ついでの種明かしの話
ご無沙汰しております。
今回久しぶりのリベルタちゃんが出てきます。
犯罪者マリアとアルバートが牢に入れられ、同時刻に国々に潜伏していた犯罪集団と実行犯を一斉に捕縛した翌日。
私はリベルタに会う為、トゥールタ大公爵家に訪れていた。
結局、あのあとリオは一件の事後処理や他の公務に追われ、まともな会話はせずに馬車まで見送りだけしてくれた。
また後日、話そうとだけ言って。
リベルタの私室に入るなり、リベルタは私を力強く抱きしめてきた。
「—ルー‼︎会いたかったわ!」
きちんと力加減はしてくれたようで、苦しくはないが何だか緊張してしまう。
そのことにいち早く気付き、助け舟を出してくれるのは昔馴染みの侍女メアリーだ。
「お嬢様。せめて二人きりなってから、そういうことはなさってくださいませ」
…あまり助け舟でもなかった。
私のことを離す素振りを見せないリベルタに、メアリーは大きくため息を吐き、一礼し部屋を後にした。
「——一日ぶりね、殿下?」
小さく意地悪にそう言ってみると、エリオット殿下は少しいじけたような口調になった。
「…何だか今日のルーは意地悪だな?」
腕の力を緩めたリオは、私の顔を覗き込んできた。
目の前にある顔は化粧をバッチリとしている美しい女性だが、よくよく見れば昨日私に求婚?してきたエリオット殿下その人だった。
「ごめんなさい、リオ。久しぶりにリオの姿が見れて嬉しかったの」
「昨日も会っただろう?」
「そうだけれど…素のリオに会えたのが嬉しかったから」
私の言葉を聞いたリオは可愛らしく首を傾げてみせる。
「あら、ルーったら。私に会えたことは嬉しくないのかしら?」
「そんなこと言ってないじゃない。リベルタにも会いたかったわ」
突然リベルタの時の声に変わった。
本心から言っていないことは、そのリオの表情からわかる。
「ならよかったわ—それじゃあ、お茶でも飲みながらゆっくり話でもしようか」
リオの手が私の腰を抱き寄せ、スマートに二人掛けのソファへと導かれる。
女性の姿なのにその手は確かに男性の手でリオの手に安心する。
ソファに並んで座ると、既にセッティングされたティーポットを手に取り、リオの自らお茶を淹れてくれた。
一口飲んだだけで、すっきりとしたハーブ特有の甘みが口の中に広がる。
「おいしい」
「ルーにそう言ってもらえて良かった。準備した甲斐があったよ」
どうやらリオが全て用意してくれたらしい。
お茶を飲み始めてから暫く経った時、リオは本題を切り出した。
「フレッドのところはやっと事態の収拾がついたそうだよ」
フレッドとは隣国の第三王子殿下で、六年前にリオに相談された方だ。
あの時、フレッド殿下にリオは一つだけアドバイスをした。
「必ずこの一件には裏で糸を引いている者がいる。この件は私が預かるから、フレッドはできるだけもうもう少し今のままで耐えてくれ」
それだけ伝えるとリオは数日後には、リベルタの姿で隣国に短期留学してしまった。
公務もある為、影武者をたて重要な書類以外は全てこの影武者が行っていた。
ついでに私も自身の見聞を広めるという名目で、何故かリオと隣国に留学することになっていた。
それはもう本当に知らない内に。
三ヶ月間という短い間だったが、リオと私は王立学園に留学生として入学し、何とリベルタは噂の被害者の令息たちを虜にしてしまった。
その勢いで学園内の令息たちと令嬢たちまでも虜にして学園の女神と呼ばれたリオは、特待生の女性を誰にも知られずに捕らえる。
情報を存分に聞き出した後、この実行犯の偽物をリオの影の一人から選出し、学園に潜り込ませた。
あとはこの影を中心に犯罪集団の支部へと侵入し、情報や証拠品などを確保していった。
——というのを、リオひとりでやってのけてしまうのだから本当に怖い。
しかも今まで公務をほっぽり出しにした王太子殿下と第二王子殿下に、目を潤ませ上目遣いで一言。
「お二人お仕事されているかっこいい姿、私ぜひとも拝見しとうございますわ…ダメですか…?」
私はその時に思った。
(傾国の美女ってこういう人のことを云うのね……)
怖い。本当に恐怖しかない。
リオの友人であるフレッド殿下はリベルタの正体は教えてなかったが、このことに大変大喜びされていた。
ちなみに私のしたことと言えば、リオが男性たとバレないようにすることと、リオのメンタルケア(主にデートをすること)担当だった。
フレッド殿下が結局王太子になったようで、本当に事件の収拾がついて良かったと思う。
「マリアとアルバートは今は牢屋ですか?」
「ああ。随分抵抗していたようだから、睡眠剤を打って眠らせてあるよ」
「そうですか…」
元従者に多少複雑な気分になるものの、どうしようもないことだとも理解しているので、特に何も言わず頷くだけに留める。
リオもまた一つ頷き返して、話題を逸らした。
「それにしても結婚するまで時間が掛かったね。俺たち、婚約者同士なのに」
そう呟いた言葉にはどこか疲れが滲んでいる。
膝の上に乗せた手を見つめ、以前から思っていたことを口にした。
「そのことなのだけれど、リオ」
「うん?」
「本当にあなたは私と結婚していいの?」




