第15話 骨、今度こそ本当に冒険者を始める
ギルドに戻った俺をまっていたのは、凍てつくまなざしを向けてくるエレーナ様だった。すげぇ、無表情フェイスにもランクってあったんだな。さっきまでのがブロンズ級なら今はゴールド以上だ。
「それで、今度こそ、本当に、依頼を受けにきたんですよね?」
騒がしいはずのギルドが静寂に包まれている。背後の冒険者どもはこちらを見もしない。お前ら荒くれ者だろ。そんなんで冒険者としてやっていけんのか?マジで怖い。誰か代われください、お願いします!
「は、はい。こ、これでお願いします」
ゴミを見る目のエレーナ様におそるおそる依頼表を渡す。最初から目をつけていた、清掃依頼だ。しかし朝からあったのにまだ誰も受けていないってことは人気がないのだろうか。
「受注いたします、あらそれは?」
俺のぶら下げているマジックバッグに気づいてしまったか。
「はい、クリスティーナの紹介された店で買いました」
「ええ、アリスの作品ですね。私も使っています」
おおう、エレーナさんも知っていたのか。あいつ有名な奴なのかな。しかしこれのおかげでエレーナさんの表情が若干和らいだ、チャンスだ。
「はい、一目惚れで、いやー高かったですよ。おかげで金がほとんどなくなっちゃいました。ハハハ」
「じゃあ、ちゃんと働かないとですね」
「あ、はい。行ってきます」 ゴミを見る目に戻ってしまった。
「はぁ、アリスの作品は高いですけど物はいいので、いい買い物だと思います」
おおう、褒められた。超うれしい。
「はい!行ってきまーす!!」
***
ギルドを出て、俺は依頼人の居場所へと向かった。目的地にたどり着くとそこは一軒の民家だった。結構大きいな、かなり裕福な人なんだろう。
「すいませーん!ギルドの依頼できました」
呼び鈴を鳴らしながら、大声で呼ぶと中から一人の女性が出てきた。30歳くらいか、かなり品のいい感じの美人だ。
「はーい、どちらさま?」
「はじめまして、ギルドの依頼で清掃に来たクレストといいます」
「あらそうなの、ありがとうねぇ」あなた、骨人族の方なのね。じゃあ、最近街で噂になっているメルヴィン教会の人?」
「メルヴィン教会で世話にはなりましたけど、教会員ではないですよ。ってか俺って噂になっているんですか?」 アリスの所でもそうだったが、意外と知れ渡っているなぁ。
「そうねぇ、骨人族の人は珍しいから。このあたりじゃみんな知っているんじゃないかしら」
マジか、まぁ宣伝効果があったと思えば悪い話じゃないか。
「じゃあ依頼の掃除について教えてもらえますか」
「はいはい、こちらへどうぞ」
案内された部屋は確かにかなり汚れていた。アトリエに使っているのかな、キャンパスがいっぱいある。それと床や壁に絵具が飛び散って散乱している。かなりハッスルな活動をされていたようだ。芸術家の方かな?芸術は爆発っていうからな。
「こないだここで絵画教室を開いたんだけど、それでこんなに汚れてしまってねぇ。やっぱり子供たちは元気いっぱいねぇ、とても楽しかったんだけど、掃除が大変で。それでギルドに依頼を出したのよ」
なるほど、確かにこれを掃除するのはかなり大変だ。よっし、記念すべき俺の冒険者としての初仕事だ。気合入れてやろう。
「ごめんなさいねぇ、最近腰が痛くて。お願いできるかしら」
「もちろんです、お任せください。ピッカピカにして見せましょう」
「あら、頼もしいわねぇ。じゃあお願いね」
必要なものと捨てるもの、掃除道具などを借り受けて俺は掃除を始めた。
1時間くらいで、要不要をより分け一旦全部外に出して、部屋自体を掃除し始めたのだが壁や床の汚れが全然落ちない。聞けば特殊な素材で作った絵具らしく落ちにくいそうだ。このままでは日が暮れるな、どうしようか。
そういえば、クリスティーナが言ってたな。浄化が清掃に使えるって、試しにやってみるか。
「≪クリア≫」
おいおい、まるでそこになかったかのように、ピカピカになっちまったぞ。しかし、やっぱり“クリア”を使ってる手はピリピリする。仕方ないか、俺ってばそういう仕様なんだから、我慢だ。それにしても、アンデッド特攻や自身の清潔くらいに考えていたが、これ思ったより使えるなぁ。待てよ、俺はマナの形を自在に変えられる。モップみたいな形に変えて、浄化していけば。
おお!するする汚れが取れていくぞ。まるで掃除機だ。もっとちゃんと掃除機の形をイメージしよう。ハンディタイプのスタイリッシュなやつだ。イメージをかためて、俺はダイ◯ン、俺はダイ◯ン。よし、威力が上がった。汚れやホコリなんかも一緒に浄化されて消えていく。頑固な汚れも掃除機の先っちょに力を込めればキレイになる。しかし、ホコリはどこに消えていくんだろうな、不思議な現象だ。だが、これは超ラクチンだ。これならすぐ終わるぞ。
俺は30分ほどで部屋の汚れを完璧に落とし、外に出していたキャンパスや画材などに浄化をかけまくって、掃除を始めてから2時間ほどですべての掃除を終えた。
「すいませーん」
「あら、どうしたの?何かわからないことあった?」
「いえ、終わったので確認お願いします」
「え、終わったってまだ2時間くらいしか・・・って本当に終わってるわ。しかも、昔からあった床のシミまでキレイになくなってる」
多分最初から”浄化”使ってたらもっと早く終わってたな。あと、マナを掃除機の形に変えてから明らかに浄化の力が上がったな。もしかして、俺がキレイにするイメージが掃除機と合致したから威力が増したのかな。なるほど、マナはイメージってな。
「すごいわね、あなた。本当に以前よりピカピカになっちゃったわ」
「ありがとうございます。じゃあ依頼完了のサインかハンコください」
「はいはい、じゃあこれ依頼料ね。こんなにキレイにしてくれたんだからおまけするわね」
「どうもっす」 やったー、報酬上乗せだ。
「ちょうどクッキーが焼けたから、休憩してもらってお茶でもどうかと言いに来ようと思ってたのよ。どうかしら」
「ぜひ、ご招待にあずかります」
俺は上品なマダムとアフタヌーンティーを楽しんだ。ちなみにクッキーは美味かった。
マダムとのお茶会を終えた俺は、上機嫌でギルドに戻った。
「ただいまー!」
受付のエレーナさんに挨拶をすると彼女は少し意外そうに
「クレストさん、お帰りなさい。思ったより早いですね、依頼はどうでしたか?」
「はいこれ」 と言い、依頼完了の紙を渡す。
「拝見します。無事依頼完了したみたいですね。しかも高評価をもらってます。またお願いしたいと書かれていますね」
「おお、それは嬉しい。いつでもどうぞ」
初仕事は大成功だ。
「それで、どうしますか?今日はもう終わりますか?」
そうだなぁ、帰るにはまだちょっと早いしなぁ。
依頼表を見てみると清掃の依頼がまだある。もう一件行ってみるか。
「これ、お願いします」 依頼表を剥がしてエレーナさんの所に持っていく。
「受領しました、それでは頑張ってきてください」
おお、朝とは雲泥の差だ。
「はい、行ってきます!」
***
二件目の依頼は、少しこじんまりした民家だった。レンガつくりですごい俺好みだ。
「ごめんくださーい!」
例によって呼び鈴を鳴らしながら叫ぶが返事がない。
「すいませーん!ギルドの依頼で来たんですけどー!」
続けて叫んでいると
「すまない、空いているから入ってきてくれたまえ」
家の中から声がした。
それならばと失礼して、家に入れば本の山だった。廊下も本で埋め尽くされていて、細い道があるが崩しそうでちょっと怖い。おそるおそる中に入っていくと、書斎に依頼人がいて机に向かっていた。
「すまない、今少し手が離せなくて、少し待っていてほしい」
すごく熱心に何かを書いている。邪魔するのも悪いので後ろ待機している。
それにしてもすごい本の量だ、この部屋も本で埋め尽くされていて足場がほとんどない。廊下にあふれ出していたのはごく一部だったようだ。学者かなにかかな?
「やぁ、お待たせ。すまないね、キリのいいところまで書き上げてしまいたかったんだよ」
振り返った人物は60歳くらいの穏やかな感じの人だった。物腰は柔らかそうだが、うーん、すごい体幹がしっかりしてるな。多分結構な使い手だこの人。うーん、なんかメルヴィン教会で修行してから、人のそういう部分を最初に見るようになってしまった。だって、エイブラハムにそういう風に叩き込まれたんだもの。
「いえ、お気になさらず。何書いてたんですか?」
「骨の洞窟に関する論文だよ。少し前に調査を頼んでね、その報告をまとめていたのだよ。あそこは実に謎が多い。ダンジョンなのかただの洞窟なのか、それすら結論が出ていない。中にいる魔物もスケルトンタイプだけというのも異質だ。そもそも彼らはどこから発生した?何故生身の魔物はでてこない?スケルトンが発生するメカニズムとしてまずは生身の魔物がいないと理屈に合わない。そして彼らは洞窟から何故か出てこない、これもおかしい。別に封印されているわけではない、なのに彼らはあそこから離れようとしない。ならばダンジョンなのか?だとしたら今まで一度もスタンピードが発生しないというのも不自然だ。本当に興味が尽きないよ」
お、おう、なかなかの熱弁だ。なんかエメラと通じるものを感じる。
「ん、そういえば君は骨人族だね」
今気づいたのかよ!この人、集中すると周りが見えなくなるタイプだ。
「ああ、そうか。君がクレスト君だね、エメラ君から話は聞いているよ」
「エメラを知ってるんですか?」
「もちろん、骨の洞窟の調査をエメラ君に頼んだのは僕だからね」
なんと、この人がエメラの依頼人だったのか。そうか、エメラが言ってた教授ってこの人のことか。ということは・・・
「俺は骨の洞窟で彷徨っていたところを、エメラに救われました。ならばその依頼を出したあなたは、間接的に俺の命の恩人です。ありがとうございました」 と言って頭を下げた。
「そんな、かしこまらないでくれたまえ。たまたま僕が依頼を出して、たまたまエメラ君が君を見つけた。それだけの話だよ」
それでも感謝は尽きないが、あまり言うのも野暮というものか。
「では、依頼の部屋に案内するよ」
てっきり、この部屋の整理かと思ったがそうじゃないらしい。案内されるままついていくと 「ここが書庫だよ」 と言ってきた。
かなり大きな部屋だ、この家で一番大きな部屋なんじゃないか?本棚がたくさんあってびっしり本で埋め尽くされている・・・と思ったら、あっちの方がガラガラだ。
「いや、恥ずかしい話なんだけどね。調べ物やレポートを書き上げるためにここから本を出して書いてたんだけど、片付けずに次の本出してね。それを繰り返してたら、廊下と書斎があんな風になっちゃったんだよね。だから、本の整理とここの掃除をやってほしいんだよ」
うんうん、あるある。読みたい漫画を出して、次の漫画を、次の漫画をってやってたらいつの間にか床が漫画だらけっていうの。片付けるのが面倒になって山になっていくんだよねぇ。
書庫を見渡してみると、かなりホコリも積もってる。さっきの様子からすると、掃除をしてる暇はあまりないのだろう。だが俺の”浄化”があれば一発だぜ。
「わかりました。じゃあまずはホコリを浄化して部屋を奇麗にしてから本を戻しましょうか」
「あー、ちょっと待ってくれ」
「なんです?」
「”浄化”は使っちゃだめだよ」
「うん?なんで?」
「知らなかったのかい、”浄化”を使えばインクも浄化されるから本の文字も消えちゃうんだよ」
なんですと!?マジかよ、あっぶねぇ。危うくこのおびただしい本の山を全部白紙に変えてしまうところだった。
「そ、そうだったんですか。すいませんでした」
「いやいや、いいよ。いやー、でもヒヤッとしたねぇ」
カラカラと笑ってくれているが、こっちは冷や汗がとまらねぇ。
しかしまいったな。”浄化”なしでこの規模のホコリを掃除していたら今日中に終わらないぞ。ふーむ、それならこんなんどうだろう。
「ちょっと確認いいですか?」
「うん、なんだい?」
「本に当たらなければ”浄化”を使ってもいいんですよね?」
「そりゃまぁそうだね」
「では、ちょっと見てください。≪クリア≫」
”浄化”を唱えて、マナを糸状に伸ばしてみた。糸は俺の意思で好きなように動かせる、太さも長さも自由自在だ。掃除のイメージと違うので浄化力は落ちてしまうが、これならいけるんじゃないか。
「どうですか?これなら本を避けながら隙間を掃除できると思うんですけど」
「ほぇー、君は器用だねぇー。確かにこれなら大丈夫だね。お願いするよ。面白いから僕も見てていいかい」
「どうぞ」 と言い、掃除を始めた。本に当てるわけにはいかないので、かなり気を使うが、うねうねと本の隙間や部屋の角を移動させる。まるで蛇だな。うむ、この技をクリアスネークと呼ぼう。
教授は、 ”ほぉー” とか ”おおう” とか言いながら興味深そうに俺の仕事を見ている。1時間ほどで、部屋の掃除が終わった。本を避けながらというのはなかなかに神経をつかったぜ。教授は楽しそうに 「面白いものを見せてもらったよ」 と言っていた。
部屋がキレイになったので、次に廊下の本を書庫に戻し始めた。先生も手伝ってくれながら、戻していると、クジラの絵が表紙になっている本が目に入った。
「ああ、ここにあったのか」 と教授が呟くので。
「これは何の本ですか?」 聞いてみた。
「これはね、海帝クジラの伝説について書かれた本だよ」
「海帝クジラ?」
「うん、ある地域の港町では海神としてあがめられている魔物だね。航海に出る船乗りは海が穏やかだと、海帝クジラの機嫌がいいと言うことわざまであるんだよ」
ほぇー、そんな演技のいいクジラがいるのか。俺はイルカとかベルーガとかクジラ系の生物が好きだ。あいつらは賢くて人間の言葉を理解してくれるし、何よりかわいい。前世ではシロイルカのショーを見に行くほどのイルカ推しだった。
「そりゃあ、見てみたいもんですねぇ」
「そうなんだよ、だけど残念ながら最後に姿を確認されたのはユリアナ・グッドフェローが活躍していた時代でね。彼女が海王イカを撃退したときに海帝クジラが力を貸してくれたと物語にあるんだよ」
「ユリアナってどっかで聞いたな。どこだっけ?」
「ユリアナを知っているのかい。彼女は有名な冒険者にして歴史研究家でもあったんだよ。骨の洞窟にも関心があったようで、彼女は調査隊にも参加しているとされている。古代の文明に強い関心があったようだねぇ。エメラ君もユリアナのファンで彼女の記録を読みによく家に来るよ」
ああそうか、エメラが言ってたんだ。つまりエメラのユリアナ推しはこのイケおじの影響か。
しかし海帝クジラか。いつかその港町に行ってみたいな。
「その海帝クジラを敬ってる港町はどこなんです?」
「おお、興味があるのかい。ベルガイアから北にあるシーポートって港町だよ。そこもベルガイア領だけど、ここからはけっこう距離があるねぇ。しかし海帝クジラに興味があるのはうれしいねぇ。僕も人生で一度は会ってみたいものだよ」
「さっき、海王イカだっけ、それを撃退したときに人間に手を貸してくれたって?」
「公式記録では、そうは記録されていない。あくまで物語で脚色されただけだってね。でも僕はね、これは物語の方があっているんじゃないかとにらんでいるんだよ。伝承や童話は侮れないからね、公式記録の方にいくつか怪しい点もあるんだよ」
この先生の話面白いな。話し上手だし、内容も興味深い。俺は掃除の手を止めて教授の話に聞き入った。
***
「・・・・・・つまり、骨人族とスケルトンには共通点が多いんだよ。一説には理性をもったスケルトンが骨人族だという学者もいる。でもね、僕はそれはいささか暴論だと思うんだよね」
「ふむふむ、というと?」
「つまりね、それが正しいとすると冒険者は骨人族たりえるスケルトンを、魔物として倒してることに問題が起こってしまう。そしてスケルトンは人を見ると襲い掛かる、骨人族にもね。くわえて、人が死んで強い未練を持ち、そして瘴気に晒された骨がスケルトンになるというのが通説だ。だから、スケルトンは瘴気をまとっているから区別がつけやすい」
そうなのか、俺が洞窟で会った奴らもなんか禍々しかったのは瘴気を纏っていたからなんだな。
「じゃあ、スケルトンから瘴気をなくせば骨人族になるかもしれないと?」
「そうなんだよ、でもね。それは難しいよね」
「え?浄化を使えば瘴気は消えるんじゃ?」
「うん、瘴気は消えるけど、スケルトンも消えるんだよね」
おうふ、そうか。
「だけどね、さっきも言ったけど、共通点もあるんだよ。まず、種族名がかぶってる。骨人族も何々スケルトンとか種族名が付くことが多い。これが事をややこしくしてるよね。あとスケルトンはマナで直接的に動いているんだよ」
「というのは?」
「つまりね、例えばスケルトンの腕を切り落としたとしよう。人間だったら、高位の治癒魔法か高ランクのポーションでも使わない限り、腕はくっつかないけどね、スケルトンは腕をあてるだけでくっつけることもできるんだよね。高位のスケルトンになったらマナで操って体のパーツをバラバラに飛ばすなんてこともできるらしいんだよ。僕は骨人族もマナで直接的に動いているとみているから、同じことができるんじゃないかと思っているんだよね」
ほうほう、それは面白いな。つまり、ロケットパンチができるということだな。
「要するに、よくわからないってことだね。まぁ僕からしたら、どっちも人の骨から生まれてるんだろうし、そうじゃなくても、楽しく会話できればスケルトンでも骨人族でも、ぶっちゃけそれ以外でもなんでもいいんだけどね」
ホントにぶっちゃけたなぁ、でも嫌いじゃないぜ。
会話が楽しくて、すっかり夜遅くなってしまい慌てて残りを掃除してギルドに戻ってきた。”またおいで”と言ってくれたので、ぜひ文字を覚えて本を読ませてもらいに行きたい。言葉も勉強したほうがいいな。いつまでもマナ・チャネリングに頼りっぱなしはよくないし。
ギルドに戻ってきたら、エレーナさんが受付で待っていた。あれ?なんか笑顔だ。いつも無表情フェイスなのに笑ってる。なんかいいことあったのかな。いや待て、よく見ろ!目が笑ってない。これ怒ってる?怒ってるよね?もしかして俺に怒ってる?
「あのぅ、ただいま戻りました」
「・・・ええ、お帰りなさい。ずいぶん遅かったんですねぇ」
うん、俺に怒ってるね。とりあえず謝っとくか。
「ごめんなさい」
「なぜ謝るんですか?クレストさんはなにも悪いことしてないでしょう」
「ええと、その、差し支えなければ、事情を教えていただければと」
聞けば、ギルドは緊急時にも対応できるように24時間体制で営業している。当然受付嬢も常駐しなければいけないので、シフト制で勤務しているそうだ。エレーナさんはもうシフトがとっくに終わっているのだが、俺が今日初仕事だったので心配だから帰ってくるまで待っていてくれたらしい。”まさか、こんなに遅くなるとは思いませんでしたが”と言われた。
俺は、日ノ本直伝の土下座を敢行した。




