表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救国の双子  作者: 日出祐祈


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/23

人間側の国々 side:クリス

 おれは今、王立図書館に来ていた。手元には『アウィス王国を取り巻く国々』というタイトルの本が一冊。

 お城の掃除も一区切りついたし、アリスもいなくて暇だったから、少しだけ興味がわいた他国について、調べてみたくなったのだ。

 そもそも、おれの人生において、()()というものはお伽噺に近い存在だ。元奴隷だったときはもちろん、買い取られた先でも、屋敷から出ることは許されていなかった。けれど、異世界(こっち)では違う。スワンもクロウも、外に出るななんて言わない。他国の話も、普通に聞かせてくれる。

 それならばと、好奇心を満たすために読み進めていたページを、おれはまたぺらりと捲る。

 この本によると、エアジェラス大陸の北側、女神の杖の頭部に位置する()()()の領地には、八つの国があるらしい。

 ()()というものがこんなにたくさんあるなんて、びっくりだ。

 まず、おれとアリスが召喚されたここ、アウィス王国。アウィス王国と同盟関係にある魔法国家イクティス、ディティーク聖騎士王国の存在は、つい先日知ったばかりだ。冒頭部分にあった地図によれば、魔法国家イクティスは人間側の領地の西にあり、ディティーク聖騎士王国は南東にある。隣接しているわけではないが、アウィス王国とも近い。

 北にはティア、ベア、スクイレルという三国があるけれど、アウィス王国とはあまり接点がないのか、記述は少ない。

 そして、中央にはジャグアーロ精霊国、ヴォルフ共和国の二国。この二国はアウィス王国とはそこそこ交流はあるが、ジャグアーロとヴォルフの二国間の関係は複雑らしく、外交の場で度々衝突することがあると書かれていた。


「この二国だけ、なんで揉めてるんだろ。理由はどこに書いてあるんだ?」

「ジャグアーロは魔石の産出量が世界一で、ヴォルフは魔石を利用した魔具や魔兵器の製造国なんだよ。ヴォルフは魔石を売ってほしいけど、ジャグアーロは魔石を神聖視してるから、簡単には売らない。それで度々ぶつかり合うんだろうね」


 理由を見つけるために続きを読もうと視線を落とした刹那、頭上から聞き覚えのある声が降ってきて驚く。

 顔を上げると、いつからそこにいたのか、机を挟んだすぐ目の前に、クロウが立っていた。相変わらずの黒装束姿で、軽薄そうな笑みを浮かべている。

 なんでここに、と訊こうとしたけど、声量に気を付けなければいけないことを思い出して、ぐっと飲み込む。

 なんでかわからないけど、入館してすぐ、司書に「今回はお静かにお願いしますよ」と強く言われたのだ。


「クロウ、こういうの詳しいのか?」


 小声で訊ねると、彼は肩を竦めた。


「本に書いてある情報ならね。幽閉されていた期間、暇を潰せるものなんて本くらいしかなかったし」

「……あんまり、おとなしく本を読んでるおまえって想像できないけど」

「えー、ひどいなあ。まあ、時々は力をぶっぱなして暴れることもあったけどさ」

「猛獣かよ……。でもそれって、建物とか人とかは大丈夫なのか?」


 訊きながら、クロウの魔力をはじめて目の当たりにした日を思い出す。

 わずかに滲み出た程度の魔力でさえ、高温で高密度の力を感じた。あれをぶっぱなしたら、周辺の被害は甚大だろうなと思う。

 けれど、クロウはあっさり「問題ないよ」と言った。


「俺の幽閉場所に、十人の魔法使いが結界を張ってたんだ。力を放つ度に張り直しさせることになったけど、一応は防いでたから」

「………」


 魔法使いの人たち、大変だったんだろうな。

 会ったことのない魔法使いに同情していると、手元にあった本をひょいっとクロウに奪われた。


「ちょ、なに?」

「勉強はここまでにして、一緒に出かけようよ」

「出かけるって、どこに?」


 首を傾げるおれに、クロウはにっこり笑って右手を指差した。

 きらりと光って存在を主張したのは、クロウからもらった鴉の指輪。


「サイズ、調節しに行こう」


 そういえば、腕のいい加工屋に連れて行ってくれると言っていたっけ。

 そういうことなら、とおれは本を片付けるために立ち上がった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ