイだ。今回の討伐は俺が仕切らせてもらうことになる。異論のあるやつはいないか?」


 誰も何も言わない、初見の俺でもわかるわ。すっげぇ威圧感。


 「では、私からも一言」


 ゲンガイの横にいた神官風の兄ちゃんが出てきた。


 「この世には、生かしておけない種族が三つあります。オークはその内のひとつ。私から言うことは一つだけです・・・皆殺しだ!」


 あー、あの兄ちゃんメルヴィン教徒だ。横でエメラも笑顔で 「皆殺しだー!」 ってかわいい顔でかわいくないこと言ってるし・・・


 「おー!やっちまおうぜ!」 「そうよ!皆殺しよ!」 「一匹たりとも生かしちゃおかねぇ!」


 周りの冒険者どもも同調している、みんな殺意高いなぁ。いや、わかるよ。街の危機だもんね、でもね、どっちが魔物かわからなくなるの。よく見ると、”赤銅”の3人目の狩人風姉ちゃんも、小さく手を上げ小声で 「・・・皆殺しだ」 って言ってるわ。


 「よし、行くぞ野郎ども!!」


 「「「「おおー!」」」」


 士気が高い。これなら戦意は下がらんだろう。事前に少し説明を受けたが俺は後方支援を指示された。まぁ当然だわな、ブロンズに上がったばかりだし、戦闘経験あんまないし。治癒に専念したほうがいいだろう。エメラはどうするんだろう。


 「そういえばエメラって冒険者ランクいくつ?」


 道すがらエメラに聞いてみた。


 「私ですか?ブロンズランクですよ」


 なんと、そうだったのか。じゃあ俺と一緒で後方支援なんだろうか


 「じゃあエメラも、後方支援?」


 「いえ、私は自由行動を許可されています」


 そうなん?俺がエメラとそんな話をしていると


 「エメラは貴重な戦力だからね、治癒だけじゃもったいないのさ」


 さっきの皆殺し兄さんがこっちにきた。残りの”赤銅”のメンバーにエイブラハムもいる。


 「ポーマッツさん、お久しぶりです」


 「エメラ、久しぶりだね」


 知り合いの様だ、まぁ同じメルヴィン教徒だからな。不思議ではない。やはりメルヴィン教徒だけあって鍛えこまれてるな、こんなもん神官詐欺だと思うがメルヴィン教徒ならこれが通常だからな。


 「初めまして、エイブラハムから話は聞いているよ。ポーマッツだ。”赤銅”で治癒師を務めさせてもらってる。よろしく」


 治癒師の体じゃないんだよなぁ。そんなことを思っていると・・・


 「お前が噂の骨人族か、さっきも言ったがゲンガイだ、よろしくな」


 「ああ、よろしく。それにしてもかっこいい名前だな。ドワーフってみんなそんなかっこいい名前なのか?」


 ビルスギンやガルドルムもうそうだけど、ドワーフって名前のセンスいいな。


 「そ、そうか」 と言って照れている。うん、やはりかわいくない。


 「・・・サフィーナ、弓使い。よろしく」


 「・・・うん、よろしく」


 さっきのミニマム皆殺しの子だ。無口タイプかな?


 「おはよう、クレスト君。久しぶり・・・でもないね。この間も教会に来てたし」


 そうだな。神聖なる教会でボコボコにされたわ。


 「エイブラハムも来てたんだな。ギルドから救援要請?」


 「そうだね、これたのは僕一人だけなんで申し訳ないんだけどね。その分僕が頑張って役に立ってみせるよ」


 いや、十分だろ。こいつ一人で片付けられるんじゃないか。そんな風にさえ思ってしまう。


 「それでさっきのエメラのことだけどね、エメラの本業は治癒師で冒険者が副業なんだよ。だから冒険者としてのランクは低いのさ。実力でいったらシルバーランク相当は十分あるだろうね」


 やっぱそうか、先日も牛を圧倒してたし、吹き飛ばされてた他のモブ共はブロンズだったからな。絶対同格じゃないと思ってたし。


 「もちろん、私の本分は治癒師です。だから、皆を治療しながら、殺しに行きます」


 なんか再生と破壊みたいなこと言ってる。


 「お前のことは、ゴールドバルグから聞いてる。ブラックオークを仕留めたって聞いてるから腕の方も悪くないんだろうが、無理はすんな。仲間の治療を優先してやってくれ」


 ゲンガイからそう指示され、俺は力強くうなづいた。こんな大所帯なんだ、調子にのってスタンドプレーをしてみんなに迷惑をかけるようなことがないようにしないと。



 それからわいわいみんなで、おしゃべりしながら、行軍していたんだが魔の森の入り口に着いたとたん、みんな打ち合わせでもしたかのように、押し黙った。やっぱみんな一端の冒険者なんだな、全員ピリついた顔で、戦闘モードに切り替わった。


 ゲンガイの指示で先頭に斥候役の冒険者が数名少し距離を開けて進みだした。俺は後方あたりの位置で前に倣って進んでいる。多分周りのやつらも治癒師なんだと思う。緊張した面持ちで進んでいる。


 魔の森に入って4時間ほどしたところで、戦闘の斥候が停止の指示を出した。


 「ここから30分ほど進んだあたりだ。切り立った崖の上に入り口があって、そこをくぐるとかなり広い広場がある。岩で囲まれて周囲から見てもわからない。奴らはそこを根城にしているようだ」


 斥候の報告にゲンガイが 「だから今まで発見されなかったってことか」


 「よし、作戦を伝える。といっても単純だ、俺が切り込む。それが合図だ」


 超シンプル、そんなんでいいの?


 「ケガを負った奴は、後方に下がれ。回復役はそいつらの面倒を見つつ敵と距離をとれ、四方を岩に囲まれているなら、奴らを追い込める。一気にケリをつけるぞ」


 敵が近いから、ゲンガイの指示にみんな黙ってうなずいている。


 しばらく進むと岩山が増えてきて風景が森から少し変わってきた。その先に斥候の言葉通り崖が見える。しかし入り口らしきものはここからじゃ見えない。斥候の話によると、下からじゃ死角になりわからなかったそうだ。オークの後をつけて、発見したそうだ。数日張り込んだ、冒険者の話によれば、今の時間、奴らは巣にこもっているらしい。攻撃のチャンスはこの時間がベストらしい。だがこれ以上近づけば、連中に気づかれるため奴らの正確な数が把握できなかったらしい。


 ゲンガイを先頭に全員が崖を静かに登る、そんなに高くないとはいえ、ここで気づかれたら、こっちが圧倒的に不利だ。


 崖の中腹まで登ると洞窟の入り口のようなものがあった。確かにこれは下からじゃわからない、オークの奴ら、いい隠れ家を見つけたもんだ。これなら長期にわたって気づかれる心配もないし、じっくり力を蓄えられるな。


 全員が登り切ったら、ゲンガイが先頭にたちジェスチャーでついて来いと指示を出した。


 洞窟というにはいささか短い通路を抜けると、確かにかなり広い場所があった。木で作った簡素な家がいくつも立ち並んでいて、ブラックオークどもが所狭しとうろついている。確かにこれは100体以上はいそうだ。


 さて、どうするの・・・「行くぞ!オラーー!!」・・・って早いな!もう行くの!?まだ気づかれていないんだから様子を見たりとかしないの!?他の冒険者も雄たけびを上げて飛び出してる。そういえばエメラは・・・!エイブラハムと一緒にほぼ先頭集団に混ざって特攻してる!治癒云々どこいった!?


 かくして、戦いの火蓋(ひぶた)は切って落とされた。

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