第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅳ⑤
「暗部なら大丈夫だろうがな」
シューリーの元を離れたラナンが呟いた。
ラナンが使える暗部はリン次官の子飼いの者たちとは違う。暗殺にしても証拠を残したりはしない。
であればルーク=ロジックかリロン=レインを暗殺するのであればシューリーを遣わず暗部を使う方がいいはずだ。
しかしラナンの選択はシューリーに任せる、というものだった。
そのラナンの後を追う姿があった。ラナンは勿論気が付いてはいない。それは魔道士としても高位であるはずのラナンが気づけない程の追跡者だった。
「行ったようですね」
「話していた内容は判りましたか?」
「ええ、全て。僕と所長のどちらかを殺すように指示したようです」
「私かルークさんのどちらかを殺すですって?」
「ええ。意図は判りませんが証拠を残さないように、と言うことも指示していましたからズィーイ皇国の仕業だとは知られないようにどちらかを殺すのが向こうの目的のようですね」
ルークは事も無げに言う。いままで命のやり取りは何度も経験していたルークだったので危機感が少し麻痺しているのかも知れない。
ただリロンにとっても暗殺は身近な話だった。嫡男であるタイス=レインが健在なのでリロンに太守の座が回ってくることはほぼ無いと言っていいのだが次男と言う存在自体を疎ましく思っているタイスの取り巻きも多いのだ。
「自分の身は自分で守れるとは思うのですが、相手はズィーイの魔道士、それも私やリロン所長さんが存在に気づけなかったほどの魔道士ということになるのですね」
「まあ、手練れであることは間違いないでしょう。数字持ちの魔道士ほどではないにしろ高位であることは間違いありません。それと、どうもシャロン公国の魔道とズィーイの魔道は少し違うようですね」
「判るのですか?」
「一応研究をしている身ですから。同じ炎系の魔道であっても詠唱は違うようですし、そうなると何かの対抗魔道についてもシャロン風の詠唱では無理かも知れません」
「それは少し困ってことになりませんか?」
「ただ向こうも同様にこちらの魔道から身を守るのに苦労するのではないでしょうか。同種の魔道を打ちあって相殺する、ということであれば可能でしょう」
同種同等の魔道をこちらも放つことで相殺できる、ということになるのだろう。また反射魔道なら問題ないようにも思えた。
「何か少し嬉しそうではありませんか?」
リロンの顔は少し笑っていた。
「ああ、そうかもしれません。魔道の研究はもちろん大好きなのですが実践となるとなかなか経験できないものですから。試しに本気で人に向かって打つわけにもいきませんからね」
リロンは魔道追及者ではあったが実践者でありたいとも願っていたのだった。




