第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅲ④
「別に。私がこの手の店で食事をしているは変じゃないだろう」
「いや、変だな。食事なら研究所で取れるだろう。誰かと待ち合わせでもない限り、こんなところまでは来ない筈だ」
「判っているなら聞くな」
ロックとしてはこの時期にシェラックが誰と会おうとしているのか、気になって来たのだ。それを隠そうとはしない。
「ところで、おまえばずっと何をしているんだ?」
シェラック=フィットに出会ってからずっとロックが疑問に思っていたことだった。遠くグロシア州から旅を続けている訳を知りたかった。
「なにって、何もしていない」
「そんな訳が無いだろう。ユスティの様に不老不死を求めていることは知っている。だが、ユスティと違ってそれだけじゃないんだろ?」
それを素直に話すシェラックではない。ロックもとことん追求するつもりもなかった。
「まあ、その通りだがそれをお前に話す義理はないな」
「確かに。ただ」
「ただ?」
「事と次第によっては手伝ってもいい、と言っているんだよ」
ロックは基本的にはお人好しだった。他人が困っているのなら助けたい。剣のこともそうだった。決して誰にも負けない剣士になりたいのは、自分が守りたい人を誰よりも強く守りたいという思いだったのだ。
「まあ、内容にもよるがな」
シェラックのやろうとしていることは、何処まで行ってもグロシア州に利することでしかない。それはロックの立場からすると助力できることが少ないように思えた。
「無理しなくてもいい。お前はお前の道を行けばいい。ただ私の邪魔だけしないでいてくれればな」
「そうは言うが逆に俺たちの邪魔をするようならお前の目論見を砕かせてもらうぞ?」
「だから判ったと言っているだろう。綿時下やろうとしていることはお前たちには害はない。約束する」
変に勘繰られて痛くもない腹を探られるのは得策ではない。但し痛いかどうかは判らなかったが。
「ところでズィーイ皇国からの使者の件は聞いているか?」
「一応はな」
実は既にシェラックの手の者もズィーイ皇国の暗部と少しいざこざを起こしていた。探ろうとする対象が被っているからだ。




