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幼馴染を寝取られ、学園に殺された無能力の俺は最強になって帰ってくる  作者: ワールド


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第28話 最強の証明

地下迷宮に轟音が響く。


 白夜とハルたちは再び距離を取った。


 ハルは肩で息をしながら木刀を構える。


 腕も足も傷だらけだった。


 隣ではカエデが拳を握り締めている。


「くそっ……。」


「全然当たらねぇ。」


 白夜は静かに四人を見渡した。


 その表情は戦闘開始から何一つ変わっていない。


「終わりか。」


 淡々とした声。


 まるで勝敗は最初から決まっていたと言わんばかりだった。


 レンは小さく舌打ちする。


「ちっ……。」


 頭の中では何度も作戦を組み立てる。


 前衛を二人。


 後衛を二人。


 連携。


 挟撃。


 陽動。


 考えられる手は全て試した。


 それでも届かない。


「能力の条件がまだ分からねぇ……。」


 レンが低く呟く。


 ハルは木刀を握り直した。


「もう一度行く。」


「待て。」


 レンが止める。


「真正面から行っても同じだ。」


「でも!」


「今は焦るな。」


 そのやり取りを聞いていたカエデが一歩前へ出る。


「だったら私がぶっ飛ばす!」


 床を砕きながら一直線に白夜へ突っ込む。


「おらぁぁぁぁ!」


 渾身の右ストレート。


 しかし。


 白夜は半歩だけ身体をずらした。


 拳は空を切る。


 その瞬間――


 ズバッ!


「っ!」


 カエデの脇腹が裂ける。


 鮮血が舞う。


「まだだぁ!」


 傷など構わず左拳を振る。


 そこへハルも飛び込む。


「はぁっ!」


 木刀が白夜へ迫る。


 二方向からの同時攻撃。


 だが白夜は冷静だった。


 最小限の動きだけで二人の攻撃をかわす。


 そして。


 ズバッ!


 ハルの肩にも新たな傷が刻まれる。


「ぐっ……!」


 二人は反射的に距離を取る。


 澪は歯を食いしばった。


(今しかない……。)


 血の付いた指先を白夜へ向ける。


 痛覚共有。


 能力を発動しようとした、その瞬間。


 白夜の視線だけが澪へ向く。


「遅い。」


 ズバッ!


「きゃっ!」


 澪の足へ傷が走り、体勢を崩した。


 能力は発動できない。


 レンがすぐに澪を支える。


「大丈夫か!」


「はい……。」


 だが、その声に力はなかった。


 四人。


 それぞれが役割を果たしている。


 それでも白夜には届かない。


 ハルは息を整えながら前を見る。


(強い……。)


(今まで戦った誰よりも。)


 白夜はゆっくりと一歩踏み出す。


「終わりだ。」


 静かな一言。


 その圧倒的な実力を前に、誰もすぐには動けなかった。


 ――その時だった。


 ゴォォォォォッ!!


 地下迷宮を切り裂くような爆音が遠くから響く。


 風が一直線に吹き抜ける。


 白夜だけが反応した。


 初めて一歩後ろへ下がる。


「……。」


 白夜の視線が、通路の奥へ向く。


 ハルたちもつられて振り返る。


 砂煙の向こうから、一人の人影がゆっくりとこちらへ歩いて来ていた。


 砂煙の向こうから、一人の男がゆっくりと歩いてくる。


 カツ……。


 カツ……。


 静かな足音だけが地下迷宮に響いた。


 黒い隊服。


 腰に差した一本の日本刀。


 鋭い眼差し。


 その姿を見た瞬間、ハルは目を見開く。


「風間……!」


 カエデも思わず笑みを浮かべた。


「やっと来やがったか。」


 レンは小さく息を吐く。


「遅かったな。」


 だが、風間は何も答えない。


 ハルも。


 レンも。


 カエデも。


 澪も。


 一度も視線を向けることなく、そのまま白夜の前まで歩いていく。


 やがて二人の距離が五メートルほどまで縮まったところで、風間は足を止めた。


 白夜も黙ったまま風間を見つめる。


 しばらく沈黙が続く。


 先に口を開いたのは風間だった。


「お前が白夜か。」


 白夜は短く答える。


「ああ。」


「お前が風間。」


「そうだ。」


 それだけだった。


 余計な言葉はない。


 互いに名前を確認しただけで十分だった。


 風間はゆっくりと日本刀の柄へ手を添える。


「聞いてる。」


「代表候補の中に、とんでもなく強い奴がいるってな。」


 白夜も一歩だけ前へ出る。


「俺も聞いてる。」


「地下施設最強。」


「風間嵐。」


 風間は口元をわずかに吊り上げた。


「試験には興味ねぇ。」


「代表にも興味ねぇ。」


「魔装鉱石もいらねぇ。」


 刀を静かに抜く。


 澄んだ金属音が地下迷宮に響いた。


「強い奴と戦えれば、それでいい。」


 白夜は無表情のまま頷く。


「同じだ。」


「俺も、お前と戦ってみたかった。」


 二人の間に、再び静寂が訪れる。


 ハルは思わず息を呑んだ。


「……。」


 レンが低く呟く。


「完全に俺たちのこと忘れてるな。」


「眼中にないってやつだ。」


 カエデは悔しそうに舌打ちする。


「腹立つな。」


「でも。」


「今のあいつらに割って入れる気もしねぇ。」


 澪は白夜を見つめながら、小さく呟く。


「白夜……。」


 その声は届かない。


 白夜の視界には、もう風間しか映っていなかった。


 風間も同じだった。


 地下施設最強。


 代表最強。


 二人だけの世界がそこにあった。


 風間が刀を構える。


「最強。」


「決めようぜ。」


 白夜は静かに右手を前へ出した。


「ああ。」


「勝った方が最強だ。」


 次の瞬間。


 二人の姿が、同時に消えた。


 キィィィン――。


 金属同士がぶつかる甲高い音が地下迷宮に響き渡る。


 次の瞬間。


 ドォォォォン!!


 衝撃波が四方へ弾け飛び、壁が大きく揺れた。


「うわっ!」


 ハルは思わず腕で顔を庇う。


 風圧だけで身体が数歩後ろへ押し戻される。


 砂煙が舞い上がり、視界が白く染まった。


「何だ、この威力……!」


 カエデが目を見開く。


 ようやく煙が晴れる。


 そこには、日本刀を押し込む風間と、それを片手で受け止める白夜の姿があった。


 二人とも表情一つ変わらない。


 まるで挨拶でも交わしているかのような顔で力をぶつけ合っていた。


「面白ぇ。」


 風間が笑う。


「これくらいじゃねぇとな。」


 その言葉と同時に刀を振り抜く。


 空気が裂ける。


 真空の斬撃が一直線に白夜へ襲い掛かった。


 しかし白夜は最小限の動きだけで身を捻る。


 斬撃は背後の岩壁へ直撃した。


 轟音と共に壁が真っ二つに裂ける。


「……嘘だろ。」


 ハルは言葉を失った。


 一振り。


 ただそれだけで迷宮の壁が切断されている。


 白夜は間髪入れず踏み込む。


 一瞬で風間の懐へ入り込んだ。


 鋭い一撃。


 ズバッ。


 風間の肩から鮮血が舞う。


 しかし風間は笑みを消さない。


「悪くねぇ!」


 傷など意にも介さず、日本刀を横薙ぎに振るう。


 白夜は後方へ跳び距離を取る。


 二人の姿が再び消えた。


 ギィィィン!


 ガガガガガガッ!!


 姿は見えない。


 聞こえるのは激しい衝突音だけ。


 右。


 左。


 上。


 次の瞬間には反対側。


 あまりの速度に、ハルの目では追えなかった。


「どこだ……!」


「全然見えねぇ……。」


 カエデも拳を握り締める。


「私でも見失うなんて……。」


 レンだけは目を細め、戦場を見続けていた。


「いや。」


「見えなくてもいい。」


「見えたら終わりだ。」


「え?」


 ハルが振り返る。


 レンは真剣な表情で続けた。


「今、あそこへ近付いたら一瞬で巻き込まれる。」


「俺たちじゃ戦いにならねぇ。」


 その言葉を証明するように、二人が再び激突した。


 ドォォォォォン!!


 衝撃波だけで足元の床が砕ける。


 大きな岩が宙へ舞い、天井から無数の瓦礫が降り注いだ。


 レンは即座に叫ぶ。


「全員伏せろ!」


 四人は咄嗟に身を低くする。


 巨大な岩が頭上をかすめ、そのまま背後の壁へ激突した。


 轟音。


 土煙。


 崩れ落ちる岩盤。


 戦っているのは、たった二人だけ。


 それなのに地下迷宮そのものが壊れ始めていた。


 ハルは息を呑む。


(これが……。)


(地下施設最強と代表最強……。)


 自分が必死に届こうとしていた世界。


 その頂は、想像を遥かに超えていた。


 激突。


 激突。


 激突。


 風間と白夜は言葉を交わすことなく、ひたすら刃をぶつけ合う。


 一撃ごとに地下迷宮が揺れた。


 剣技。


 判断力。


 反応速度。


 どれを取っても互角。


 風間の日本刀が白夜の首を狙えば、白夜は紙一重でかわす。


 白夜が懐へ踏み込めば、風間は刀を返して迎え撃つ。


 互いに一歩も譲らない。


「すげぇ……。」


 ハルは目を見開いた。


「傷は増えてるのに、動きが全然鈍らない。」


 カエデも腕を組みながら苦笑する。


「化け物だな。」


「普通なら、とっくに倒れてる傷だ。」


 レンだけは二人の戦いを冷静に見つめていた。


「いや……。」


「違う。」


「何だ?」


 ハルが振り向く。


 レンは白夜だけを見つめていた。


「風間は傷だけだ。」


「だが白夜は違う。」


「見ろ。」


 ハルはもう一度白夜へ視線を向ける。


 最初は気付かなかった。


 だが、よく見ると白夜の呼吸が少しずつ乱れている。


 額には汗。


 鼻からは一筋の血が流れていた。


「鼻血……?」


 ハルが呟く。


 レンは静かに頷く。


「あいつの能力。」


「身体だけじゃなく、脳にもとんでもない負荷が掛かってる。」


 その瞬間だった。


 白夜の身体がわずかによろめく。


 ほんの一瞬。


 しかし風間は見逃さない。


「隙だ。」


 風間の刀が一直線に振り抜かれる。


 ズバッ!


 白夜の左肩から鮮血が舞う。


 そのまま数メートル吹き飛び、地面を滑った。


 ハルが息を呑む。


「やった……!」


 しかし。


 白夜はすぐに立ち上がった。


 肩から血を流しながらも、その瞳は少しも揺らいでいない。


 口元の血を手の甲で乱暴に拭う。


「なるほど。」


「強いな。」


 風間は肩に刀を担ぎ、口元を吊り上げる。


「お前もな。」


「やっぱり簡単には終わらねぇ。」


 二人は再び向かい合う。


 その空気だけで周囲が震えた。


 レンは険しい表情のまま呟く。


「風間が押してるように見える。」


「でも、まだ決まらねぇ。」


 ハルが尋ねる。


「どうして?」


「風間は斬れば勝てる。」


「だけど白夜は能力がある。」


「まだ切り札を残してる可能性が高い。」


 レンはそう言って風間へ視線を移した。


「それに……。」


「風間も本気じゃねぇ。」


 ハルは驚く。


「え?」


「あいつが本気で空気を支配したら、この程度じゃ済まない。」


「今は互いに探り合ってる。」


 まるで相手の底を測るように。


 どちらも決定打を放たない。


 どちらも相手の一瞬の隙を待っている。


 その静かな駆け引きこそが、本当の勝負だった。


 風間が刀をゆっくりと構え直す。


 白夜も静かに腰を落とした。


 次の一撃。


 その一撃が、この均衡を崩そうとしていた。


 風間と白夜の戦いは、さらに激しさを増していた。


 ギィィィィン!!


 刀と能力がぶつかり合うたび、地下迷宮が大きく揺れる。


 床が砕け、岩壁が崩れ、天井からは絶え間なく瓦礫が降り注ぐ。


 ハルたちは巻き込まれないよう距離を取りながら、その戦いを見守ることしかできなかった。


「……何回ぶつかってんだよ。」


 カエデが苦笑する。


「まだ決着がつかねぇ。」


 レンは腕を組みながら静かに頷いた。


「どっちも決め手がない。」


「いや、互いに決め手を出してねぇ。」


 ハルが首を傾げる。


「どういうことだ?」


「探ってるんだ。」


「どこまでやれる相手なのか。」


「どんな切り札を持ってるのか。」


「その見極めをしてる。」


 ハルは改めて二人を見つめた。


 確かに風間も白夜も焦る様子はない。


 一撃一撃は本気。


 それでも、どこか余裕を残しているようにも見えた。


 その頃。


 一人だけ別方向へ歩き出す影があった。


 霧島結だった。


「さて。」


「私は私で頑張りますか。」


 誰にも聞こえないよう小さく呟き、ワイヤーを天井へ放つ。


 シュッ。


 身体が宙へ浮き、そのまま蜘蛛のように迷宮を移動していく。


 しばらく進むと、壁にもたれ掛かったまま気絶している受験者を見つけた。


「ごめんね。」


「持ってても使わないでしょ。」


 腰の袋から魔装鉱石を抜き取り、自分の袋へ放り込む。


 さらに別の通路へ。


 倒れている受験者。


 戦闘不能になった代表候補。


 風間と白夜の戦いに巻き込まれ、意識を失った者たちから次々と魔装鉱石を回収していく。


 袋は少しずつ重くなっていった。


 結は思わず笑みを浮かべる。


「やっぱり。」


「戦うより、こういう方が性に合ってる。」


 その時だった。


 ドォォォォォン!!


 背後から巨大な爆発音が響く。


 迷宮全体が揺れ、天井から砂埃が降ってくる。


 結は足を止め、振り返った。


「まだやってるんだ。」


「ほんと元気だね、あの二人。」


 それだけ呟くと、再び歩き出す。


 戦いに加わる気はない。


 誰かを助ける気もない。


 今の自分にとって一番価値があるのは、魔装鉱石を集めることだった。


 一方その頃。


 レンは周囲を見回し、小さくため息をついた。


「……結がいねぇ。」


 ハルも辺りを見渡す。


「またどこか行ったのか。」


 カエデは呆れたように笑う。


「あいつなら心配いらねぇ。」


「どうせ自分に一番得なことしてる。」


 レンも苦笑する。


「間違いねぇ。」


「あいつは危ない場所には近付かねぇからな。」


 その瞬間だった。


 ギィィィィン!!


 これまで以上に鋭い金属音が響く。


 風間と白夜。


 二人の姿が激しく交錯し、次の瞬間には再び爆発的な衝撃波が地下迷宮を駆け抜けた。


 レンは険しい表情で戦場を見つめる。


「……そろそろだ。」


 ハルが尋ねる。


「何が?」


 レンは短く答えた。


「本気が来る。」


 ドォォォォォン!!


 地下迷宮全体が大きく揺れた。


 天井から無数の瓦礫が降り注ぎ、壁には新たな亀裂が走る。


 風間と白夜。


 たった二人が戦っているだけで、迷宮そのものが悲鳴を上げていた。


「……すげぇ。」


 ハルは思わず呟く。


 目の前で繰り広げられているのは、もはや試験ではない。


 怪物同士の殺し合いだった。


 ギィィィン!!


 再び刀がぶつかる。


 風間は笑っていた。


「ははっ!」


「最高だ!」


 血で濡れた頬を拭うこともなく、日本刀を構え直す。


「ここまで俺を楽しませた奴は久しぶりだ。」


 対する白夜も口元をわずかに吊り上げる。


「俺も同じだ。」


「お前なら本気で戦える。」


 次の瞬間。


 二人は同時に距離を取った。


 初めて互いが大きく間合いを空ける。


 レンの表情が変わった。


「……まずい。」


 ハルが振り向く。


「レン?」


「離れろ。」


 低い声だった。


「二人とも。」


「次で決める気だ。」


 カエデも風間を見る。


「何が違う?」


「今までと。」


 レンは風間の刀を見つめていた。


「空気が集まってる。」


 その言葉通りだった。


 風間の周囲の風が渦を巻き始める。


 地下迷宮の空気が刀身へ吸い寄せられ、圧縮されていく。


 ゴォォォォォ……


 耳鳴りのような低い音が響く。


 ハルは息を呑んだ。


「空気が……見える。」


 揺らめく空間。


 歪む景色。


 風間の刀の周囲だけ、空間そのものがねじ曲がっていた。


 一方の白夜も静かに右手を前へ出す。


 その瞳から一切の迷いが消える。


 空気が張り詰めた。


 先ほどまでとは比べものにならないほど濃密な殺気が辺りを包み込む。


 レンが一歩後ろへ下がる。


「ハル!」


「カエデ!」


「澪!」


「これ以上近付くな!」


 三人もその声の異変に気付き、すぐに距離を取る。


 戦場には風間と白夜だけが残った。


 風間が刀を肩へ担ぐ。


「終わらせるぞ。」


 白夜も静かに頷く。


「ああ。」


「勝つのは俺だ。」


 次の瞬間。


 二人が同時に地面を蹴った。


 ドォォォォォォォン!!


 これまでで最大の轟音が地下迷宮を飲み込む。


 爆風が一直線に吹き抜け、岩壁が粉々に砕け散る。


 舞い上がる砂煙。


 崩れ落ちる天井。


 視界は完全に白く染まった。


 ハルは腕で顔を庇いながら必死に耐える。


「くっ……!」


 何も見えない。


 何も聞こえない。


 ただ一つだけ分かることがあった。


 地下施設最強と代表最強。


 二人の戦いは、今まさに最高潮へ達しようとしていた。


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