第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅱ⑦
「皇国一とも謳われたシューリーの力もそれほどのものではではなかった、と言うことか」
「いえ、リン様。相手の魔道士の力は相当なものです。シューリー様はその二人の魔道士の眼は欺いておりました。ところが肝心の標的であるユスティニアヌス=ローランには通じなかった、といことでしょう」
「そのユスティニアヌスという者は、それほどの力を有しているというのか?」
「シューリー様によると少し違うようです。本人の力ではなく別の誰かの強大な加護を身にまとっているようだ、とのことでした」
「誰かとは誰なのだ?」
「そこまでは。ただ少し時間をもらえれば、とも仰っておりましたが」
「いずれにしても何故シューリーは俺の所に報告に来ない」
「研究所から離れられないようです。近くで動向を探っていないとバラバラに跡を追われると対応しきれないようです」
「監視対象から離れられないということか。ではラナン、お前が連絡係になるということでいいのだな」
「はい、そのとおりです。私が時折シューリー様の所に様子を伺いに行きます」
リン=ソウシュクが監視している対象はリロン=レインやルーク=ロジックの他にシェラック=フィットやユスティニアヌス=ローランも入っていた。
ユスティニアヌスはローラン国王カリスト=レム・ロンドニアから命を受けてシャロン公国を旅している。その目的は国王の延命というか不老魔道を探しているのだった。それはシェラック=フィットの目的とも合致している。シェラックの場合は、その対象はグロシア州太守ウラル=ダッシング侯爵ではあったが。
そしてリロンも同様に不老若しくは不死を研究しているのだがリロンの場合は誰かの命を受けての事ではない。ただ自身の魔道に対する知的好奇心の為だった。
そして更に同じ目的をもった、今度は他国人が現れた。リン=ソウシュクだ。リンの表向きの対象はズィーイ皇国皇帝リュウシン=ソタンだったが、実はリンには別の想いがある。
それは自らの父であるサクラン=ソウシュクでも無かった。
「判った。シューリーにはくれぐれも慎重に、と伝えてくれ」
リンとしてはユスティの身体を盾にとってリロンやルーク、シェラックから情報を得ようとしていた。その為に呪術をかけていたのだ。
ユスティ本人を殺すつもりは元々なかった。ただリロンやルークでは対応できないほどの魔道士であることを印象付けることも目的だったのだ。
若しくは自分たちが掛けたことを隠してユスティの呪術を解くことで相手の信頼を得る、ということも選択肢の一つだった。その場合は相手にシューリーの魔道を悟られないことが前提だったのだが、ユスティ本人に気づかれてしまったので、その策はもう取れなくなった。
シューリーがユスティの所に行かないと、解除できないというか解除した証拠にならないからだ。
「大口を叩いていた割には、ということか。まあいい、シューリーよりは腕は落ちるが暗部の数人には引き続きルーク=ロジックを張らせておけ。リロンは研究所を出ないのでシューリーが同時に見ておけばいいだろう。シェラック=フィットの動向はどうなったいる?」
「それが」
「なんだ、見失ったとでも言うんじゃないだろうな?」
「それが、仰る通りで」
リンの随行団付き暗部たちはシェラックの居場所を見失っていた。




