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54、頭が爆破されたような衝撃

 俺はこの部屋にある隠し部屋の存在を確信する。

 すると当然、中身も興味が出てくる。


「どうやって中に入るんだ? 中に入るための仕掛けとかありそうな気がするけど……」


 俺の勝手な予想ではここ壁のズレたところがパカッと開いて隠し部屋に入れるような気がするけど、その開くための仕掛けがどのような形でどこにあるのかわからない。

 とりあえずドローンを部屋中にブンブン飛ばして扉の開閉装置を探してみるけど簡単には見つからなかった。


「おかしいな。どっかにあるはずなんだけれどな……。いっそのこと、爆破してこの壁吹き飛ばすか」


 りったんに矢を飛ばしてきた壁だ。

 歴史的価値もある壁だとは思うが、別に壁を爆破して吹き飛ばしても心が痛まない。

 一つだけ心配があるとすれば、この部屋に配備したドローンは一機だけなので爆破した後に何かが起こった時の対応できる幅が少ないという事である。

 ではたくさんあった他のドローンは現在どうしているのかというと、この遺跡は地下にあるため普通に地上から無線を飛ばしても電波が悪いので、複数あるドローンを遺跡の各フロアに等間隔に配置して通信の中継地点にすることで、このような地下深くにあるドローンとの通信をできるように現在稼働中なのだ。

 なので多くのドローンを使ってしまっているため自由に使えるのは現在カメラを写しているこの一機しかない。

 準備不足の状態で適当に爆破しようなんて軽く言えないのも現実なので、今回は見送ることにするか。


「あのドローンは今どこにいるんだろう?」


 ふと、全然連絡してこないドローンのことが気になった。

 それはこの合宿に来る途中に襲ってきた、謎の黒い靄を追跡しているあのドローンのことだ。

 靄はあの一件以降、一箇所に留まることなくずっと動き続けているためにあのドローンも共に同じ場所を行ったり来たりしている。

 一時間前おきくらいにバッテリーが切れそうだったので、合宿に配備したコンテナに待機させてある他のドローンと交代に充電しながら現在も追跡中だ。


 今そのドローンがいる場所を確認すると、遺跡の近くを黒い靄は飛行しているらしい。

 ドローンの追跡を振り切るまでこの靄は逃走を続ける気なのだろうか?


「こっちは我慢比べか。このままの追跡も効率が悪いな」


 そう思って画面の地図上に表示されるドローンと靄の過去の足取りを見ていると、あることに気づいた。

 靄が赤い点、ドローンが黄色い点で表示され、動くとその跡が各々の色の線が地図上に刻まれていくため赤い線と黄色い線が地図上に刻まれているのだが、その線はこの遺跡を中心に円を描いているのだ。


「まさか、この遺跡があの靄の根城か?」


 赤い線は遺跡に近付こうとするたびに一旦立ち止まって振り返った後にまた逃走を続けるということを何度も繰り返している。

 謎の靄は遺跡に戻って来たいけれども、ドローンがずっと追跡を続けるので振り切るまで戻ろうとしていないように俺は見えた。

 ここは一つ、俺はあの靄を泳がせることにした。


「ホーネットワン、追跡中止」


 地図上で共に動いていた赤と黄色の点のうち、黄色い点がその場で止まる。

 赤い点は黄色い点からすぐに遠ざかり、地図上から姿を消した。

 ここで追跡をやめさせたのは、あの靄はきっと遺跡の内部に入って来るであろうことを予想しているからである。

 現在遺跡の中は、いたるところにドローンを配置しているので、あの謎の靄が入って来たらこちらはドローンを使ってあの靄をこっそり監視できるはずだ。


 その時、ピピピ、という電子音が俺を呼び止めた。

 画面上に出て来た受話器ボタンをマウスでクリックする。


「オォ、ボッチャマー、サワッディー。ほっほっほ」


「ジジィ、久しぶりな感じがするな。——もしかしてタイにすっかり染まったのか? それとタイ旅行楽しかったか?」


 電話の相手はジジィだった。

 電話を向こうからしてくれたのはありがたい。


「……坊っちゃま、そこは「綺麗になったな」とまず容姿を褒めていただきたく。……というのは冗談でございまして、ほっほっほ、私、タイ旅行を楽しんでまいりましたぞ」


「……楽しかったなら良かったな」


 よほど楽しかったのか浮かれているようで彼が何を言っているのかよくわからなかったが、電話の声から伝わる上機嫌な雰囲気から本当に楽しかったんだろうなと思う。


「聞いてくださいませ。なんと私、ビューティー・コロシアムで優勝したんですぞ」


「……ん?」


「いやはや、齢六十にしてここまでやれるとは人生捨てたものじゃありませぬな。帰国後もお手入れを怠らずに肌艶に磨きをかけようと……」


「ちょっと待ってくれ、ジジィ、美意識を持つことはいい事だと思うけど……、まさか性転換したなんてことは……」


「ほっほっほ、坊っちゃま、このジジィは性転換などしようなどと思ったことはありませぬぞ。なにせニューハーフとは男性として生を受けたものが女性の風貌をする者のことを指すのですぞ」


「ニュ、ニューハーフ……!?」


 俺は嫌な予感がして背筋が凍った。

 今まで一緒に暮らして来てそんなそぶりを一切見せなかったけど、この前女装させたのが影響してしまったのだろうか?

 対するジジィは笑いながら俺に


「お気になさるな。ほっほっほ」


と笑いかけている。


「……で、いつ帰って来るんだ?」


 頭の処理が追いつかなかったので話題を変える。


「実は今空港でして今から帰るところです」


「そうか。……ならちょうど良いか。帰国したらすぐで申し訳ないけど、一つ、仕事を頼まれて欲しいんだ」


「大丈夫ですぞ。休暇もしっかりと楽しめましたゆえ、その分仕事を頑張らせていただきたく。帰国後は何なりとお申し付けくださいませ」


 そう言って彼は頭を下げる。

 ジジィがニューハーフになったような気が今でも全然しないのだけど、彼は俺をからかっているのだろうか?

色々とタイでの出来事を聞いてみたいものだった。

 しかし色々と調べてもらいたいことがあるので余計な話は省略する。

 俺はジジィに、調べて欲しいことを伝えた。


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