第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅳ⑩
ロックとしては失敗するとは思わなかったが万が一ということもある。そんな時にはシェラックに暗殺者の始末をしてもらいたいと言っているのだ。
ロックは今まで襲ってきた相手を殺したことはあった。だが自ら進んで相手を殺しに行ったことはなかった。降りかかる火の粉を払う訳ではないのだ。
その辺りが自身の剣にどのような影響が出るのか、出ないのか。自分にも判らなかった。
「珍しく弱気なんだな」
「慎重と行ってくれ」
ロックには慎重と言う言葉が似合わなかったのだが。
「魔道士との戦いは何度も経験したが今回の相手はその中でも高位だということだからな」
「まあシャロン公国の魔道士ではなくズィーイ皇国の魔道士というところも何が起こるか判らない部分ではあるが」
「そのあたりが心配の種なんだよ」
「やっぱり弱気なんじゃないか」
「そう取ってくれてもいい」
ロックの今まで見せたことが無い表情にシェラックも少し不安になってきていた。
「お前もユスティの件があるだろう」
今回の暗殺者はルークやリロンに気づかれずにユスティに魔道を掛けた強者だ。
「ルークが気づけなかった魔道を私が気づける筈がないだろう」
魔道士としてはシェラックはルークに及ばないと自覚している。当然剣ではロックに及ばない。ただそれ以外のことで上を行けばいいとシェラックは思っている。
ただユスティのことは自覚はなかったが何の打算もなく庇護しなくてはならないと思っていた。そのユスティに呪術的魔道を掛けられたのだ、許せるはずがなかった。
シェラックの言葉には自虐の感情が混じっていた。
「俺ではなくお前がやるかい?」
シェラックはズィーイ皇国の暗殺者にも魔道では及ばないと自覚している。確実に仕留めるためにはロックが前に出る必要があった。
「いや、お前に任せるさ。もし仕留めこそなったら私が止めをさそう」
できないことは無理をしない、得意なことに力を注ぐ。それがシェラックの信条だった。
ロックが失敗するとはシェラックも思っていない。ただ止めを刺したい気持ちは十分あった。出番がないとも思っていたが。




