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50、遺跡探索、の始まり

 太陽の日照りが肌をじわじわと暖める。

 そうやって暑くなった体を優しい風が撫でてとても過ごしやすい……そんな素晴らしい良い天気。

 こんなに良い天気なので、これから遺跡の調査をするために暗くじめじめしたところに入っていくのが少し勿体無い気がした。

 実際には外の感覚なんて久しく感じていないので、勝手な想像な訳なのだけれども。

 昼食を終えた生徒達は、予定では今から入る遺跡の前で、今回の合宿の目的である遺跡調査の説明を受けていた。


「諸君にはこの遺跡で魔法陣の調査を行ってもらう」


 隣のクラスの教官だろうか、見たことのない中年の男性が拡声器を使わずに口頭で話す。


「ここの遺跡の魔法陣は魔法省が全て調査済みであるが、ここではあえて諸君らにその調査済みの遺跡を探索してもらうことで遺跡調査の意義について深く考えてもらいたい。調査の方法としては、遺跡の内部には壁画が描かれている魔法陣を各自で見つけ出し、各自で解析せよ。ただし写真などで記録してはならない」


 魔法省が調査済みか。

 そんな場所を調査しても新しい発見がある訳でもなさそうだし、本当にどんな方法で魔法陣を調査するのか実習をしに来ただけのようだ。

 俺はもとより興味はないが、生徒達もモチベーションがそう上がる訳でもないだろう。

 そう思っていると、一人の生徒が手をあげた。


「質問か?」


「はい、僕たちが調査済みの遺跡を調査することに、何のメリットがあるのでしょうか?」


「なるほど」


 しかし教師はそんな質問も想定済みだったようで、淀みなく話し始める。


「今回の調査の目的はあくまで魔法陣の調査手法を学ぶことにある。よって調査済みの方が遺跡も整備されており、生徒達が実際の現場を邪魔することなく実習を体験することができる。学校側の都合でこのような形になった訳だ」


 教師は咳払いをすると、もうひとつ言葉を付け加えた。


「そして、もちろん諸君らにも実習を体験できるということ以外にもメリットはある。ここで解析した魔法陣は自分のものにしても良いこととする。つまり、魔法陣を見つけて解析できたのなら、自分たちの魔法として今後使っても良い」


 周囲からどよめきが起こる。

 なるほど、この遺跡にはどんな魔法が眠っているか分からないが、そこで魔法を見つけられたら自分のものにしても良いというのは破格の報酬かもしれない。

 いくら調査済みとは言え、見つけられていない魔法陣がある可能性がある。

 もしそれを見つけて自分だけの物にできれば、固有魔法使い(ユニーク)になれるというのも夢の話ではない。

 生徒達は今の話でそんな淡い期待を持ったのだろう。

 しかしそんなどよめきなどを相手にせずに、教師は話を続ける。


「遺跡の調査には各班一人教員をつける。なお、場所と教員は全てくじで決めることになっているため、今から各班の代表は前にくじを引きに来るように」


 代表なんて決まってなかったが、同じ班の人たちは最もしっかりしていそうなりったんに代表をやって欲しいとお願いをする。


「え? 私でいいの?」


「みんな大園さんが良いって言ってるから、もし引き受けてくれると嬉しいわ」


 クロエが丁寧にお願いをした。


「そっか、じゃあ行って来るから待っててね。場所、悪かったらごめんね」


 快く彼女は引き受けてくれると、前の方でくじを引きに行った。

 数分後、彼女は地図を持って帰って来た。


「みんな、お待たせ! ここになったけど、良かったのかな?」


 見るとりったんが引いたのは遺跡の最深部。

 未発見の魔法陣を探したいのなら絶好のポイントだと言える。

 りったんは一番良い場所を引いて来たようだ。

 さすが推しメン、運も持ってる。

 その場所を見て同じことを思ったのか、同じ班の土部(どべ)はとても喜んでいた。


「すごいよ、大園(おおぞの)さん。とっても良い場所だ! ここなら珍しい魔法陣が見つかるかもしれないよ」


「そうなの? 私はよく分からないけど……」


「うん、ありがとう!」


 土部(どべ)はやたらと宝探しに興味があるようで一人はしゃいでいる。

 そうだ土部(どべ)、もっとりったんに感謝したまえよ。

 しかし同じ班の箭原(やはら)はそんなことには気にせずと行った様子で洞窟の方へと向かいながら、


「それなら早く行こうぜ、一番深いところなら一番早く入れるみたいだし」


と一人で勝手に進んで行った。


「ちょっと箭原(やはら)、一人で勝手に行くなよ」


 土部もそれに続いて走っていく。

 残る俺たちも彼らに続いて行こうとしたが、振り返ると、今度は杉崎という同じ班の男子が立ち止まっていた。


「杉崎、みんな行くぞ」


「お前らが行きたかったら行けば良い。俺は犯罪者予備軍、外人、間抜けドベと一緒に行動するつもりはない」


 外人はクロエ、間抜けドベは土部(どべ)のことだとして犯罪者予備軍は俺のことを言っているのか。

 なかなかひどい事を言う奴だ。


「そう言ってもな、各班に一人教員がつくみたいだからお前がついてこないとすぐバレるぞ」


「犯罪者予備軍に指図される謂れはない。俺は俺の思う通りにやらせてもらう」


 それでも、彼も一応はこの合宿をサボらずちゃんと出席しているわけだから、俺たちの後をちゃんとついて来るんじゃないかなと予想している。

 まあ、あいつは放っておこう。


「じゃあ先行ってるからな」


「あぁ」


 俺はあいつを放っておいた。


「あれ? 杉崎くんは来ないの?」


 りったんが後ろを気にしている様子だが、大丈夫、と伝えておく。


「なんか彼、調子が悪いらしいんです。だから先に行って欲しいみたいですよ」


「なら放っておけない気がするんだけれども……」


「きっと先生に適切な処置を求めに行くんじゃないかな? それよりも早く中に行きましょう」


 俺は背後から、さっきの昼食の時に火花を散らしていた宍戸のグループがこっちを睨んでいるのが見えた。

 順番的に遺跡に入って行くのは後なので、きっと浅い場所になってしまったのだろう。

 また絡まれるのは嫌なので、なるべく早く遺跡の中に逃げ込みたい。


「うん……」


 しぶしぶ、りったんは頷く。

 こうして俺たちの遺跡調査が始まった。


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