第41話 交わる世界
公園に静寂が訪れた。
雫は静かに木刀を下ろし、小さく息を吐く。
「……私の、負けです。」
その言葉を聞いても、誰一人として歓声を上げなかった。
勝敗は決した。
しかし、この場にいる全員が戦い以上のものを見てしまったからだ。
世界で唯一の無能力者。
地下施設へ送られた少年。
その少年が、星ヶ丘学園の代表候補を真正面から打ち破った。
学園の生徒たちは、ただ言葉を失っていた。
ハルは木刀を下ろすと、大きく息を吐いた。
額から汗が流れ落ちる。
胸の奥にはまだ鈍い痛みが残っていたが、それを表には出さない。
「ありがとう。」
ハルがそう言うと、雫は少し驚いたように目を見開き、それから微笑む。
「こちらこそ……ありがとうございました。」
二人は互いに一礼する。
勝者と敗者ではなく、一人の剣士同士として。
その様子を見届けると、地下施設側から足音が近づいてきた。
「ハル。」
先頭を歩いてきたのは石田レンだった。
ポケットに手を入れたまま、いつもの飄々とした表情でハルの隣へ立つ。
その少し後ろでは、黒鋼カエデが腕を組みながら周囲を見回していた。
「何だよ、この空気。」
「さっきまでドンパチやってたのに、全員置物みてぇになってんじゃねぇか。」
事情を知らないカエデは、不思議そうに首を傾げる。
その横から、白鳥澪が小走りでハルの前までやって来た。
「ハル君……。」
心配そうに全身を見回し、小さく胸をなで下ろす。
「よかった……。」
「大きな怪我、してないね。」
「ああ。」
ハルは穏やかに笑う。
「心配かけた。」
その笑顔を見て、澪もようやく安心したように微笑んだ。
「本当に、よかった……。」
その光景を、美咲は静かに見つめていた。
胸の奥が、少しだけ痛む。
あの笑顔は、自分が知らない一年の中で生まれたもの。
自分が隣にいられなかった時間を、一緒に歩いてきた仲間たち。
レン。
カエデ。
そして、澪。
地下施設の人たちは、自分が想像していたような恐ろしい人間ではなかった。
笑って、心配して、仲間を気遣う。
自分たちと何も変わらない、ごく普通の人たちだった。
そしてレンは、ハルの表情を一度だけ確認すると、ゆっくりと学園側へ視線を向けた。
その視線は、一人の少女のもとで止まる。
朝比奈美咲。
ハルが地下施設で何度も口にしていた名前。
レンは静かに息を吐き、一歩前へ踏み出した。
レンはハルの横顔をちらりと見る。
止める様子はない。
それを確認すると、小さく息を吐き、美咲の前まで歩み寄った。
「……あんたが。」
静かな声だった。
「朝比奈美咲さん、だよな。」
突然名前を呼ばれ、美咲は目を見開く。
「え……。」
「はい。」
レンは小さく頷いた。
「やっぱり。」
「ハルから聞いてるよ。」
その一言に、美咲の表情が固まる。
「……ハル君が。」
「私のことを……?」
「ああ。」
レンは淡々と答えた。
「地下施設で何度か昔話になってな。」
「幼馴染だって。」
「家族みたいな存在だったって。」
美咲の胸が締め付けられる。
ハルは地下施設でも、自分のことを忘れてはいなかった。
そう思うだけで、嬉しさと後悔が入り混じった感情が込み上げてくる。
しかし、レンの表情は穏やかなものではなかった。
笑ってはいる。
だが、その目だけは冷静に美咲を見据えている。
「……正直に言う。」
「最初は、あんたのこと嫌いだった。」
その言葉に、その場の空気が張り詰めた。
黒崎も雫もレンを見る。
美咲は唇を噛み締めた。
「そう……ですよね。」
「私が、ハル君を……。」
「いや。」
レンは首を横に振る。
「事情はハルから全部聞いてる。」
「責めるつもりはない。」
「責める資格も俺にはない。」
一拍置き、静かに続ける。
「ただ。」
「地下施設へ来たばかりのハルは、本当にボロボロだった。」
「飯も食わない。」
「眠れない。」
「何日も何日も、一人で座ってた。」
美咲は息をのむ。
何も知らなかった。
自分が学園で過ごしていた時間。
ハルがどんな日々を送っていたのか。
「それでもあいつは……。」
レンは苦笑する。
「誰も恨まなかった。」
「あんたのことも。」
「黒崎のことも。」
「学園の連中のことも。」
「全部自分が弱かったせいだって言ってた。」
美咲の瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちる。
「……ごめんなさい。」
小さく漏れた謝罪。
しかしレンは首を振った。
「その言葉は、もうハルに伝えたんだろ?」
「だったら俺が聞く話じゃない。」
そう言って一歩下がる。
「俺が知りたかったのは一つだけだ。」
レンは真っ直ぐ美咲を見つめる。
「今のあんたは。」
「ハルの敵なのか。」
「それとも味方なのか。」
その問いに、美咲は涙を拭いながら、迷うことなく答えた。
「私は……。」
「もう二度と、ハル君を一人にはしません。」
その言葉を聞いたレンは、少しだけ目を細めた。
その表情から、わずかな警戒心だけが静かに和らいだ。
その時だった。
「一つ、聞いてもいいか。」
静かな声が響く。
口を開いたのは黒崎だった。
レンはゆっくりと視線を向ける。
「ん?」
「お前は。」
「何者だ。」
その問いにレンは苦笑した。
「何者って言われてもな。」
肩をすくめる。
「石田レン。」
「地下施設に三年いた落ちこぼれ。」
「今はハルと同じ代表候補。」
「それだけ。」
あまりにもあっさりとした自己紹介。
だが黒崎は首を横に振った。
「違う。」
「俺が聞きたいのはそこじゃない。」
「お前からは、強者の空気を感じない。」
「だが。」
「弱者の空気でもない。」
「まるで戦場全体を見ている人間の目だ。」
レンは一瞬だけ目を丸くした。
そして小さく笑う。
「観察力は本物らしい。」
「安心したよ。」
その言葉に学園側も地下施設側も二人を見つめる。
レンはポケットから手を出し、黒崎へ向き直った。
「俺は戦うのは得意じゃない。」
「だから考える。」
「どうすれば勝てるか。」
「どうすれば生き残れるか。」
「そればっか考えてきた。」
黒崎は静かに頷く。
「だからハルを支えられたのか。」
「支えたってほど立派じゃない。」
レンは苦笑する。
「俺はあいつに助けられた側だから。」
その言葉に、ハルは少し照れくさそうに頭をかく。
カエデは思わず吹き出した。
「何だよ。」
「レンが素直とか気持ち悪ぃな。」
「うるさい。」
「たまには本当のことくらい言う。」
その軽口に、重苦しかった空気が少しだけ和らぐ。
しかし次の瞬間。
レンの表情が変わった。
笑みが消える。
その目は真っ直ぐ黒崎を見据えていた。
「黒崎。」
「一つ、俺の考えを聞いてくれ。」
その声音に、場の空気が再び張り詰める。
黒崎もまた真剣な表情で頷いた。
「ああ。」
「聞こう。」
二人の頭脳派が、初めて真正面から向き合った。
レンは黒崎を真っ直ぐ見つめた。
「一つだけ聞く。」
「学園じゃ、地下施設をどう教えられてる?」
黒崎は迷うことなく答える。
「能力犯罪者の収容施設。」
「社会に危険を及ぼす者を隔離する場所だ。」
レンは鼻で小さく笑った。
「……やっぱり。」
「そういう認識か。」
黒崎が眉をひそめる。
「違うのか。」
「全部じゃない。」
レンは静かに首を振った。
「少なくとも俺が見てきた地下施設には、犯罪者だけじゃなかった。」
「能力を制御できなかった奴。」
「能力が危険視された奴。」
「権力者に目を付けられた奴。」
「そして──ハルみたいな奴。」
その言葉に学園側の空気が重くなる。
レンは続けた。
「ハルは何をした?」
「無能力だった。」
「それだけだ。」
「それなのに地下施設送りだ。」
黒崎は黙る。
確かに、それだけは説明がつかない。
レンは一歩前へ出た。
「俺はずっと考えてた。」
「地下施設は何のためにあるのか。」
「そして今日、ハルの話を聞いて一つの答えが見えた。」
黒崎の視線が鋭くなる。
「答え?」
「ああ。」
レンはゆっくりと言葉を選ぶ。
「地下施設。」
「能力研究所。」
「星ヶ丘学園。」
「この三つは、別々の組織じゃない。」
「役割を分担しているだけだ。」
学園の生徒たちがざわつく。
レンは構わず続ける。
「学園は能力者を育てる。」
「地下施設は能力者を切り捨てる。」
「研究所は能力を研究する。」
「全部が噛み合ってる。」
「まるで最初から一つの計画だったみたいにな。」
黒崎は即座に反論した。
「待て。」
「それは飛躍しすぎだ。」
「証拠がない。」
レンは苦笑した。
「もちろん証拠はない。」
「だから推理だ。」
「でも、おかしいとは思わないか?」
「ハルは地下施設で、学園の映像を何度も見せられていた。」
「美咲さんや、お前たちの日常をな。」
黒崎の表情が変わる。
「……!」
「普通の施設に、そんな映像があると思うか?」
レンは静かに問いかける。
「学園内部の映像。」
「地下施設。」
「能力研究所。」
「この三つが繋がっていなきゃ、あんなことはできない。」
黒崎は言葉を失った。
反論したい。
だが、思い当たる節がある。
学園にも、自分たちの知らない部分が確かに存在していた。
レンは最後に、小さく息を吐いた。
「俺は陰謀論が好きなわけじゃない。」
「ただ──」
「この世界は、俺たちが思っているよりずっと歪んでる。」
その一言だけが、公園の静寂に重く響いた。
レンの言葉が途切れる。
公園は再び静まり返った。
誰も口を開けない。
地下施設と学園。
能力研究所。
三つの組織が繋がっている。
そんな話を考えたことすらなかった。
最初に口を開いたのは黒崎だった。
「……確かに。」
静かな声だった。
「お前の推理には筋が通っている。」
レンは少し驚いたように眉を上げる。
頭ごなしに否定されると思っていたからだ。
黒崎は続ける。
「地下施設で学園の映像を見せられていた。」
「その一点だけでも、何らかの繋がりがある可能性は否定できない。」
「俺も違和感は覚えた。」
美咲も雫も驚いたように黒崎を見る。
黒崎は感情ではなく、事実だけを口にしていた。
「だが。」
一拍置く。
「そこから『全てが一つの組織だ』と結論付けるには材料が足りない。」
「推理としては面白い。」
「だが証明はできない。」
レンは口元を緩めた。
「さすが主席。」
「冷静だな。」
「でも俺も断定してるわけじゃない。」
「今ある情報を繋げた結果、一番可能性が高いってだけだ。」
黒崎は小さく頷く。
「なら、俺も一つ聞こう。」
「地下施設で三年過ごしたお前でも分からないことがある。」
「それなら学園にいる俺たちは、なおさら知らされていない可能性もある。」
レンは目を細める。
「……その考えは嫌いじゃない。」
黒崎はハルへ視線を向けた。
「俺たちは学園の全てを知っているわけじゃない。」
「教師も。」
「理事長も。」
「政府も。」
「俺たちに見せていないものがあるのかもしれない。」
その言葉に、学園側の生徒たちも息をのむ。
自分たちが信じてきた学園。
その裏に何かあるかもしれない。
そんな考えは今まで一度も抱いたことがなかった。
レンは小さく笑う。
「話が早くて助かる。」
「俺は敵を作りたいんじゃない。」
「知りたいだけだ。」
「この世界の真実を。」
黒崎も静かに頷く。
「ああ。」
「俺も同じだ。」
「もし学園に隠された真実があるなら、俺はそれを見過ごすつもりはない。」
二人の視線が交わる。
敵同士ではない。
同じ"真実"を追う者同士として、初めて互いを認め合った瞬間だった。
張り詰めた空気の中、一人だけ困ったように辺りを見回している少女がいた。
白鳥澪だった。
「……あの。」
おずおずと手を挙げる。
全員の視線が一斉に集まった。
「ご、ごめんなさい……。」
「話を止めちゃったら。」
レンは苦笑する。
「いや、別にいいけど。」
澪は少し考え込むように俯いた。
「私……。」
「難しい話は、あまり分からない。」
そう言って照れくさそうに笑う。
「地下施設がどうとか。」
「学園がどうとか。」
「研究所がどうとか。」
「そういうのは、本当に分からない。」
美咲は静かに澪を見つめていた。
澪はゆっくりと顔を上げる。
「でも。」
「今日、学園のみんなと会って思ったの。」
一人ひとりの顔を見渡す。
黒崎。
美咲。
雫。
そして周囲の学園生たち。
「みんな……。」
「私たちと同じなんだなって。」
「怖い人じゃなかった。」
「笑うし、泣くし。」
「大切な人もいる。」
「地下施設のみんなと、変わらない。」
その言葉に、学園側の生徒たちは小さく目を見開いた。
地下施設の人間からそんな言葉が返ってくるとは思っていなかった。
澪は少しだけ微笑む。
「だから……。」
「いつか。」
「地下施設とか。」
「学園とか。」
「そんな呼び方じゃなくて。」
「普通に話せる日が来たらいいなって。」
静かな願いだった。
誰かを責める言葉ではない。
誰かを許す言葉でもない。
ただ、心からの願い。
美咲の瞳が揺れる。
「……ありがとう。」
思わず漏れたその言葉に、澪は少し慌てたように首を振った。
「え、あ……。」
「お礼なんて。」
「私は思ったことを言っただけだから。」
レンは小さく笑う。
「相変わらずだな。」
「難しい話を全部ぶっ飛ばして、一番大事なことだけ言う。」
澪はきょとんと首を傾げた。
「そうかな……?」
「そうだよ。」
ハルが穏やかに笑う。
「それが澪のいいところだ。」
その一言に澪は少し照れたように頬を赤くした。
重苦しかった空気は、彼女の優しい言葉によって少しだけ和らいでいた。
しばらく沈黙が流れた。
誰も次の言葉を見つけられない。
重苦しい空気だけが公園を包んでいた。
すると──。
「…………あーっ!」
突然、カエデが大きな声を上げた。
全員が一斉に振り向く。
「もういい!」
両手を頭の後ろで組み、不満そうに叫ぶ。
「難しい話ばっかしてると頭が痛くなる!」
「地下施設がどうとか!」
「学園がどうとか!」
「研究所がどうとか!」
「知らねぇよ、そんなもん!」
レンは深いため息をついた。
「……お前な。」
「せっかくいいところだったのに。」
「いいところ?」
カエデは首を傾げる。
「全然分かんなかったぞ。」
「お前ら、頭いい奴同士で勝手に盛り上がってるだけじゃねぇか。」
そのあまりにも率直な言葉に、雫が思わず吹き出した。
「あっ……。」
「ご、ごめんなさい。」
口元を押さえながら笑いを堪える。
その笑顔につられるように、周囲の空気も少しだけ柔らかくなった。
カエデは腕を組みながら鼻を鳴らす。
「だいたいよ。」
「敵だ味方だって言うけどさ。」
黒崎を見て。
美咲を見て。
学園の生徒たちを見回す。
「今ここで誰か殴り合ってるわけじゃねぇだろ?」
「だったら、それで十分じゃねぇか。」
レンが苦笑する。
「……お前らしい答えだ。」
「だろ?」
カエデは胸を張る。
「腹減った時に世界の真実とか考えても、腹は膨れねぇ。」
「まず飯だ!」
「飯食ってから考えりゃいい!」
レンは呆れたように笑う。
「結局そこか。」
「当たり前だ!」
「人間、腹減ってたらロクなこと考えられねぇんだから!」
その言葉に、ハルは思わず笑みを漏らした。
「……はは。」
久しぶりに聞く、心からの笑い声だった。
澪も安心したように微笑む。
「ハル君、笑った。」
「ああ。」
「カエデらしいなって思って。」
カエデは照れ隠しに頭をかく。
「な、何だよ。」
「笑われるようなこと言ったか?」
その様子を見た黒崎も、小さく口元を緩める。
「……確かに。」
「考えすぎても前には進めない。」
レンは肩をすくめた。
「頭脳派としては少し悔しいけどな。」
「たまには筋肉の意見も悪くない。」
「誰が筋肉だけだ!」
カエデがレンの頭を軽く小突く。
「痛っ!」
そのやり取りを見て、美咲も雫も思わず笑みを浮かべた。
さっきまで敵同士だったはずなのに。
今だけは、同じ場所で笑い合っていた。
笑い声が少しずつ収まる。
さっきまで張り詰めていた空気は、いつの間にか少しだけ柔らかくなっていた。
その時だった。
「──いたぞ。」
公園の入口から数人の足音が近付いてくる。
全員が一斉に振り返った。
黒いスーツを身にまとった男女がこちらへ歩いてくる。
胸元には政府能力管理局の徽章。
学園の教師でも、地下施設の監視官でもない。
その場にいた全員の表情が引き締まる。
先頭に立つ男が全員を見渡し、静かに口を開いた。
「星ヶ丘学園代表候補。」
「地下施設代表候補。」
「双方の所在を確認した。」
淡々とした事務的な声。
男は手元の端末を操作すると、そのまま読み上げる。
「政府能力管理局より通達。」
「代表候補全員に召集命令が発令された。」
ざわめきが起こる。
学園の生徒たちも顔を見合わせる。
黒崎が一歩前へ出た。
「召集……?」
「何のためだ。」
男は黒崎を見ることなく答える。
「詳細は会議室で説明する。」
「諸君らには、これより合同説明会へ参加してもらう。」
「地下施設代表。」
「星ヶ丘学園代表。」
「以後は同一行動となる。」
その言葉に、美咲が息をのむ。
学園と地下施設が。
同じ行動をする。
そんな日が来るとは思ってもいなかった。
レンは小さく笑う。
「へぇ。」
「案外、展開が早いな。」
黒崎も静かに頷く。
「俺たちを集める理由があるということか。」
「そういうことだ。」
男は短く答える。
「移動車両はすでに待機している。」
「直ちに出発する。」
カエデは大きく伸びをした。
「よっしゃ。」
「難しい話は車の中で聞く。」
「とりあえず飯は出るんだろうな?」
レンは呆れたように笑う。
「お前、本当にそれしか頭にないのか。」
「腹減ってると戦えねぇだろ。」
「だから飯が一番大事なんだよ。」
澪が思わずくすりと笑う。
ハルも小さく笑みを浮かべた。
そして、その視線は自然と美咲へ向く。
美咲もまたハルを見つめていた。
言葉はない。
それでも、お互いに小さく頷く。
もう過去には戻れない。
それでも、ここから先は同じ方向を向いて歩けるかもしれない。
そんな小さな希望だけが、二人の胸に残っていた。
やがてハルは前を向く。
「行こう。」
その一言を合図に、地下施設と学園。
これまで敵としてしか存在しなかった二つの組織の代表たちが、初めて同じ道を歩き始めた。




