第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅲ⑦
「本気か?」
「駄目なのか?」
「まあお前らしいと言う場お前らしいんだが。それでズィーイ皇国の野望を砕くのがお前の目的なんだな?」
「そこまでの確固たる信念が有る訳ではないな。ただ魔道中心の国にはなってほしくはない、というところか」
「そんなことで邪魔されるズィーイ皇国が可愛そうになってきた」
魔道を苦にしないロック=レパードの剣技。それは魔道中心の戦い方しか知らない者にとっては脅威だろう。
ズィーイ皇国では剣は魔道よりも下に見られている。魔道士たちの用心棒か盾扱いだった。魔道を使えない者が仕方なく剣を学ぶのだ。
「己を高めたり磨いたりするには剣は打って付けだと思うんだがな」
「それは確かにそうかも知れんが、お前はちょっと極端だと思うぞ。まあいい、私も剣よりは魔道が得意ではあるが魔道士に牛耳られるような国にはしたくない、という想いはある」
シェラック=フィットの目指すシャロン公国の在り方は剣でも魔道でも無く権謀で覇を唱える国にしたい、という思いだった。
シェラックはその為に各州に自らの情報網を整備しているのだった。
今までも間者は各州に滞在していた。その人数を増やし情報が瞬時にグロシア州の自分の元に集まるような組織を作っているのだ。
それには魔道は不可欠だった。その意味でシェラックは魔道を大切にしている。ただ自らの身を守るには魔道だけでは不足しているとも思っていた。その為の剣の修行なのだ。
「では手伝ってくれるということでいいな?」
「元々私たちはズィーイ皇国の動向も張っているからな。ついでだ」
「助かる。とりあえずは居場所だけでいい」
「それはいいが、ルークやリロン所長には言わなくていいのか?」
「二人には二人のやり方があるさ」
シェラックは少し意外だった。シェラックの知る限りロックとルークが行動を別にしていることはなかった。
ロックとルークの出会いは少しシェラックも聞き及んでいる。その後の二人の旅もだ。二人の性格からして物事の表を見るのはロックで裏を探るのはルークだと思っていた。どうも違うのかも知れない。
「じゃ、頼んだ」
それだけ言うと何も食べずにロックは出て行った。直ぐにシェラックの配下の者の声だけが現れる。
「シェラック様、申し訳ありません。私が付けられていたようです」
「気にするな。あいつはあれで化け物の類だ、お前たちでは太刀打ちできまい」
「話は聞いていたな」
「はい、すぐに手配してまいります」
「うむ、頼んだ」




