第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅲ⑩
「リン様」
「ラナンか、どうした?」
ラナンのその表情から何かがあったことは明白だった。
「実は帰り道でロック=レパードに声を掛けられまして、どうしても次官にお目に掛りたいと言うので仕方なく連れて参りました」
リンとしてはロック=レパードという青年には用がなかった。魔道を使えない一介の剣士など相手にしている暇はない。
「私にどんな用があると?」
「なんでもお聞きしたいことが有るようで」
「聞きたいこと?追い返せないのか?」
「はい、次官はお忙しいと何度も断ったのですが、どうしても連れて行けと。私では奴を止められません」
ロック=レパードの剣の腕前はリンも情報を得ている。シャロン公国全土から18歳の青年が集う御前試合で優勝したことは聞き及んでいた。しかしいくら剣が強くても魔道が使えない者はリンにとっては無価値なのだ。
「まあ、確かにロック=レパードを剣術で止められるものはズィーイ皇国にもそうは居ないだろう。まあいい、つれてくるがいい」
ラナンはロックの件はリンに丸投げするつもりだった。いずれにしてもロックに逆らうのは無謀だと思ったのだ。
「これはリン次官、早速面会の機会をいただきありがとうございます」
ロックが丁寧に挨拶をする。
「いえいえ、外ならぬロック様がわざわざ訪ねて来られたのですから、お目に掛るのは当たり前のことです」
こいつはいつも本当の事を言わない奴だ、とロックは思った。嘘しかつかない、と言い換えられそうだ。
「ところで今日はどのようなことで起こ史になられたのですか?ルーク様はご一緒では?」
「俺一人だ。ルークが一緒でないと話を聞いてくれない、ということか?」
「いえいえ、とんでもない。先日はお二人でお見えになられたので確認したまでです」
「今日は俺だけだ。それとあの時にも言ったがルークはアゼリア州をどうにかできる立場にはないぞ」
「それは先日もお伺いして理解しております。ただどなたかをご紹介いただければ、とは今でも思っているのですが」
「それも難しいだろうな。ルークの知り合いはアゼリア州ではヴォルフ伯父の他には数人しか居ない」
「そうなのですね」




