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聖なる骨  作者: 骨素子 陽晶


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第13話 骨、治癒魔法を学ぶ

 秒で出戻りした俺を、メルヴィン協会の連中は温かく迎え入れてくれた。 「すぐに戻ってくると思っていたよ」 とエイブラハムが笑いながら言ってたので理由を聞いてみると 「だって君、治癒魔法の修行にきたんだろ?そっちはまだ何もしていないじゃないか」 とのたまいやがった。気づいてたんなら言えよ。 「じゃあ行こうか」 と言ってエイブラハムに連れていかれたのは、治癒院だった。中に入るとエメラが迎えに来てくれて 「クレストさん、ようやく来ましたね。なかなか来ないからどうしたんだろうと思っていたんですよ」 と言われた。エイブラハムは静かに笑っている、あいつ絶対最初から気づいていやがったな。俺の聖護院での3か月は何だったんだ。


 「クレストさん、では治癒魔法の訓練を始めましょう」


 エメラが案内してくれた個室で授業が始まった。 「なぁエメラが教えてくれるのか?なら最初からここに来ればよかったんじゃないのか?3か月の修行意味なかったの?」 と俺が疑問をぶつけてみたら


 「まさか、そんなことはありませんよ。クレストさんは3か月の修行で見違えるようにマナが洗練されています。これなら治癒魔法習得もすぐにできるでしょう」 と言ってくれた。そうか、修行は無駄じゃなかったんだな。本当に良かった。


 「治癒魔法というのは光属性の術者がある程度マナのコントロールができて、傷を治すイメージが固まっていれば習得できるんですよ」


 「え、そうなの?そんな簡単な感じなの?」


 「言葉でいうのは簡単なのですが、そのある程度のマナのコントロールというのがネックでして、これが意外とクリアできない人が多いんですよ。操作に失敗すると、発動しませんしイメージが固まってないとやはり失敗します。マナを無駄に消費しますし、最悪傷口が悪化するなんてこともあります。過去に中途半端な技術で治療を行う者がいたのですが、周囲が止めるのも聞かずに自分の身の丈を超える治療を強行して傷口を腐らせ患者を死なせた記録があります」


 なにそれこわい。やっぱ医療行為は軽はずみにやるもんじゃないな。


 「まぁそれは極端な話ですので、今のクレストさんなら初級のヒールならできると思いますよ」


 マジか、修行のおかげで下地はできていたということか。


 「まずは、魔法の基礎知識からです。そもそも魔法とはマナを行使して奇跡を体現する御業のことを指します。そしてマナは土、水、火、風、光、闇の6種類に大別されます。この世のすべての命はこの6種類のマナの内一つを主属性にもち、もう一つを副属性にもちます」


 「ああ、なんかエレーナさんが言ってたな。副属性は修行で身に着けろって」


 「そうです。副属性の説明については後で話しますが、まずは主属性の魔法について話します。魔法とは大きく分けて固定魔法と自由魔法に分かれます。固定魔法とは、読んで字のごとく基本に忠実な魔法を指します。初級、中級、上級といった具合に等級があがり当然上の階級にいくほど難易度と威力が上がります。火のマナで例えると、初級がファイアーボールやファイアーアロー、中級でファイアーランスといった具合です。固定魔法は習得がしやすく、誰が使おうが画一的なのが特徴です。魔法の教本にも載っているので学びやすいのも特徴ですね。威力も込められたマナによほどの差がないかぎり、ほぼ一緒でしょう。魔法を学ぶものが最初に覚えていくのが固定魔法ですね。対して自由魔法とは、これも言葉の通り自由に形や威力、時には性質さえも変容させていく魔法のことです。自由魔法は決まった形がなく、個人の個性にかなり左右されます。先ほどの火の魔法でも固定魔法はみんな同じですが、自由魔法は十人十色、人の数だけ種類があり、多様性に富みます。マナの力量と想像力でどこまでも進化していく、それが自由魔法です。マナの神髄とはこの自由魔法を極めいくことであるといっても過言ではありません。そのためにはマナのコントロールは必須なのです」


 ふむふむ、なるほどねぇ。だからあんなに修行させたのか。確かにマナの扱いは格段に上がったもんな。


 「そして最後に副属性なのですが、人は誰しも主属性ともう一つ副属性を持っています。アニマを広げ、マナを鍛えていくことで、己の内なる器はさらなる高みに昇るとされています。その時に目覚めるのが副属性と言われています。副属性に目覚めることによって魔法はさらに進化を遂げ、同じ属性使いでももはや全くの別物になるほどの魔法になるらしいです」


 「らしいですとは?」 「私も副属性はまだ見つけられていないんですよ。相当研鑽を積まないと副属性は開花しないんです。メルヴィン教会でも副属性に目覚めているのはダムブレッドさんとエイブラハムさんだけですよ」


 マジかよ、そんな難易度高いのかよ。 「自分の副属性が何かを見つける方法はあんの?」


 「研鑽を積んで、自ら見つけるしか方法はないそうです。ギルドの魂の水晶が副属性を示さないのも主属性の輝きに隠れてわからないからというのが、学者たちの見解ですね。ダムブレッドさんはその時が来ればおのずとわかると言ってました。ですので今はまず、固定魔法の光属性初級のヒールから覚えていきましょう」


 確かにエレーナさんも副属性は修行して見つけろって言ってたっけな。一つずつコツコツとやっていくのが正解なのだろう。

 「わかった。教えてくれ」


 「はい、といっても既にクレストさんは、ヒールを覚えるのに必要な条件の内一つはクリアしています。先ほど言った、マナの制御、そして後はイメージさえ固めることができればヒールを習得できるでしょう。ちょうどさっき私が手の甲を擦りむいたんでこれを治してもらえますか?」


 「い、いきなりか?よ、よしわかった。しかし、イメージか。なんかアドバイスってある?」


 「そうですね、やはり治すイメージを持つのが一般的ですね。あとはこれは学術的な話になるんですが、光のマナは闇のマナと対を成し、始まりと終わりの力と言われています。光も闇も始まりでもあり、終わりでもあるといった話で。あとは色で例えたりする人もいますね。光は白、闇は黒みたいな」


 ふむふむ、なるほど。治すイメージね、傷口がふさがる?時間が戻って逆再生みたいに治っていく?傷口自体をなかったことにする?・・・ふーむ、どれもしっくりこない。いや、それは正しくない。どれも正解なんだろうが俺のなかでかっちりはまらない。この表現じゃだめだ。直感的にそう思った。掌の上にマナを集める。丸い白い光が手の先にある。そうだ、この白の中は俺の世界だ。だからこの世界では俺が許可しない傷は存在できない。 「ク、クレストさん。それは!?」 エメラが何かに驚いている。「クレストさん!その光を私の手に、そしてヒールと」


 言われるがまま、エメラの手に光を当て、ヒールと唱えてみた。一瞬で彼女の擦り傷はまるでそこになかったかのように消えていた。


 「す、すごい、すごいですよクレストさん!一発でヒールをマスターしてしかも、こんな強力な・・・多分今のは中級のミドルヒールに匹敵する威力でした!」 とエメラが興奮しながら教えてくれた。


 「そ、そうなのか。じゃあこれでヒールをマスターしたのか?」


 「そうですね、今のイメージを固めてしまえば大丈夫だと思います。それに今の光の強さは?もしかしたら固定魔法ではなく自由魔法になっていたのかも・・・」 なんかブツブツ言い始めて自分の世界に入っちゃった。


 しかしイメージね、確かイメージでいくらでも変わるって言ってたよな。まてよ、じゃあ別に丸い形じゃなくてもいいのか。例えばドクロの光のマナとかできたりして・・・・・・・・・おおう、できるじゃないか。そうか、自由魔法ってこういうことか。すごいしっくりきたな。あとは性質も変えられるって言ってたな。ううむ、もうちょっと光のマナを固形物とかにできたりとかは・・・・・・・・・・・・ハァハァハァ、きっついガンガンマナを消費してるのにできない。変化はないのにマナは消費する。つまりこれは俺が心のどこかで光は固形物じゃないって認識してるからじゃないか。常識が邪魔してるんじゃないかと仮説を立ててみる、ならば絶対できるってイメージすればできるんじゃないか?そうだよ、前世でも光の剣とかいろいろ創作物はあったんだから、光の個体もできるんじゃないか。これは光の個体、光の個体、光の個体。


 ・・・できない。もうちょっと感はあるんだけどそこから先に進める気がしない。少なくとも今の俺には無理だ。そのかわり光の剣はできた。椅子に当てたらケムリが出てきたから慌ててやめたけど、あと椅子がちょっと焦げた。


 いろいろ検証した結果、光の固体化はまだ無理、でもマナの形は自由に変えられた。あと半固体化とでもいうかレーザーサーベルみたいなものはできた。しかしマナの消費がとんでもないわりに威力がスカスカだ。イメージが足りないのか単純にマナ不足か、そのへんはこれから要検証だな。しかし自由魔法は思った以上に自由度が高いな。じゃあ、そろそろエメラを呼び戻すとしよう、さっき覚えたライトドクロちゃんで。


 「ほーらエメラ、これを見てごらん」 と言って、ライトドクロちゃんの顔を出して歯をカタカタ鳴らしてみた。固体化はできなかったが、なんか音くらいは出せたのだ。


 「さっきのはやはり固定魔法ではなく自由魔法、それも中級相当の威力、しかしあの威力はレッサースケルトン級のアニマで発現できるわけが・・・・・・ってえーー!な、なんですかこれ!」 なんかブツブツ言ってたエメラだが、俺のドクロちゃんを見たとたん軽く悲鳴を上げた。


 「なんですかなんですかこれ?光のマナがドクロの形になっている。形態変化?これもう完全に自由魔法ですよ!なんでできちゃうんですか!?」 なんかいろいろ驚いている。


 「なんかコネコネっと形を変えたらできちゃいました。ドクロちゃんです」


 「そ、そんな簡単に自由魔法はできないんですよ。ましてやこんないきなり。私だってできないのに」


 なんか落ち込ませてしまったようだ。 ここはひとつ慰めてやらねば 『まぁまぁ元気をだして』 と腹話術っぽくドクロちゃんをしゃべらせて見せた。


 「ドクロちゃんで慰めないでください。!余計に落ち込んでしまいます!」



 しばらく落ち込んでいたエメラだったが、ようやく立ち直ったのか 「失礼しました。ちょっと取り乱しました」 と言ってきた。


 「いやいいよ、でもこれが自由魔法って言ってたけどエメラはホントにできないの?」


 「少しくらい形を変えることはできます。それも自由魔法と言えなくはないんですが、あそこまで自由自在には形を変えることはできません」


 そうなんだ。ってことはあれかな、前世でいろいろなアニメや漫画をみて妄想を膨らましていたのが良かったのかな。何が幸いするかわからんものだ。


 「それで、ヒールをマスターしたわけですけど、どうしますか?解毒魔法のキュアも練習してみますか?」


 「そうだな、いやその前に俺の体にヒールをかけてみよう」 地獄の修行で俺の体は傷だらけだ。ヒールで治るなら治してしまおう。


 「そうですね、普通のスケルトンはヒールは毒ですが、クレストさんは大丈夫ですしね」


 「よし、では≪ヒール≫」 俺は自分の体全体にヒールをかけた。体のあちこちの傷が痛みをともないながら治っていく・・・ん?痛み?


 「・・・いだだだだだだだ!!!!」 「ク、クレストさん!?どうしました!?」

 とんでもない激痛が襲ってきて思わず俺はうずくまってしまった。エメラは何が起こったのかわからずにオロオロしている。


 しばらくうずくまっていたが、やがて痛みが治まってきて 「お、俺、どうなったの?死んじゃった?」 とエメラに俺の体について聞くと 「い、いえ、確かに傷は回復していってました。でもクレストさんがいきなりすごく苦しみだして」 と答えてくれた。


 「・・・確かに傷は全部治っているな」 自分の体の状態を確認したら、間違いなく俺は自分で自分を治療できていた。しかしあの痛みは一体なんだったのだろう?


 「ダムブレッドさんに相談してみましょう」 エメラがそう提案してくれて俺たちは、聖護院の方に行き、ダムブレッドに会いに行った。


 「なるほど、そんなことが」 話を聞いたダムブレッドは、俺の体を診察し、しばらく考え込むと 「エメラ、クレストさんに”浄化”をかけてみください」


 「え、でも」 「大丈夫です」 「わ、分かりました。≪クリア≫」 エメラが唱えた瞬間俺の体が光に包まれた。


 「どうですか、クレストさん?」 とダムブレッドが聞いてくるが別に何も・・・・・・「あだだだだだだだ!」 痛い!さっきより若干ましだが普通に痛い!


 「ふむ、なるほど」 いや納得してないで止めろよ!痛いって言ってんだろ!!


 「もういいですよ、エメラ」 エメラが魔法を解くと痛みが治まった。


 「あの、これってやっぱりクレストさんが骨人族だからですよね」


 「まぁ間違いないでしょうね。しかし見てください、クレストさんを」 

 「これは!?クレストさんが奇麗になってる。といことは?」 

 「ええ、そういうことですね」 


 二人が納得しあってる。


 「え?つまりやっぱり俺はスケルトンだから光魔法が弱点ってこと?」 


 やはり光属性はダメなんだろうか


 「いえ、クレストさん。今の浄化もあなたは痛みは感じていましたが、体自体にダメージはありませんでしたし、体の汚れが奇麗になっています。そしてヒールでちゃんと傷も治っている。あなたは主属性が光、ちゃんと光属性の恩恵を受けることはできるのです」


  そ、そうなのか。良かった。


 「一方で、スケルトンの体なので痛みは感じるようですね」


 ・・・今なんと?


 「つまり、光魔法でしっかり回復もおそらく強化もできるんですけど、痛みは感じるということですね」


 「・・・・・・えーと、光魔法は使える?」


 「はい」


 「浄化も使える?」


 「はい」


 「解毒とかもできる?」


 「はい」


 「光のマナで強くもなれる?」


 「はい」


 「でも痛みは感じる?」


 「はい」


 すっごい優しい笑顔で司教様が答えてくれた。


 「いやいやいや!!うそでしょ!?何そのドM仕様。俺これから光のマナを使う度痛いってこと!?最悪だぁー!」


 「まぁまぁ、痛みを感じるだけですので実害はありませんから」


 「痛みを感じるだけで実害ありまくりだろうがぁーーー!!」


 こうして俺はヒールを習得した。

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