表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ネクロマンサー】死んだ最強の姉が僕を溺愛して離してくれない――亡国の王子は帝国を蹂躙する  作者: アヲル。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/40

第38話 王と王

「……ユリエル? ああ、大きくなったわね……」


 慈愛に満ちた笑顔。僕の母、ミーティア。


「ユリエルよ。我が息子よ。なぜ、こんな場所に戻ってきた……」


 悲しげな瞳。僕の父、レガート。


「……ッ!!」


 声が出ない。

 あいつは、ゼノスは。

 僕の目の前で、僕が愛していた両親を、「死者召喚ネクロマンス」で呼び戻しやがった。


 ……ああ、クソ。そーゆー事ね。

 理解した。

 お前もか、ゼノス。


「……ああ、そうだ。わしもネクロマンサーなのだよ。どうした、亡国の王子? 親孝行の時間だぞ?」


 ゼノスが玉座で高笑いする。

 召喚された父上たちの瞳には、エル姉のような意志はない。

 にごった黒。完全に操り人形の状態。


「ユリエル、逃げろ! 早く!」


 父上の叫びが、意思に反して震える唇かられる。

 ゼノスはそれを見て、満足そうに背もたれに深く体を預けた。


「驚いたか? 小僧。世にネクロマンサーを『最弱』、あるいは『ゴミ』だと定義づけ、洗脳教育をほどこしたのはわしだ。あまりに便利で、危険なジョブだからな」


 要するに、独占したかったわけだ。

 故に、ジョブ自体を社会的に抹殺した。


「適性儀式のあの日、お前が爆笑されたのもわしの計略けいりゃくだ。芽が出た者は即座に消すか、無能の烙印らくいんを押して追放する。お前は運良く、あるいは運悪く生き延びてしまったがな」


 ゼノスが立ち上がり、黒い杖を向けてくる。


「領土なんてどうでもいい。わしが欲しかったのは『良質な魂』と『器』だ。クリスタリアの血筋は、最高の素材だったのだよ。わしの固有スキルは魂吸ソウルドレイン。こやつらの魂でわしの命は大分長くなったわ」


 唖然あぜん

 そんなくだらない理由で、クリスタリアを襲ったのか。


「殺し合え。親子の情など、冥府めいふへ持っていけ」


 ゼノスの冷酷な命令。

 父上が剣を抜き、母上が魔導書を開く。

 最低最悪な親子の再会だ。


「申し訳ありません、父上、母上。遅くなってしまって」


 僕は震える声で謝った。


「ですが、今……成長した姿を見せます。王としての在り方を教えてくれたのは父上ですっ!」


 父上の剣劇。


(王国で名をはせた剣は伊達だてじゃないな。これほど重い一撃を、この速度で振るうのか……!)


 何故か、嬉しい気持ちがあふれる。きっと誇らしいのかな。

 同時に、母上の詠唱。


「ごめんなさい、ユリエル……身体が勝手に……ッ!」


 母上の瞳から涙がこぼれる。

 でも、放たれる火炎魔法は僕を容赦なく焼きにかかる。

 僕は「絶対防御インペリアル・ガード」を展開し、完全シャットアウト。

 だが、もう魔力は0。生命力もひとさじもない。


 しかも、この命令は術者が死ぬか魔力切れまで、解かれることはない。

 たぶん、僕と同じ原理だろう。


絶対防御インペリアル・ガード」を維持したまま、地面から湧き上がらせた「拘束バインド」の黒い手を階段にして、ゼノスへと超加速し接近。


「小ざかしい!」


 ゼノスが二人に魔力を供給し、父上の剣に母上の炎の魔法を付与エンチャント

 業火をまとった剣が僕を襲う。

 くっ! もうダメだ! もうあらがう魔力はない。



 ――その瞬間。

 僕のレイピアが蒼い炎を纏う。

 カトリーヌの付与エンチャント魔法だ。


(……最期まで仕えてくれるか、カトリーヌ!)


 間一髪、赤い炎と蒼い炎が混じり合うように、攻撃は相殺そうさいされる。


 僕は最後の力を振り絞り、ゼノスの懐に飛び込んだ。

 これでお別れだ。

 命を燃やし、最後の魔力をつむぐ。



「――蒼御雷アオミカヅチ(アズール・ジャッジメント)」



 ――ズガァァァァァンッッ!!!


 打ち出されたレイピアは、蒼き炎をまとった、雷槍。

 ゼノスの胸元を、心臓ごと貫き、そのまま壁を爆砕させる。


「が、は……っ。わ、わしが……ネクロマンサーの、王であるこのわしが……」


 ゼノスの胴体に大きな風穴が空き、全身を蒼い炎に包まれる。

 そのまま、崩れるように玉座から転げ落ちた。

 王冠が床を転がり、僕の足元で止まる。


 決着。


「……」


 ゼノスの死。


 同時に、二人を縛っていた黒い霧が解けていく。


 二人の瞳から濁りが消えて、元の穏やかな輝きが戻った。


「ユリエル……立派になったわね……」


 母上が僕の頬を撫でようとするけれど、その手は空を切る。


「……見事だ。我が息子、クリスタリアの真なる王よ」


 父上が満足そうにうなずき、粒子となって消えていく。


「父上! 母上!」


 叫んでも、二人はもう戻らない。

 呪縛から解き放たれて、天へと昇っていった。


 静寂。

 背後に気配を感じて振り返ると、そこにはエル姉が立っていた。


「お疲れ様、ユリ。ちゃんと果たしたのね」


 エル姉が優しく僕を抱きしめる。


「……終わったよ、姉さん。僕たちの家、取り戻したよ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ