第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅲ⑨
「ちょっと聞きたいことが有るんだが、いいか?」
いきなり声を掛けられてラナンは驚いたが見知ったロックだったので少し安心した。
「これはロック様、いかがなされましたか?」
「いや、この間はあんたのご主人に失礼なことを言ってしまったんじゃないかと反省しているんだよ」
ロックは心にも無いことを白々しく言った。但し、相手もロックが本気で言っているとは思っていない。
「特に次官は何も仰ってはおられませんでしたよ。お気になされなくてもいいと思います」
「そうか、それは良かった。ところで」
「ところで?」
「ああ、あんたたちは本気でシャロン公国を魔道中心の国にしようと思っているのか?」
「はい。それがあるべき国の姿だと考えています」
ラナンの口調も本人が信じてもいないことを話しているように聞こえた。ズィーイ皇国の全員が魔道中心がいいと思っているわけではないのだろうか。
「それで具体的にどうしようと言うんだ?」
「それは時間にお聞きください。私如きがお話しするなんて烏滸がましい」
「そう言うなよ。何か聞いているんだろ?」
ラナンはリン次官の側近のようだ。シャロン公国での活動について聞いていない筈がない。
「確かに聞いてはいますが、私の口からは。ご勘弁ください」
今から暗躍しようとする内容をべらべらと話す筈がない。これはロックの方が無茶を言っている。但し、ロックにもその認識はあった。
「じゃ直接本人に聞くしかないか。案内してくれるか?」
ロックの目的はこれだった。もう一度リン次官に会う、会って問い質す。
本来であればルークと2人で聞きに行くのが正解だった。ただロックは暇を持て余していた。ルークと2人で問題を解決することは容易い。しかしそれではロックの出番が無くなってしまいそうだった。
「え。少し待っていただけませんか、聞いてまいりますので」
「いいじゃないか、このまま連れて行ってくれよ」
ロックは譲らない。次官との間で事前に打ち合わせをされたくなかった。
「わかりました、ではこのままお連れ致します」
ラナンはあっさり引き下がった。何かを思いついたのか、その顔はもう声を掛けた時の様な挙動不審さは見られなかった。




