第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅳ
第12章 東の国の陰謀
東からの使者Ⅳ
「あんたもズィーイ皇国の正式な使節団なんだから公式にアゼリア州を訪問すればいいんじゃないのか?」
リンは意表を突かれて固まってしまった。
「そっ、それは確かにそうですね」
「正式な使節団なら何の問題も無い筈だ。それでヴォルフ伯父に接見して自説でもなんでも聞いて貰うといい。そのうえでヴォルフ伯父が太守として判断するだろう」
リンはプレトリア州を巻き込み裏から徐々にシャロン公国全土を魔道の国に生まれ変わらせるつもりでいた。
それは自分の生きているうちには終わらないかも知れないが、いずれはシャロン公国以外の国も含めてすべての国を魔道中心に挿げ替えるのだ。
「それも一つの手ではありますね」
リンは裏工作だけを画策している。正攻法では無理だと思っているからだ。
「その手以外にはどんな手があるんだ?」
ロックの聞きたいことはそこだった。ロックとしては知らない間にシャロン公国が魔道中心になる、というか剣中心の国ではなくなってしまうことが我慢ならなかった。
「その手以外と言いますと?」
「あんたたちが今からこのプレトリアでやろうとしていたことだよ」
ロックには返事を聞かない限り帰らない、という意思が見えた。
「やろうとしていたこと、と言われましても、私はただズィーイ皇国皇帝の代理としてシャロン公国を敬意訪問しに来ただけなのですが」
「そんな筈がないだろう。シャロン公国を魔道中心の国にする目的で来ていると言っているじゃないか」
「それは確かにそうなのですが、シャロン公国を、というより全ての国を魔道中心に変えていきたい、というのが我が国の理想とする世界なのですよ」
勿論そんなことをリンは本気で信じている訳ではない。シャロン公国は隣国でもあり特にプレトリア州は元々魔道を重視している地域なので最初に手を付けるには打って付けだった。
まずはプレトリア州。その後いくつかの州を版図に加えて最終的にはシャロン公国全土を魔道で支配する。
「だから、その理想は判ったって。具体的に何をしでかそうとしているんだ、と聞いている」
ロックは一歩も引かなかった。但しリンとしてはロックに話す義理も必要もない。
「魔道の素晴らしさを淡々と説いて行くつもりなのですが」
リンの言葉は心がこもっていない。自分でも信じていないからだ。
「どうしても言わない、というのだな」




