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幼馴染を寝取られ、学園に殺された無能力の俺は最強になって帰ってくる  作者: ワールド


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第4話 実戦試験

 能力測定を終えた生徒たちは、そのまま隣接する闘技演習場へ移動した。


 直径五十メートルほどの円形闘技場。


 特殊な結界によって覆われたフィールドは、どれほど激しい能力がぶつかっても破壊されることはない。


 観客席へ着席した生徒たちを見渡し、神崎が中央へ歩み出る。


「これより第二試験を開始する。」


 場内が静まり返る。


「第二試験は――実戦。」


 その一言で、生徒たちの表情が引き締まった。


 神崎は続ける。


「試験は一対一の模擬戦形式。」


「制限時間は三分。」


「武器の使用を認める。」


「能力の使用も自由。」


 闘技場中央の結界が淡く輝き始める。


「ただし、勝敗だけで評価が決まるわけではない。」


 神崎は大型モニターへ評価項目を映し出した。


 ・勝敗


 ・戦闘技術


 ・状況判断


 ・戦闘センス


 四つの項目が会場に大きく表示される。


「能力の強さだけでは、この試験で高評価は得られない。」


「どれだけ優れた能力を持っていても、それを扱えなければ意味はない。」


「逆に能力が劣っていても、技術や判断力が優れていれば評価対象となる。」


 その説明に、生徒たちが小さく頷く。


「審査員は、お前たちの戦い方そのものを見ている。」


「相手との距離の取り方。」


「攻撃の組み立て。」


「防御、回避、判断。」


「そのすべてが評価される。」


 ハルは静かに拳を握った。


 ――能力だけじゃない。


 その言葉だけが、胸の中で何度も響く。


 能力では誰にも勝てない。


 だが、剣なら。


 努力だけは、誰にも負けるつもりはなかった。


 神崎は試験表を手に取り、最初の組み合わせを読み上げる。


「それでは、第一試合を開始する。」


 第一試合の開始を告げるブザーが鳴り響く。


「始め!」


 審判の合図と同時に、闘技場へ飛び出した二人が能力を解放した。


「燃え尽きろ!」


 片方の生徒が拳を突き出す。


 轟音とともに巨大な火球が一直線に放たれた。


 対する生徒は冷静に両手を掲げる。


「凍れ!」


 瞬く間に氷の壁が形成され、激突した炎が白い蒸気となって辺り一面を包み込む。


 ドォンッ!


 爆発音が闘技場を揺らした。


「すげぇ!」


「炎と氷の正面衝突だ!」


 観客席から歓声が上がる。


 炎の生徒は蒸気に紛れて回り込み、死角から攻撃を仕掛ける。


 しかし、氷の生徒は足元に氷を滑らせ、一瞬で距離を取った。


 試合終了の笛が鳴る。


「勝者、氷属性・如月!」


 教師席では評価員たちが次々と記録を書き込んでいく。


「今の回避判断は良い。」


「相手の視界を奪った判断も高評価だ。」


「ただし、氷壁に魔力を使い過ぎている。終盤のスタミナ配分が甘い。」


 続く第二試合。


「始め!」


 今度は雷能力者と風能力者が激突する。


 雷光が闘技場を走り、風の刃が空気を切り裂く。


 風の能力者は突風で軌道を変えながら素早く接近し、雷能力者は電撃を地面へ流して迎え撃つ。


 互いに一歩も譲らない攻防が続き、観客席は大きく沸いた。


「速すぎる!」


「見えなかったぞ!」


 最後は雷撃が風を貫き、決着がつく。


「勝者、雷属性・桐谷!」


 教師たちは冷静に試合を分析する。


「能力の威力は申し分ない。」


「だが風能力者は、能力に頼りすぎたな。」


「接近戦へ移行する判断が遅い。」


「戦闘は能力だけで決まるものではない。戦い方そのものを磨け。」


 勝った者も、負けた者も、教師たちは結果だけでは評価しない。


 戦いの過程を一つひとつ見極め、将来性まで含めて採点していく。


 その様子を観客席から見つめるハルは、小さく息を吐いた。


 ――技術も、判断も見てくれる。


 ならば、自分にも示せるものがある。


 そう信じながら、静かに自分の順番を待っていた。



「次。」


 神崎が試験表へ目を落とす。


「天城ハル。」


 名前が呼ばれた瞬間、会場がざわついた。


「とうとう来たか。」


「無能力者の実戦試験だ。」


「終わったな。」


「一瞬で終わるだろ。」


 失笑混じりの声が観客席から飛ぶ。


 対戦相手は二年生の炎属性・Bランク能力者。


 赤い髪を短く刈り込んだ男子生徒は、ハルを見るなり鼻で笑った。


「悪いな。」


「手加減はできない。」


 ハルは木剣を握り直す。


「お願いします。」


 互いに所定の位置へ立つ。


 審判が右手を振り上げた。


「始め!」


 開始と同時に、相手は距離を詰めることすらしなかった。


「燃えろ!」


 拳を突き出す。


 轟ッ――。


 巨大な炎弾が一直線にハルへ襲い掛かった。


 しかし。


 ハルは半歩だけ身体をずらす。


 炎は頬をかすめ、そのまま背後へ抜けていった。


「避けた?」


 相手はすぐさま二発目を放つ。


 左右から炎が迫る。


 ハルは地面を蹴り、最小限の動きでその隙間を駆け抜けた。


 さらに三発目。


 四発目。


 炎が次々と闘技場を埋め尽くす。


 だが、そのどれもがハルを捉えられない。


 まるで攻撃の軌道を読んでいるかのように、一歩、半歩、身体を捻るだけでかわしていく。


 観客席の笑い声は、いつしか消えていた。


「……速い。」


「なんだ、あの回避。」


「能力を使ってないよな?」


 教師席でもざわめきが起こる。


「無駄な動きがない。」


「すべて最短距離で避けている。」


 神崎も思わず目を細めた。


 炎属性の生徒は焦り始める。


「くそっ!」


「当たれ!」


 炎の勢いをさらに強める。


 闘技場の半分が炎に包まれた。


 普通なら逃げ場はない。


 しかし、ハルは炎の切れ目を見逃さなかった。


「そこだ。」


 一気に踏み込む。


「なっ!」


 炎の中をすり抜け、相手との距離を一気に詰める。


 能力者にとって最も危険な間合い。


 懐。


「何だこいつ!」


 相手が慌てて後退しようとした瞬間。


 ハルの木剣が閃いた。


 パァンッ!


 乾いた音が闘技場に響く。


 木剣の切っ先は、相手の胴へ寸分違わず叩き込まれていた。


 一瞬の静寂。


 審判が右手を上げる。


「有効!」


 会場が止まった。


「……え?」


「今……当てた?」


「能力なしで?」


 誰も信じられないという表情で立ち尽くす。


 教師たちも資料から顔を上げた。


「能力者相手に一本取っただと?」


「いや、あの踏み込み……。」


「剣術だけなら一年でも上位クラスだ。」


 神崎は目を見開く。


 これまで能力の有無ばかりを見ていた。


 だが今、目の前で証明された。


 天城ハルには能力はない。


 それでも、積み重ねてきた剣は本物だった。


 観客席の一角では、美咲が思わず立ち上がる。


「ハル……!」


 一方、腕を組んで試合を見ていた黒崎仁だけは、小さく目を細めていた。


「……なるほど。」


 初めて、その瞳に興味の色が宿った。



 一本を奪われた炎能力者の表情から、余裕が消えた。


「……調子に乗るな。」


 低く呟いたその瞬間、周囲の空気が一変する。


 ゴォォォッ――。


 炎が相手の身体を中心に渦を巻き始めた。


 さきほどまでとは比べものにならない熱量。


 闘技場の床が赤く照らされ、観客席にまで熱気が押し寄せる。


「本気を出す気か。」


 教師の一人が呟く。


 炎能力者は両手を広げ、大きく息を吸い込んだ。


「炎域――展開!」


 轟音とともに、無数の炎柱が闘技場全体へ噴き上がる。


 前も後ろも、左右も。


 炎、炎、炎。


 ハルがこれまで利用していた回避ルートは、一瞬で焼き尽くされた。


「逃げ場が……ない。」


 美咲が息を呑む。


 ハルは冷静に周囲を見渡す。


 どこかに突破口はないか。


 わずかな隙を探し続ける。


 だが――見つからない。


 能力そのものが戦場を支配していた。


「これが……Bランク能力者。」


 黒崎が静かに呟く。


「技術だけでは覆せない差だ。」


 次の瞬間。


「終わりだ!」


 炎能力者が拳を振り下ろした。


 巨大な火柱が一直線にハルへ迫る。


 ハルは横へ飛ぶ。


 避ける。


 しかし、炎はそこで終わらない。


 横から、後方から、さらに炎が押し寄せる。


「くっ……!」


 逃げ場を完全に塞がれた。


 直撃。


 ドォォンッ!!


 爆炎が闘技場を揺るがした。


 衝撃でハルの身体が大きく吹き飛び、地面を何度も転がる。


 木剣が手から離れ、乾いた音を立てて転がった。


 静まり返る会場。


 ハルは立ち上がろうと腕に力を込める。


 だが、膝が震え、身体は言うことを聞かなかった。


 審判が試合を止める。


「そこまで!」


 静かな宣告が響く。


「勝者――炎属性・桐生。」


 勝負は決した。


 能力の差。


 それは、どれだけ磨き上げた技術をもってしても、一度の好機だけでは覆せないほど大きかった。


 それでも、観客席には先ほどまでの笑い声はなかった。


 誰もが、無能力の少年が見せた戦いを、確かにその目に焼き付けていた。


 試合終了後。


 教師席では、評価員たちが一斉に採点用紙へ記入を始めていた。


「勝敗は敗北。」


 一人の教師が淡々と結果を書き込む。


「よって評価は低いな。」


 しかし、隣に座る評価員は首を横に振った。


「いや、勝敗だけでは決められん。」


 試験映像を見返しながら、一つずつ項目を読み上げる。


「剣術――A。」


「状況判断――A。」


「反応速度――S。」


 その言葉に周囲がざわつく。


「Sだと?」


「能力者の攻撃をあれだけ見切ったんだ。当然だ。」


 さらに別の評価員が最後の項目を書き込む。


「能力値――0。」


 その数字だけが、他の評価をすべて打ち消すように重く記された。


「……やはり問題はそこか。」


「技術は申し分ない。」


「だが能力がなければ将来性は低い。」


「いや、ここまで鍛え上げた努力は評価すべきだ。」


 教師たちの意見は真っ二つに割れた。


 能力を重視する者。


 実力を重視する者。


 これほど評価が分かれる受験者は、これまでほとんどいなかった。


 一方、観客席の最前列。


 腕を組んだまま試合を見届けていた黒崎仁は、ゆっくりと立ち上がる。


 その視線の先には、立ち上がろうとするハルの姿があった。


 しばらく無言で見つめたあと、黒崎は小さく口元を緩める。


「……面白い。」


 それは、才能しか認めない男が初めて抱いた、天城ハルという存在への興味だった。



 その頃――学園長室。


 実戦試験の結果が、次々と学園長の机へ届けられていた。


 学園長は一枚の資料を手に取り、静かに目を通す。


「天城ハル……。」


 能力測定の欄には、はっきりと記されている。


 能力値 0


 だが、その下に並ぶ評価項目を見た学園長は、わずかに眉を動かした。


「剣術……A。」


「判断力……A。」


「反応速度……S。」


 そして、小さく呟く。


「戦闘技術だけなら、一年主席クラスか。」


 隣に立つ教師が淡々と答える。


「ですが、能力はゼロです。」


「選別基準を満たしません。」


「退学候補であることに変わりはありません。」


 学園長は資料を静かに閉じる。


 窓の外では、試験を終えた生徒たちが帰路につき始めていた。


 その中には、傷だらけになりながらも前を向いて歩く一人の少年の姿がある。


 学園長はその背中を見つめ、誰にも聞こえないほど小さな声で呟いた。


「……そうだろうか。」


 その眼差しだけは、他の教師たちとはまったく違うものを見据えていた。


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