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14、魔法実行装置ーー”デバイス”

 外では若い少年達が元気にドッジボールをしている。

 校庭の風景を、自室のモニター越しにぼんやりと見た。

 高校生だというのにドッジボールというのは年の割りにはしゃぎすぎている気もするが、やっている彼らの表情は真剣そのものである。


 実はあれはドッジボールに似た競技であってドッジボールではない。

 よく見ると少年たちは手を使わずにボールをやりとりしており、白線で作られた境界線の上をボールが意志を持ったように動き回っている。


 これはリビング・ボールという競技で、ルールは基本的にドッジボールと同じであるが、それと違うのは手でなく魔法を使ってボールを飛ばす点である。


 ところで、俺は一通り勉強した中で(まだ未知の領域も数多く存在するが……)魔法というのはコンピュータのプログラムに似ていると思う。

 今まで魔法を研究するような人間は考古学者が派生したような人々であったため、このことは俺しか言っていないが、そのうち研究者が増えるにつれてこの例えもどんどん用いられるようになってくると思う。


 基本的に魔法というのは魔法陣をもとに実行されており、魔法陣には実行する魔法の内容や命令が書かれている。

 いわば、魔法陣はコンピュータのプログラムファイルなのだ。 

 例えばリビング・ボールの場合、ボール一個に対し、受け取った魔力を力学的な力に変換し、ボールに決められた方向へと作用させる魔法陣が使われる。

 この魔法陣を一個のボールに対して展開(実行)することでボールは術者の意図した方向に飛んでいく、という仕組みになっている。


 ボールを手で触れていない特徴の他にも、よく見ると少年たちは皆同じ手袋をはめて、ボールに手を向けているのが分かる。

 この手袋は“デバイス”と呼ばれるもので、魔法陣を展開、実行するために必要なものである。

 魔力の入力と魔法の出力、魔法陣の展開を行うのに必要な機械だ。

 昔から使われて来たデバイスの形が手袋であったためこの形が現在の主流となっているが、デバイスの形は様々であり杖、ペン、果てには服までデバイス化することに成功しておりその形態は様々である。




 ……おっと、ボールを避けようとした少年が転倒した。

 彼はそのおかげでボールを避けることはできたものの膝を擦りむいている。

 しかし彼は少しのすり傷では物ともせず、何もなかったかのように立ち上がりまた競技に参加していた。

 若いっていいものだね。

 俺もまだ若造だが、あんな元気はない。


 そんな彼らを見ながら俺は仕事の手を止めて思案に耽っていた。

 ——莉子を狙うものの存在、彼女の転校、新たな転校生…………。


 このことに関連がある気がするがまだ情報が足りない。果たして、調べるべきところはどこであるか……。


 俺は先ほどから同じところで行き詰まっていた。

 戦国時代から、情報を制すものは戦を制す、と言われて来たがまだそこまで情報が手元に集まっていないせいでりったんの完全な安全の確保ができていない。

 手札は多いほうがいいのはカードゲームと同じだ。

 ——情報がなければ俺の“魔法”も使えない。


 クラスの様子はというと、国語の授業を受けているらしくさしたる動きも見られない。

 今は皆、問題を解いているのか先生が席と席の間をゆったりと歩いている。

 クロエもりったんも真面目に授業に取り組んでおり、そんな彼女達を先生は答案を覗き込むたびに素晴らしいと褒めていた。


 しかしいつまでもこの平穏は続かない。

 ——不意にブザーがなった。


「ビーッ、ビーッ、ビーッ」


 モニターを見ると、校庭にいる生徒達が騒いでいた。


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