第12章 東の国の陰謀 暗殺者の災難③
ルークはシューリーを煽るに煽っている。シューリーが放つ魔道の完全詠唱をさせない算段だ。
「かっ、勝てるに決まっているであろう。お前は私を馬鹿にしているのか?」
「馬鹿になんてしていませんよ。ただ事実をお伝えしているだけです」
「もういい、そのまま死ね」
シュリ―は香枝の魔道を放つ。完全詠唱の威力ではない。ルークは避けた。
「いくら放っても当たらなければどうしようもありませんよ。もっと強い魔道を放ってくれないと面白くありません」
「ちょこまかと逃げるでないわ」
「そりぁ、あんな拙い魔道では逃げられるに決まっているじゃないですか。余裕です」
実はルークはギリギリで避けている。剣の腕も相当なものであるルークだからできる芸当だった。
その威力は完全詠唱ではない魔道だがシューリーの魔道の腕が確かなものであることを証明していた。
「そんな魔道では到底僕を殺すことなんてできませんよ」
「言うな。言うでない」
シューリーはズィーイ皇国に居た時のことを思い出していた。神童と呼ばれて地方から首都であるクロチに出て来た時、自分が井の中の蛙だったことを思い知らされた。天才など掃いて捨てるほど居たからだ。
地方出身者として魔道学校で蔑まれていた時のことが頭に浮かんでは消える。
「私が一番、ズィーイ皇国で私が一番の魔道士なのだ」
シューリーは叫び続けている。放つ魔道はだんだん弱くなっていった。
「いつまで続ける気ですか。それとも、もう終わりですか?」
「まさか。ここからが本番だ」
シューリーは渾身の魔道を放つため初めて完全詠唱を始めた。
「本当の力を見せていただけるということでいいですか?」
ルークはどこまでもシューリーを煽っている。自身はまだ何一つ攻撃系の魔道は放っていない。ただシューリーの魔道を避けたり相殺したりしているだけだった。
ルークの言葉を無視してシューリーは完全詠唱を完成させた。
「さあ、喰らうがいい、我が最大の魔道、極大火焔魔道を!」




