第12章 東の国の陰謀 東からの使者Ⅱ⑥
「それは今も感じますか?」
「いいえ、今は全く。お二人がここに来られてからは感じません」
「というと僕たちが来る前までは感じていたと?」
「そうですね。ただはっきりはしないのです。多分呪いの類ではないか、程度のことなのですが」
リロンやルークの存在を感知できるほどの呪術。それは相当高位な魔道であると言える。
「まさか数字持ちの魔道士の誰かが?」
「いいえ、それはあり得ないと思います。僕は数字持ちの魔道士たちの標的になるような存在ではないですし」
確かに一介の旅人でしかないユスティではある。ただロンドニア国王の命を受けてシャロン公国に来ていることは確かなので、そのあたりが標的となった理由なのだろうか。
「それは相手に聞いてみないと判らないよ、君は重要人物なのかも知れない」
「そんな。僕はただの旅人ですよ。学者に憧れて、ここシャロン公国を見分を広げる為に旅をしているだけです」
ユスティを通じてロンドニアと誼を結びたいとか、逆に何かロンドニアに恨みがあるとか、考えられないこともない。ただ本人は至って生真面目な優しい人間なので個人的に恨みを買うような人間とは思えない。
「君の知らない所で君が重要視されていることもあるだろう。いずれにしても回復してよかった。でもどうして相手は途中で呪術を解いてしまったのだろう」
「確かに。私やルークさんにはその痕跡すら見つけられない程の魔道を掛けられる相手です。そのまま呪い殺すことも可能だったのではないかと思いますが」
リロン所長が本人を前に怖いことを言う。ユスティは少し身震いをした。
「本当ですね。あのまま目覚めないということもあったかも知れません」
「いずれにしても用心するに越したことはないね。僕がいつも近くに居る様にするよ」
ルークとしても自分の眼を欺くほどの魔道士に、どうすれば対抗できるのか判らなかったがユスティを一人にする訳にも行かなかった。
「シェラックさんはどうなさっていますか?」
ユスティが見かけないシェラック=フィットのことを問う。ただ三人にはシェラックの行き先に心当たりはなかった。
「そういえば最近見かけないね。ユスティが寝込んだ頃には研究所に居たんだが」
ズィーイ皇国からの使者の件やユスティの事で誰もシェラックのことを気に掛けていなかった。いつの間にか姿を消していたのだ。
「危険な目に遭って居なければいいのですが」
「君はまず自分の心配をしたほうがいいよ。あいつは放っておいても大丈夫。そのことは君が一番知っているんじゃないか?」
「確かにシェラックさんならどんなことでも乗り越えてしまうでしょうね」
ユスティのシェラックに対する信頼は揺るぎないものだった。




