第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅳ④
「リン次官はお怒りだ」
シューリーの元に訪れたラナンはいきなり叱りつけた。立場としてはシューリーよりもラナンの方か上だ。
「なぜだ。私は失敗などしてはいないだろう」
「お前の存在を相手に知られてしまっては失敗と言わざるを得ない、と仰っている」
「それは。確かにユスティニアヌス本人に気づかれたことは失敗と言えるかも知れん。ただルーク=ロジックやリロン=レインの眼は欺いたではないか」
元々の標的はルークとリロンだったはずだ。ただその二人を直接魔道で攻撃するには危険すぎるとの判断からユスティが選ばれたのだった。
「結局相手に悟られてしまったのでは意味がない。それに魔道そのものは解除されてしまったではないか」
ユスティの病状は快方に向かっている。解除されたのではなく単純にシューリーが手を引いただけなのだが。
「それで、私にどうしろと言うのだ」
「挽回の機会を与えようじゃないか」
「挽回の機会だと?」
「そうだ。ルーク=ロジックでもリロン=レインでも、どちらでもよい。命を奪うのだ。彼らを欺けるお前であれば簡単なことではないのか?」
シューリーは少し考え込んだ。ルークとリロンの力は大体把握できている。負ける気はしない。ただ二人が揃っている時には難しいとも思っている。
「簡単に言ってくれるな。お前も魔道士だ、少しは奴らの力を感じているだろうに」
「まあそうだな。私にはシューリー、お前と二人の差は殆どないと思っているのだが」
シューリーの顔が少し歪んだ。
「まさか。一対一なら全く引けを取る気がしないわ。ただ二人相手となるとちと手がかかりそうだ。まあ負けるとは思わないがな」
そこに嘘が混じっていることをラナンは感じ取っている。ラナンの本当の見立てではシューリーの力はルークとリロンの間くらいだと思っている。いずれにしても感覚的なことなので正確には判らない。
「確実に行かないとまた次官のお怒りに触れることになるぞ」
それがあまり脅しになっていないこともラナンは知っているが、そう言わざるを得なかった。
「お怒りに、ね。まあいい、どちらでもいいんだな?」
「勿論。痕跡は残すようなやり方では駄目だぞ」
「なんだ、派手にやってはいけないのか。私は力の誇示を信条としているのだが」
「駄目に決まっているだろう。また戦争でも始めるつもりか」
シューリーなら遣り兼ねないので、やはりシューリ―の監視も必要だった。




