第12章 東の国の陰謀 東からの使者⑩
「魔道は素晴らしいものなのです。魔道力さえあれば修行を積まなくても簡単な魔道は仕えるようになります。剣の修行とは全く別物です」
リンは自らにも言い聞かせるような口調で話し出す。
「ただ他人を傷つけるだけの剣とは比べ物にならないほど本来の魔道は大切なものなのです」
ズィーイ皇国でそう教わっているのか、リン=ソウシュクの個人的な思いなのかは判らなかったが、リンの魔道への想いは相当強いものがあるようだ。
「それにはちょっと異論があるがな」
今まで黙って来ていたロックが口を挟む。剣を、剣だけを極めたいロックとしては黙って居られないのだろう。
「剣は野蛮な解決方法の手段でしかありません。魔道なら人を助けることも出来ますが剣は人を殺すだけの道具なのですよ」
「俺は剣で人を殺したいと思ったことはないぜ。ただ襲われれば相手はそれ相応の報いを得るだろうけどな。俺はただ強い相手と戦いたいだけだ」
「それか野蛮だと言うのです。敵対すれば話し合いで解決できることも十分あるでしょう。剣や戦争で解決するのは野蛮人のすることです」
リンの考えは極論だった。話し合いや魔道が万能なわけではないとルークは思う。
「リンさん、それは流石に言い過ぎです。魔道にも攻撃系は多くありますよ。魔道でないと倒せない相手もいる筈です。魔道での解決が剣よりも勝っているとは一概には言えないでしょう」
リンは少しむっとした表情を浮かべたが声を荒げたりはしない。
「これは失礼をしました。確かにそちらのロック様は剣に生きておられるようだ。ただ剣の修行と言うものは、いかに効率よく相手を殺すか、という事を突き詰めている作業ではないかと私には思えるのですよ」
その一面があることはロックもルークも否定するものではない。ただロックが追い求めていることは人殺しの技を極めたいことでは決してないのだ。
「お互いの意見は交わりそうにないな。俺はこれ以上ここに用はないからもう帰っていいか?」
ロックは完全に腹を立てている。リンに切り掛かったりはしないが、もしリンと試合をするなら完膚なきまで打ちのめしたい欲望に駆られるだろう。
ただリンはロックが試合たいと思えるような腕前ではなさそうだった。
「ロックが買えるなら僕も失礼させてもらいます。どうもリンさんのお役には立てないようです、申し訳ありません」
二人が部屋を出るのをリンは止めなかった。声を掛けすらしない。結局思惑が外れた衝撃から立ち直ってはいないのだ。
「どう思う、ラナン」
ラナン=カントウはリンの随行員の一人で爵位は有していないがズィーイ皇国においては上級魔道士の地位にあった。
「ルークの件ですか」
「そうだ。子供のいないロジック公爵のただ一人の養子だぞ?影響力が無いわけがなかろう」
「事情は判りませんが、嘘を吐いているようにも見えませんでしたが。養子になった経緯を調べてみましょうか」
「頼む」
リンはルークが話に乗ってくれさえくれればアゼリア州は抑えたつもりでいたのだ。




