第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅳ⑧
「ここザグレブで騒ぎを起こしたい、それもズィーイ皇国が絡んでいることを隠して、というところか」
「そんなことをしてどうする、何が目的なんだ?」
「騒ぎを起こして、それ収めることに協力したうえで信頼を得る、みたいなことだな」
「それは自作自演じゃないか。すぐにズィーイ皇国の仕業だと知られてしまう。そんなことではとても信頼など得られるもんじゃないだろう」
「そうだな。信頼を得るにはルークかリロン、それともう一人暗殺する必要かありそうだ」
「もう一人。誰だ?」
「リン次官さ」
「ズィーイ使節団の団長をか」
「そう。それでその解決に寄与すれば絶大な信頼を得られるとは思わないか?」
「まあ、それはなんとなくは判るが。そけほどの意味があるとも思えない」
「まあ、実際には上手く行くかどうかは判らないがな」
暗殺されるのがルークだったらプレトリア州とアゼリア州の関係が悪くなるだろう。その犯人を捕まえて両州の関係悪化を止めなければならない。
暗殺されるのがリロンだったらプレトリア州としては全力を挙げて犯人を捕まえて極刑に処すだろう。
太守バイロン=レイン侯爵は実はリロンが魔道を使えるのではないかと疑っている。もし使えるのであれば太守の座を次男のリロンに譲るとさえ考えているのだ。その有力な跡継ぎ候補を殺されては面目が立たない。
どちらにしてもザグレブで事件が起こってしまえば早急に解決せざるをえない。そんな時にズィーイ皇国使節団が滞在していれば真っ先に疑われるだろう。
その疑いを逸らすためのリン次官の暗殺、という訳だ。
リン次官も暗殺されたのであれば一旦容疑者としてズィーイ皇国関係者が挙がったとしても直ぐに外されるだろう。
「まさか」
「なんだ?」
「リン次官はズィーイ皇国では有力ではあるがズィーイ皇帝の弟であるカムシン=ソタンの娘サクランの次男という高位ではあるが最高位ではない立場の人間だ」
「それはちょっと聞いたが、そんな話だったか」
ロックは興味の無いことはあまり覚えていない。
「だからシャロン公国で死んでも、あまり問題にならない、ということだよ」




