第33話 世界は誰のためにある
朝日が校舎の窓を黄金色に染めていた。
登校する生徒たちの笑い声が校門前に響く。
いつもと変わらない朝。
黒崎仁は校門の脇に立ち、人の流れを静かに眺めていた。
腕時計を見る。
約束の時間まで、あと一分。
しばらくすると、小走りで一人の少女がこちらへ向かってくる。
「ごめん、待った?」
朝比奈美咲だった。
肩まで伸びた髪を揺らし、少しだけ息を弾ませながら笑う。
その笑顔は昨日よりも柔らかかった。
「ああ。」
黒崎は短く答える。
「昨日、ちゃんと眠れた?」
美咲がおそるおそる尋ねる。
「それはこっちの台詞だ。」
「あ……。」
少しだけ照れたように笑う美咲。
「うん。久しぶりにちゃんと眠れた。」
「そうか。」
それ以上、二人は昨日のことを口にしなかった。
言葉にしなくても十分だった。
昨日、美咲は自分の弱さを認めた。
逃げたことも、怖かったことも、自分で選んだことも。
誰かのせいにはしなかった。
その姿は、黒崎が想像していたよりもずっと強かった。
二人は並んで校門をくぐる。
朝の風が制服の裾を揺らす。
「そういえば今日、数学の小テストだったよね?」
「……ああ。」
「勉強した?」
「一応な。」
「さすが。」
他愛のない会話。
それだけで十分だった。
美咲の表情は昨日より明るい。
まだ完全ではない。
胸の奥には消えない傷が残っている。
それでも前へ進こうとしている。
黒崎は横目で美咲を見る。
友人と笑い合う姿。
困っている人を見れば手を差し伸べる姿。
誰よりも優しい少女。
だが昨日、彼女は言った。
『私は周りが思っているほど優しい人間じゃない。』
違う。
黒崎は心の中で静かに否定する。
優しいから苦しむ。
優しいから後悔する。
優しいから、自分を責め続ける。
もし本当に冷たい人間なら。
ハルのことなど、とっくに忘れている。
あの日の出来事を思い返すこともない。
眠れない夜を過ごすこともない。
自分を責め続けることもない。
だからこそ、昨日の美咲の言葉は本物だった。
自分の弱さを認めることは、誰にでもできることではない。
だが――。
(それでも。)
黒崎は静かに前を向く。
(優しさだけじゃ、この世界では何も守れない。)
それは美咲だけではない。
ハルもそうだった。
努力も、覚悟も、優しさも持っていた。
それでも、この世界は彼を切り捨てた。
能力がない。
そのたった一つの理由だけで。
黒崎は拳を静かに握り締める。
(……やはり。)
(この世界は、どこか間違っている。)
その違和感は昨日今日生まれたものではない。
もっと昔。
幼い頃から、ずっと胸の奥に残り続けているものだった。
一時間目。
教室には教師の落ち着いた声だけが響いていた。
「――能力の発現は約五十年前に確認され、それ以降、人類は飛躍的な進化を遂げました。」
教壇の大型モニターには年表が映し出される。
能力発現。
能力犯罪。
能力研究機関設立。
星ヶ丘学園創設。
国家能力管理局発足。
教科書に載っている、誰もが知る歴史。
教師はチョークを手に取りながら続ける。
「能力は人類の可能性を大きく広げました。医療、建築、農業、防衛……今では私たちの生活に欠かせない存在です。」
生徒たちは真剣にノートを取っている。
中には感心したように頷く者もいた。
誰も疑わない。
教えられた歴史を、そのまま受け入れている。
黒崎だけは違った。
(……綺麗事だ。)
能力が人類を豊かにした。
能力が世界を発展させた。
確かに、それは事実なのだろう。
だが。
その裏側は誰も語らない。
「星ヶ丘学園は能力者育成の最高峰であり、優秀な能力者を社会へ送り出す重要な役割を担っています。」
教師は誇らしげに語る。
教室の壁には歴代卒業生の写真。
国家英雄。
軍の最高戦力。
世界的研究者。
名だたる人物ばかりだ。
拍手すら起こりそうな空気だった。
(最高峰、か。)
黒崎は静かに窓の外を見る。
校庭では一年生が訓練をしている。
能力を使い、歓声を上げている。
楽しそうだった。
だが黒崎には、その光景がどこか作り物のように見えた。
(ここも同じだ。)
研究所と。
何も変わらない。
能力がある者は称賛される。
能力が強い者は尊敬される。
能力が弱い者は見向きもされない。
結局、人の価値は能力で決まる。
教師が続ける。
「能力は人類に与えられた希望です。」
その一言で、黒崎の思考は止まった。
(希望……?)
その言葉が妙に引っ掛かる。
本当にそうなのだろうか。
能力は希望だったのか。
能力があったから、父は死んだ。
能力があったから、母も目の前で殺された。
能力があったから、犯罪はより凶悪になった。
能力があったから、地下施設が生まれた。
能力があったから、ハルは笑われた。
能力があったから、美咲は苦しんだ。
能力があったから、人は数字で比べられるようになった。
(どこが希望なんだ。)
黒崎は静かに目を閉じる。
幼い頃。
初めて抱いた違和感。
それは今も消えていない。
いや、年を重ねるたびに大きくなっていた。
教師は黒板に大きく文字を書く。
――『能力は人類の未来である』。
その文字を見つめながら、黒崎は心の中で呟く。
(未来じゃない。)
(これは。)
(誰かが作った世界だ。)
その瞬間。
幼い日の記憶が脳裏をよぎる。
白い廊下。
薬品の匂い。
忙しなく行き交う白衣の研究員。
無機質な自動ドア。
そして――。
廊下の奥から聞こえてきた、一つの笑い声。
それは、この冷たい場所には似つかわしくないほど温かい笑顔だった。
黒崎はゆっくりと瞳を開く。
(……そうだ。)
(俺が最初に、この世界に違和感を覚えたのは。)
(あの日だった。)
意識は静かに、幼い日の能力研究所へと引き戻されていく。
幼い頃。
まだ小学生にも満たなかった黒崎仁は、父親に連れられて能力研究所を訪れていた。
巨大な白い建物。
何重もの認証ゲート。
武装した警備員。
無機質な自動ドア。
そこは病院にも学校にも見えたが、そのどちらとも違う独特な空気を纏っていた。
中へ入ると、鼻をつく消毒液の匂い。
白衣姿の研究員たちが足早に廊下を行き交う。
誰も笑っていない。
誰も立ち止まらない。
機械の電子音だけが静かに響いていた。
「父さん、ここは何をするところなの?」
幼い仁が見上げる。
父は歩みを止めることなく答えた。
「能力を研究する場所だ。」
「研究?」
「ああ。能力はまだ解明されていないことが多い。人類の未来を左右する力だからな。」
未来。
その言葉の意味は、幼い仁にはまだよく分からなかった。
二人はガラス張りの部屋の前を通り過ぎる。
そこでは数人の子どもたちが能力測定を受けていた。
「能力値、Aランク。」
研究員が笑顔で拍手を送る。
「素晴らしい。将来が楽しみですね。」
その隣。
「能力値、Eランク。」
別の子どもが結果を告げられる。
研究員は紙に何かを書くだけだった。
「次。」
それだけ。
子どもは俯きながら部屋を出ていく。
仁はその背中を見つめた。
「どうして?」
父が振り返る。
「何がだ。」
「同じ子なのに。」
「反応が違う。」
父は一瞬だけ黙った。
「能力には価値がある。」
「価値?」
「強い能力を持つ人間ほど、多くの命を救い、多くの利益を生み出せる。」
仁は首を傾げる。
「じゃあ、弱い能力は?」
「……価値は低い。」
その答えに、仁は何も言えなかった。
幼いながらに胸の奥が少しだけ苦しくなる。
人に価値があるのではない。
能力に価値がある。
そんなふうに聞こえたからだ。
その時だった。
廊下の奥から、小さな笑い声が聞こえてきた。
研究所には似つかわしくないほど明るい笑い声。
仁は自然と足を止めた。
開きっぱなしになっている部屋の扉。
そこを覗くと、一組の親子がいた。
「ほら、ここをこう繋げるんだ。」
「わあ、本当だ!」
「ハル、上手になったね。」
父親が笑う。
母親も笑う。
その真ん中で、一人の少年が目を輝かせていた。
研究器具ではない。
三人で小さな飛行機の模型を組み立てているだけだった。
少年は何度も失敗し、そのたびに両親が笑いながら教えている。
「もう一回!」
「よし、今度は成功させよう。」
誰も能力の話をしない。
誰も数字を口にしない。
そこだけ時間の流れが違っていた。
研究所の冷たい空気の中で、その部屋だけが温かい。
仁は目を奪われた。
(……いいな。)
その言葉が、自然と心に浮かぶ。
羨ましかった。
家族で笑うこと。
失敗しても怒られないこと。
何より、父親がそんな表情で笑うこと。
仁は知らなかった。
父と二人で遊んだ記憶も。
母と食卓を囲んだ記憶も。
家では父は仕事ばかり。
母も研究で家を空ける日が多い。
会話の内容は決まっていた。
「鍛錬はしたか。」
「勉強はどうだ。」
「黒崎の名に恥じるな。」
それだけだった。
だからこそ。
目の前の家族は眩しかった。
「あの子は?」
仁が尋ねる。
父は部屋の中を見て静かに答えた。
「あれが天城夫妻だ。」
「能力研究では世界でも指折りの研究者だ。」
「じゃあ、あの子も強い能力なの?」
「いや。」
父は首を横に振る。
「あの子は無能力者だ。」
仁は目を丸くした。
「え?」
「世界で唯一、能力を持たない子どもらしい。」
信じられなかった。
能力がない。
それなのに。
あんなにも幸せそうに笑っている。
父は続ける。
「もっとも、天城夫妻は国家への貢献が大きい。」
「だから息子には特例で星ヶ丘学園への入学資格が与えられている。」
「能力がなくても、研究者の子だからな。」
仁は再び部屋を見る。
ハルは完成した模型を高く掲げて笑っていた。
「できた!」
「すごいじゃないか、ハル。」
「頑張ったね。」
三人の笑い声が研究所の廊下に響く。
その光景を見つめながら、幼い仁は静かに思った。
(能力がなくても。)
(こんなふうに笑えるんだ。)
(だったら……。)
(能力って、本当にそんなに大切なのか?)
その日、胸に芽生えた小さな疑問は。
誰にも知られることなく、黒崎仁という少年の心の奥底で静かに根を張り始めていた。
回想はそこで終わらなかった。
天城家の笑顔を見た、あの日から数年後。
黒崎仁は十歳になっていた。
父の仕事は相変わらず忙しく、母も研究所へ通う日々が続いていた。
それでも、あの日以来、仁は能力について考えるようになっていた。
どうして能力があるだけで褒められるのか。
どうして能力がないだけで価値がないと言われるのか。
その答えは、まだ見つからなかった。
そして、その日は突然やって来た。
夕暮れ。
能力研究所から帰宅する途中だった。
車の窓から見える街並みは、いつもと変わらない。
父は運転席。
母は助手席で資料を読んでいる。
後部座席の仁は、窓の外をぼんやり眺めていた。
次の瞬間だった。
轟音。
世界が揺れた。
道路が爆ぜる。
車体が大きく横転した。
「――っ!」
身体が激しく揺さぶられる。
耳鳴り。
ガラスが砕け散る音。
何が起きたのか理解できなかった。
やがて車は横倒しのまま止まる。
煙が立ち込める車内。
「……父さん?」
返事はない。
額から血を流しながら、父は動かなかった。
「母さん!」
母がゆっくりと目を開く。
「仁……逃げ……なさい……。」
その言葉を最後に、母は視線を前へ向けた。
道路の真ん中。
一人の男が立っていた。
黒いコート。
狂気じみた笑み。
右腕には禍々しい能力が渦巻いている。
「見つけたぞ。」
男は愉快そうに笑った。
「能力研究の第一人者。」
「やっと殺せる。」
父が苦しそうに顔を上げる。
「……仁。」
「目を閉じるな。」
「よく見ろ。」
仁は泣きながら叫ぶ。
「嫌だ!」
「早く逃げよう!」
「お願いだから!」
父は首を横に振った。
「逃げても追われる。」
「なら……お前だけでも、生きろ。」
男が腕を振る。
巨大な衝撃が車を貫いた。
轟音。
爆炎。
父と母が仁を庇うように覆いかぶさる。
温かいものが頬に落ちた。
血だった。
「父さん……?」
「母さん……?」
二人はもう動かなかった。
男はつまらなそうに鼻で笑う。
「終わりか。」
「能力もない一般人なら、もっと面白いと思ったんだが。」
その言葉を聞いた瞬間。
仁の中で何かが切れた。
能力。
また能力だった。
人を殺すのも能力。
人を守れないのも能力。
人の価値を決めるのも能力。
すべて能力だった。
遠くからサイレンが聞こえる。
能力管理局。
警察。
救急隊。
駆け付けた隊員たちは慌ただしく現場を囲んだ。
「黒崎夫妻の死亡を確認!」
「犯人は逃走!」
「能力犯罪対策部へ連絡!」
誰も父や母の名前を呼ばない。
誰も家族として見ていない。
ただ事件として処理していく。
その光景を、幼い仁は呆然と見つめていた。
(違う。)
(何かが違う。)
能力は人を幸せにするためのものだと教えられた。
だが、仁が見てきた能力は違った。
人を比べ。
人を利用し。
人を殺し。
そして、人の命さえ数字のように扱っていた。
その日からだった。
黒崎仁は、この世界を信じることをやめた。
研究所。
星ヶ丘学園。
能力管理局。
国家。
すべてが一つの大きな歯車で繋がっている。
そんな確証のない疑念だけが、胸の奥に静かに積もっていく。
そして、もう一つ。
あの日、研究所で見た一人の少年の笑顔だけは、不思議なほど鮮明に記憶に残り続けていた。
――能力がなくても、あんなふうに笑える人間がいる。
その事実だけが、黒崎にとって唯一、この世界を完全に憎み切れない理由になっていた。
チャイムが鳴り、昼休みが始まる。
教室は一気に賑やかになった。
友人同士で机を寄せ合い、笑い声が飛び交う。
その中で、黒崎は静かに窓際へ視線を向けた。
朝比奈美咲。
彼女は数人の女子に囲まれながら笑っていた。
「朝比奈さん、この問題教えて!」
「うん、いいよ。」
椅子を寄せ、一人ひとり丁寧に教えている。
誰かが困っていれば自然と手を差し伸べる。
そんな姿は昔から変わらない。
誰もが口を揃える。
優しい。
天使みたいだ。
朝比奈さんなら大丈夫。
黒崎は静かに目を細めた。
(……違う。)
昨日までは違う意味でそう思っていた。
(どうして助けなかった。)
(どうして、お前だけは動かなかった。)
一番近くにいたのは美咲だった。
幼馴染だった。
ハルが誰よりも信じていた存在だった。
だからこそ黒崎は失望した。
能力が足りなかったわけではない。
勇気が足りなかった。
その事実が許せなかった。
だが。
昨日。
美咲は震えながら言った。
『私は怖かった。』
『普通の生活を失うのが怖かった。』
『私は、自分で選んだ。』
言い訳ではなかった。
誰かの責任にもしていなかった。
ただ、自分の弱さを認めていた。
(……弱かっただけだ。)
そう。
美咲は悪人ではない。
英雄でもない。
ただ、一人の少女だった。
そして、それは自分も同じだった。
黒崎は拳を握る。
(俺だって、何もできなかった。)
ハルを救えなかった。
この世界を変えられなかった。
能力研究所の真実にも辿り着けない。
両親を殺した能力者の目的すら分からない。
知りたいことは山ほどある。
それなのに。
自分にできることは学園で剣を振ることだけだった。
世間では黒崎仁は最強だと言われている。
学園最強。
将来の英雄候補。
誰もがそう評価する。
だが。
(笑わせるな。)
黒崎は心の中で吐き捨てる。
(学園最強……。)
(そんな肩書きに、何の意味がある。)
研究所は変わらない。
地下施設も存在し続けている。
能力だけで人生が決まる世界も変わらない。
国家という巨大な仕組みは、今日も何一つ揺らいではいない。
そんな世界を前にして、自分一人が剣を振ったところで何が変わる。
何も変えられない。
結局、自分は学園という狭い箱の中で最強と呼ばれているだけの人間だ。
その程度だ。
世界には届かない。
この理不尽には届かない。
黒崎は静かに窓の外を見上げた。
青く澄んだ空が広がっている。
(……だからこそ。)
(今は力をつけるしかない。)
焦って動けば、何も守れない。
両親のように。
ハルのように。
そして、美咲のように。
失ってから悔やむことになる。
それだけは、もう二度と繰り返したくなかった。
黒崎は静かに立ち上がる。
その瞳には迷いはない。
世界はまだ遠い。
だが、いつか必ず届く。
その日のために。
自分は誰よりも強くならなければならない。
そう心に誓いながら、黒崎は静かに教室を後にした。
放課後。
校舎の喧騒から離れた剣道場には、乾いた竹刀の音だけが響いていた。
パァン――。
鋭い踏み込み。
空気を切り裂く一閃。
黒崎は無言のまま竹刀を振り続ける。
一太刀。
二太刀。
三太刀。
額から流れ落ちた汗が床へ落ち、小さな音を立てた。
だが、黒崎は止まらない。
何百回。
何千回。
ただひたすら、同じ動きを繰り返す。
誰かに見せるためではない。
誰かに評価されるためでもない。
己を鍛えるため。
それだけだった。
(まだ足りない。)
竹刀を振るたびに、自分の未熟さだけが浮き彫りになる。
学園最強。
その称号は周囲が勝手に付けたものだ。
自分は一度も、その言葉を信じたことはない。
(俺は弱い。)
研究所の真実を知らない。
能力とは何なのかも知らない。
地下施設で何が行われているのかも知らない。
この世界を支配している人間が誰なのかさえ分からない。
そんな人間が世界を変えられるはずがない。
パァン――。
再び竹刀が空を裂く。
(ハルは戦っている。)
今、この瞬間も。
自分の知らない場所で。
理不尽な運命と。
絶望と。
それでも前を向こうとしているはずだ。
そして自分は。
暖かい教室で授業を受け、剣を振っている。
その差を忘れた日は、一日もなかった。
(だから、待っていろ。)
誰に向けた言葉なのか、自分でも分からない。
ハルなのか。
世界なのか。
それとも、自分自身なのか。
竹刀を正眼に構える。
ゆっくりと息を吸い込み、静かに吐く。
「……必ず。」
小さく呟く。
「俺は、この世界に届く。」
そのためには、まだ弱い。
だから強くなる。
学園最強で終わるつもりはない。
全国最強でも終わらない。
目指すのは、その先だ。
世界そのものに牙を届かせる力。
それを手に入れるまでは、立ち止まるつもりはなかった。
夕日が剣道場を赤く染める。
黒崎は竹刀を納め、静かに道場を後にした。




