第十四話 私も、レイン様を選びます
王太子アルベルトは俺を哀れむような目で見ていた。
「愚かな……」
「俺は自分の選択が誤っているとは思いません」
俺はそうはっきりと言った。
「おまえの補助魔術を認めてやろうと言っているのだがな。王国の管理に従わないのであれば、あの術式は邪術とされても仕方あるまい」
エリシアの魔法と同様に、俺の術式も理解ができないものだから危険というわけか。
アルベルトがエリシアに視線を移す。
「エリシア・ブランシェ、おまえにも選ばせてやろう。王家と聖教会の監督のもと、矯正を受けるのならば、王都に留まることを許してもよい」
エリシアが俺を見る。
「……エリシア様がお決めください」
エリシアが頷く。普段なら狼狽えそうな彼女が、震えながらも、しっかり前を見据えていた。
「……辺境から来た私は、ずっと魔法をちゃんと扱うことができませんでした。王都で私を見てくれる人はいません。皆さんが見ていたのは、暴発や失敗ばかりでした」
エリシアは言葉にしないが、辺境出身の平民というだけでも随分と傷つけられてきたのだろう。
「ですが、レイン様だけは私を怖がらずに見てくださったのです。私の魔法を、欠陥ではなく祈りだと言ってくださいました。そして、私に道を照らしてくださいました」
彼女は俺に向けて微笑み、それからアルベルトに向き直った。
「私も、レイン様を選びます」
エリシアははっきりとそう言った。
アルベルトが一瞬目を見開き、冷たい笑みを浮かべた。
隣の大司教グレゴールが無感動に言う。
「ならば、これ以上の温情を与える必要はございませんな」
アルベルトは頷いた。
「王国の慈悲を拒んだ以上、二人を王都に留め置く理由はない」
息を小さく吸い込み、アルベルトは宣言した。
「エリシア・ブランシェ、レイン・グレイヴ。両名に明朝までの王都退去を命じる」
試験場がざわめいた。
こうして、俺たちは王都を追われることになった。
だが、不思議と後悔はなかった。
俺はようやく、百年前に選べなかったものを選べたのだから。




