表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/239

勇者

「……だから、レイは眠るのを怖がっていたんだね」


 サナが泣き出しそうな顔で言葉を溢した。

 夢のことをサナとカナタには話したことはない。

 話したところでなにも解決しないし、心配をかけたくなかった。

 

 だけどそれは間違いだったようだ。カナタも悲痛に顔を歪めている。こんなにも心配をかけていたなんて、あの頃は思いもしなかった。


 ……いや、そんなことを思う余裕すらなかったんだ。


 そのぐらい、俺は消耗していた。

 

「俺はラナに救われたんだ。だから必ず救い出す。改めてみんなには協力してほしい」


 俺は三人の目を順に見てから頭を下げた。

 初めに口を開いたのはカナタだ。


「俺はそのためについてきたしな。言うまでもない」

「私もお姉様のことはずっと探していました。私にできることがあれば何でもご協力いたします。もちろん情報もお渡しします。ですからどうか、お姉様をお救い下さい」


 アイリスがは立ち上がって姿勢良く頭を下げる。

 その姿は美しく、王女に相応しい立ち振る舞いだった。

 だけどその目には涙が浮かんでいる。

 きっとラナが囚われた日から、ずっと探していたのだろう。


 ……自分が人質になったせいだとか思っているんだろうな。


 ラナも言っていた。

 アイリスは優しいから絶対気にしていると。

 

 俺はそんな、()()()()を見て、決意を新たにした。


「任せてくれ。絶対にキミとラナを再会させる。約束だ」


 するとアイリスは勢いよく顔を上げた。

 表情が驚愕から微笑みへと移ろう。その顔はラナとそっくりで俺は暖かな気持ちになった。

 

「そうと決まれば私! 聞きたいことがあります!」


 唐突にサナが挙手をして立ち上がった。

 いきなり大声を上げたモノだからみんなが驚き、サナに注目する。


「レイの話だと魔王は封印されているんだよね!?」

「そうだな」

「レイは魔王の封印を解除したら倒すんだよね?」

「そうなるな?」

「それってレイが勇者でも問題なくない? もしかして勇者じゃなかったら魔王を倒せないとかあるの?」


 サナがアイリスの方を向く。

 すると視線を向けられたアイリスは首を横に振った。


「いえ、ありません」

 

 これはラナからも聞いていたことだ。

 魔王は勇者ではない人間でも倒すことができる。

 ならばなぜこの世界は勇者を求めるのか。それは勇者を召喚すれば犠牲が最小限に抑えられるからだ。


 とどのつまり、魔王を倒せる人間がいれば勇者なんていらない。


「まあ、だからサナは戦わなくていいぞ。魔王は俺が倒す」

「え?」

「……え?」


 なぜこの幼馴染は不思議そうな顔をしているのだろうか。


「ちょっとまて一般人。協力して欲しいとは言ったけどお前戦えないだろ? さっきのは裏方的な意味合いでだな……?」

「私勇者だよ!? そこは勇者パワーでなんとか!」


 サナが拳を握って胸を張る。その自信は一体どこから湧いてくるのやら。

 俺はため息をついた。

 

「アイリス。勇者ってのはすぐに戦えるものなのか?」

「いいえ。武術の心得を持つ者が召喚されるとは聞きますが、すぐに実戦は無理ですね」


 それには俺も同意だ。いくら心得があると言っても日本は平和な国。

 俺やカナタの様な例外はいるにしても、サナは正真正銘の一般人だ。すぐに戦えと言われても無理だろう。

 

「じゃあレイかカナタが教えてよ」


 なんてこともないように言うサナ。それが当然だと言わんばかりの顔をしていた。

 だけど俺は答えられない。


 この世界には魔物がいる。勇者ともなれば全く戦わないわけにはいかないだろう。

 

 この世界は日本よりも死が身近だ。

 外に出れば命の保証はない。それは勇者であっても同じ。

 だけど本音を言えばサナに戦って欲しくはない。俺にとってサナは勇者ではなくただの幼馴染なのだ。

 命のやり取りとは無縁であって欲しいと願ってしまう。それは俺のエゴだろうか。


 頭を悩ませているとカナタが口を開いた。


「レイ。お前の悩みはわかるが、俺は最低限力を付けておいてもらったほうがいいと思う。いつも俺たちがそばに居られるわけじゃないからな」

「まあ……そうだな」


 カナタの言葉は理にかなっている。おかしいのは俺の感情だ。

 そんな俺の表情を見て、カナタがため息を吐いた。


「……それに勇者だ。もしかしたら、ラナさんを助け出す力になるかもしれない。最善は尽くすべきだろ?」

「…………その通りだな」


 俺は渋々と頷いた。

 もはや否定することはできない。

 

「じゃあサナに教えるのは俺に任せろ。お前は情報収集とかあるんだろ? 俺じゃこっちの文字は読めないからな。任せたぞ?」


 その申し出はありがたい。

 第一目標はラナだ。

 この世界に来られたのは第一歩でしかないのだから。

 

 ここからはまた手探りだ。

 あまりサナの修行に時間を割くわけにはいかない。


「助かるよ。ありがとな。カナタ」

 

 礼を言うとカナタは頷いた。それから俺はサナの方を向く。


「あとサナ。言っておかなきゃならないことがある」


 できるだけ真剣な表情を作る。

 俺はまだ大事なことを伝えていない。


「改まってなに?」

「ここは日本じゃない。戦うということは文字通り命を懸けることになる。もしかしたら人を殺すことになるかもしれない。その覚悟はあるか?」


 これは俺にも言えることだ。自分も()()人を殺したことはない。だけど()()()は遠からず訪れる。

 その時、俺は俺と同じ人間を斬れるのか。

 

 わからない。

 だけど覚悟はとうの昔に済ませてある。

 

「もちろん。覚悟の上だよ」


 サナが俺と同じ答えを口にした。目はしっかりと俺を見据えている。その中にははっきりと決意の輝きがあった。


「その刃が私や友達に向かうのなら、私は斬ってみせる」


 俺は目を閉じると深く頷いた。

 

「なら俺から言うことはない。サナ。どうか力を貸してくれ」


 俺はもう一度サナに頭を下げた。

 

「それはこっちのセリフ! なんてったって勇者は私なんだからね! レイこそ魔王を倒すの手伝ってよね!」


 サナの言葉につい苦笑いをしてしまった。


 ……まったく。サナらしいな。

ご覧いただきありがとうございます!


「続き読みたい!」「面白い!」と思ってくれた方は

下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援をよろしくお願いします!

面白いと思っていただけたら星5つ、つまらなかったら星1つと素直な気持ちで大丈夫です!

ブックマークも頂けたら嬉しいです!


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=755745495&size=135
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ