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転生令嬢、卒業パーティーで運命の告白を待っていたら、毒舌幼馴染しか隣にいませんでした  作者: 白波美夜


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3/4

3 攻略対象(仮)、全滅。そして幼馴染が消えました

(……どうしよう、完全に詰んだんだけど)


私は、学園にある噴水のヘリに座って、頭を抱えていた。

最後の砦だった運命の人候補ーーエドガー様がノエルさんとくっついてしまった。

絶体絶命だ……!私は、今後この世界で一体何をどう頑張って生きればいいの……!!


「おー!落ち込んでる間抜け発見」


聞き慣れた気だるげな声。振り返らなくてもわかる。


「ジル……」

「ついに、お前の運命の人候補、全滅したんだろ?」


ジルはニヤニヤと楽しそうに笑っている。なんてイヤなやつなんだ!イケメンだって許されないことはあるんだぞ!


「うるさい!乙女心が今、砕け散っているのよ!砕け散ったこの心が、今、噴水に流されてるの。この気持ちがあなたにわかる!?」

「全然わかんねぇ。大体、心が砕けて噴水に流されるって何?」

「だ、だからそれは……!」


そんなの、適当に言ったんだ。私にだってわからない。でもこいつに言われるのはムカつく!

ジルはため息をついて、ぽつり、と呟く。


「別にいいんじゃね?お前、あいつらに本気じゃなかったじゃん」

「はぁーーー!?本気でしたけど!?私が何歳の頃から、将来出会う運命の人のために努力してたと思ってんのよ!!」

「知ってるよ、自分磨き、頑張ってたもんな。でもお前、そんな自分が好きで、楽しそうにしてたろ。別に、運命の人のためにやってたわけじゃない」


その言葉が、ストン、と胸に落ちた。


「え、そうなのかな」

「お前が本当に恋愛脳で、運命の人とやらのために頑張ってたら、普通シャルのマリア嬢へのプレゼント選び付き合ったり、ノエル嬢にアドバイスしたりしないだろうが」

「いや、だって2人とも困ってたし……ノエルさんは、なんて言うか色んな意味でほっとけない感じあったし……」


ジルが、楽しそうに笑っている。


「ほんと、お前ってバカだよな」

「っ全然!バカじゃないですけど。私、成績上位だし!」

「でも俺より下じゃん」

「ぐぬぬぬぬ」


ジルは珍しく声を上げて笑って、私の髪をもみくちゃにした。


「あんたって、ほんと嫌なやつね!」

「お前は、ほんとお人好しだな」


ジルが立ち上がって、遠くを見つめる。「ジル?」と声をかけると、彼は肩をすくめて、コチラを見た。


「なぁ、リエラ。しばらく元気で…..いや、違うな。元気だと周りに迷惑かけるから、大人しくしてろ」

「はぁ?何それ!!……ってかあんた、どっかいくの?具合わるいの?」

「別に?……乙女心が砕けて、とかさっき言ってたけど、ヤケになってやけ食いするなよ」

「しないわよ!」

「腹出して寝て、風邪ひくなよ」

「だからしないってば!!」


ジルが一瞬、寂しそうに微笑んで、立ち上がった。


「じゃあな、リエラ」

「ちょ、ちょっとどこ行くのよ!?」


呼び止めても、彼は振り返らず、いつものように片手をひらひらと振って歩いていってしまう。橙色に染まる背中が、だんだん遠くなっていく。


「……なによ、あれ」


一人残された私は、噴水の縁に座ったまま、変な胸騒ぎを持て余していた。

そして、次の日も、その次の日もーージルは学園に来なかった。


ーーーーーー


「ジルフォード様、どうされたのかしら」

「本当に、先生に聞いてもあやふやなご回答ばかりですし……リエラ様、ご存知でして?」

「いえ、私も特に聞いていませんが」


ジルフォードが休むようになって、はや3日。最初は静かにしていたあいつのファン達も、今となってはひっきりなしに私のもとに様子を聞きにくる。


(私はあいつの保護者じゃないんだ!知るか!)


そう思いながらも、ジルの「じゃあな」の声がこだまする。何か、あったのだろうか。

そこでふと、気づく。


(あれ?あいつ、すごいイケメンじゃない……?もしかして、私がこの世界のヒロインで〜なんて呑気なこと思ってたけど、これは完全なバグなのでは)

(この世界ってあいつが主人公の小説なのでは!?……だから、この学園はイケメンまみれなのでは!?)

(そうなら、どんな話なんだ?もしかして、イケメンたちで何か強大な敵に立ち向かう、みたいなそう言うやつ?そして、私はそれを見届けるために転生したのでは!?)

(だとしたら、ジルが危ない!!)


ガタン、と椅子から立ち上がると、周りがギョッとしたように私をみた。


「あ、あの……リエラ様?大丈夫、ですか?」

「待っててね!ジル!今私が助けに行くわーーーー!!」


大きな叫びをあげて、私は教室から抜け出した。

ジルフォードの心配をよそに、リエラはしっかり、元気に周りに迷惑をかけていた。


ジルがよく足を運ぶカフェや図書館を駆け回り、最後はジルの屋敷に突撃したが「申し訳ありませんが、今ジルフォード様は外出中でして……」といつも何でも話してくれる執事までも、詳しくは教えてくれない。


「はぁ……」


自室のベッドに倒れ込みながら、私は大きなため息をつく。

一人で盛り上がって、一人で空回りして……何やってるんだろ。私。


(イケメンまみれの世界だから、あいつが主人公……か)


自分の馬鹿げた思考に、笑えなくなってきた。

私はーージルの心配をしているようで、してないんだ。

勝手に自分の世界を作り上げて、それに沿って動こうとしているだけ。

シャル様も、ルシファー様も、カイン様も、エドガー様も。私は彼らを「運命の人候補」として見ていた。まるでゲームのキャラクターを攻略するみたいに、彼らの人柄も背景も深く知ろうともせず、転生した私との関係を見出そうとしただけ。


(勝手に、周りの人たちを自分の話の登場人物にしてた……)


ジルにだって、そうだ。

彼には彼の事情がある。ジルの、物語がある。それを、私はまた勝手に、自分の妄想の中に組み込もうとしていた。


(痛い、痛いわ、私…..これじゃ、転生して勘違いして『ざまぁ』されるバカ女そのものじゃない)


思ってから、自分の思考に再度傷つく。

本当に、バカ女そのもの。ジルの言う通りだ。


「ねぇ、ジル。私にバカって言ってよ。今なら、怒らないから」


じわり、と涙が浮かんだ。それを拭うことは、できなかったーー。


ーーーーーー


「お前、バカじゃないの?」

「ちょっとあんた何様のつもりなのーーー!!??人がずーっと心配してたのに!!」


ジルが登園したのは、最後の別れから2週間後で、口の悪さは……相変わらずだった。

私の前の席に座り(そこ、あなたの席じゃないでしょう)私を振り返って蔑むようにコチラを見てくる。


「っていうか、あんたこんなに長期間休んで、どこ行ってたのよ!!」

「領地だよ、父上が倒れたから、急遽跡取りの俺が、領地の仕事をしてたわけ」

「え!?何それ、聞いてない!大丈夫?」

「公爵家当主が倒れた、って噂になるとまずいからさ、お前にも言えなかったわけ。緊急性のある仕事は終わったし、父上も回復傾向だからな、卒業パーティーまではこっち来れそうだ」


ジルは何でもないことのように言うが、それ、結構大変なのでは……

と、いうか……


(やっぱり私はダメね。ゲームとか小説抜きにして、ジルのこと心配しよう、って思っていたのに、結局、もしかして誘拐かも!?いや、なんか変な女とお見合いさせられてるのかも!?なんて事件性のある妄想ばっかりして…..現実が全然見えてない)


こっそり落ち込んでる私を無視して、ジルは楽しそうにしている。


「で?お前、俺がいない時、心配して暴走したんだって?」

「ぼ、暴走なんてするわけないでしょ!?仮にも、私伯爵令嬢よ」

「知ってる知ってる、『ジルー』って叫んで学園を走り回る伯爵令嬢だろ」

「な、何でそれを……」

「あとあれか『この人見てませんか?』って俺がよくいく店に肖像画持って押しかけた伯爵令嬢、な」

「何でそれを知ってるのよーー!まずいわ、穴があったら入りたい」

「いや、学園中の人間が多分知ってるぞ……」


ジルは呆れたようにため息をつく。周りを見渡すと、クラスメイトのみんなが、私からさっと目線を逸らした。

唯一目があったノエルさんは、肯定するように首を縦にものすごい勢いで振っている。


「う、嘘……私、完全に変人扱いじゃない?」

「お前は前から十分変人だ、間抜け」


いつも通りの悪口。だけど、久々のそれが、妙に落ち着く。


「お、終わった……私のバラ色の人生」

「終わったどころか始まってもないだろ」

「だから!何であんたは!そんな嫌味なのよ!」


ぎろり、と睨みつけると、ジルは……何だか楽しそうだった。


「……人の不幸を見てご機嫌、なんていい度胸じゃない?」

「あー、違う違う。気分はいいけど、そういう理由じゃない」

「じゃあ、なんでなのよ」


ジルはこっちを見て、珍しく嫌味のない顔で笑った。


「いやー、お前がそんなに俺のこと心配してたなんてな。俺って愛されてるなーと思って」

「……っそんなわけないでしょう!!」

「へー、まあいいや。かわいそうなリエラちゃん、お前、卒業パーティーでパートナーいるわけ」

「い、いないわよ、知ってるでしょ……」

「今、俺気分いいからさ。誘ってやるよ」

「……え?」

「俺もパートナー探すの面倒だったしさ。お互い、ちょうどいいだろ、ってことでドレス手配しとくから」


そう言うと、ジルはそそくさと逃げるように自分の教室に戻ってしまった。


(え、え…….?何なの?あれ?しかもあいつ、ちょっと照れてなかった?)


どうすればいいかわからず、周囲を見渡すと、ノエルさんが顔を赤くして、必死に頷いている。

……どう言うこと??

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