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【ネクロマンサー】死んだ最強の姉が僕を溺愛して離してくれない――亡国の王子は帝国を蹂躙する  作者: アヲル。


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第3話 確認

「……本当、信じられない。エル姉にまたえるなんて」


 膝の上に乗ってきたエル姉の銀髪を、おそるおそるでてみる。

 指先が少し震えた。

 感触がある。温もりがある。

 夢じゃない。


「ふふ、ユリったら。さっきからそればっかり」


 エル姉が、僕の膝の上に乗り、胸を押し付けるように抱きついている。

 生前は第一王女として、品格と慎みに溢れていたはずなんだけど……。

 死の淵から僕が呼び戻しちゃったせいか、弟への溺愛っぷりに歯止めが効かなくなっている。

 

 ……正直、ちょっと、いやかなり、距離が近い。


「……あ、でもユリ。ちょっと待って」


 急にガバッと身を起こして、僕の顔をじっとのぞき込んできた。


「なに、エル姉?」

「その髪! 十年も放っておいたから、こんなに伸びて……せっかくの可愛いお顔が台無しじゃない! 目が隠れちゃってるわ」


 あー、やっぱり。

 正直、自分でも鬱陶うっとうしいとは思ってた。


「……いいんだよ、これで。帝国では僕は死んだはずの王子なんだ。目立たない方が都合がいい」


 うつむいてそう答えると、エル姉の頬がプクリと膨らんだ。

 あ、これ怒ってる時の顔だ。


「さ、最高に可愛いユリの顔を隠すなんて、そんなの、し、信じられないわ!」

「エル姉、落ち着いて……」

「落ち着いていられません! ほら、そこにお座りなさい。お姉ちゃんが格好良くしてあげるから!」


 どこから出したのか、ハサミを手にしている。

 しかも魔力で研ぎ澄ませて、めちゃくちゃ光ってる。怖い。


 シュバババッ!


 常人じょうじんには視認できない速度。

 美容師もびっくりの超絶技巧ちょうぜつぎこうだ。

 というか、ハサミで出す音じゃないよね、それ。


「……え、あ、もう終わり?」

「ええ。目を開けて、ユリ」


 恐る恐る顔を上げると、視界が劇的にクリアになっていた。

 前髪のカーテンがなくなっている。


 鏡を見る。

 そこには、王家の品をまとった美少年(自称するのは恥ずかしいけど)がいた。

 ただ、瞳のルビー色が、以前より怪しく光っている気がする。


「……っ! やっぱり最高! 素敵よユリ! 他の人間に見せるのが勿体ないわ!」


 エル姉が抱きついてきて、頬に何度もキスをされる。


「は、恥ずかしいよ……。それに、服もこんなにボロボロだし。これじゃあ逆に目立っちゃう」


 着ているのはぎだらけの訓練服。

 さすがに、この髪型でこの格好はチグハグすぎる。


「そうね……。王国の王子が、そんな雑巾ぞうきんみたいな布切れをまとっているなんて許せないわ。よし! 今からお買い物に行きましょう!」

「今から!? 夜中だよ?」

「私の行きつけの店があるから。大丈夫よ」


 10年前の店は今もあるのだろうか、そんな心配しながら、夜の城下町へ。


 今の彼女は僕の「魂固定ソウルアンカー」で現世うつしよ顕現けんげんしている状態だ。

 魔力を集中させれば実体化。

 解除すれば、僕の右目の視界を共有しながら冥界で待機。

 便利。



 深夜の仕立て屋


 結局、エル姉の行きつけだった店に押し入る(正確には宝石で黙らせる)形で、一式揃えることになった。

 選ばされたのは、深い濃紺のコートに、上質な白いシャツ、黒の細身のズボン。


「……エル姉、これ高いよ」

「いいのよ。あの倉庫にあった宝石は元々ウチのものなんだから。有効活用しなきゃ」


 確かに、換金すれば数十年分は遊んで暮らせる資金がある。

 遠慮なく着替えることにした。


 鏡の中の自分は、完全に「王子様」に戻っていた。


「……カッコいい。ああ、ユリ。今の貴方なら、夜会で噂になっちゃうくらい素敵よ」

「……僕には、姉さんさえいればそれでいいんだけどね」


 少しだけ口角を上げて笑ってみる。

 エル姉は、その場で悶絶もんぜつしていた。ちょろい。



 だが、そんな甘い空気は長くは続かなかった。


「おいおい……なんだぁ? こんな夜中に、ガキといい女が歩いてやがるじゃねえか」


 路地裏から現れたのは、三人の男たち。

 ヴォルガルド帝国の兵士。

 酒臭い。そしてガラが悪い。

 典型的な「絡んじゃいけないタイプ」の連中だ。


「その女、いい身体してんな。俺たちが遊んでやるよ! ガキは寝る時間だ! 消えろ!」


 あーあ。

 言っちゃった。


 エル姉から、殺気が放たれる。


「……ユリ。聞こえた? 今、このゴミクズたちが、私をどうすると言ったかしら?」


 害虫を見る目。

 ……エル姉は、殺す気満々だ。


「汚らわしい、切り捨ててあげる」

「待って、エル姉」


 エル姉の肩に手を置く。

 制止。


「ユリ……止めるの? 優しいのね。でもね、お姉ちゃん、ユリに敵対するやつは、ぜっっったいに許さないの!」

「違うよ、エル姉。止めるんじゃない。……能力の、確認をしておきたいんだ」


 一歩、前に出る。


「なんだよ、このガキ……! 俺は栄えある帝国の兵士だぞ!」


 一人が剣を抜き、飛びかかってくる。


拘束バインド


 短く、つぶやく。

 発動。


 ガバッ! と地面から無数の黒い腕が湧き出した。

 亡者の手。

 それが男の四肢ししをがっしりとつかみ、空中に固定する。


「ひ……っ!? な、なんだこれ! 離せ!」


 いい拘束力だ。

 魔力消費も軽い。燃費がいいのは助かる。


「……僕を上から見るな。頭が高い」


 亡者の手で地面に叩きつける。

 ガシャン!!

 鈍い音が響く中、僕は兵士の頭を踏みつけ、レイピアを抜いた。

 急所を狙い、迷わず一突き。


 ドスッ!!


「……がっ、あ…………」


 一人、片付いた。


「次……『死者召喚ネクロマンス』」


 指を鳴らす。

 さっき死んだばかりの兵士が、ガタガタと不自然な動きで立ち上がった。


「こいつらを殺せ」


 死体による、仲間の殺害。

 実に効率的だ。


「た、助けてくれ! 悪かった!」

「冗談だ! 冗談だったんだよ!」


 許しをう叫びは、死体の振るう剣によってさえぎられた。

 ものの数分で、路地裏には静寂が戻る。

 役目を終えた死体は、霧のように消えていった。


「なるほど。命令遂行後に肉体ごと消えるのか。死体遺棄の手間が省けるな」


 これ、暗殺や隠滅にすごく便利じゃないかな。

 残りの二人も召喚して「死ね」と命じると、血痕すら残さず闇に溶けて消えた。

 お掃除完了。


「……お疲れ様、ユリ。スキルをもう使いこなすなんて……流石だわ」


 エル姉が拍手しながら近寄ってくる。


「エル姉……。僕、怖かった?」


 ふと、自分でも不思議なほど冷静な自分に気づき、聞いてみた。


 エル姉は、とびきり甘い笑みを浮かべた。


「まさか! カッコいいに決まっているじゃない。……ただ、ユリ。私はユリの剣になりたいの。こんな雑魚、貴方の手を汚す価値もないわ」

「……まだいいよ。エル姉にはこれから、もっと大きな敵を斬ってもらいたいから」


 今日の確認できたこと。


 スキルは実用的。資金も潤沢。

 そして、エル姉は相変わらず僕に激甘。


「帰ろう、エル姉。……明日の学校が、楽しみだ」

「ええ。私も楽しみよ。視界を共有して、ずっと横で見守っててあげるから」

「もちろん。頼りにしてるよ」


 僕たちは手を繋ぎ、夜の闇へと消えた。

 

 明日は士官学校の模擬戦。

 ネクロマンサーとしての、僕の初登校日だ。


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