第12章 東の国の陰謀 東からの使者⑨
「なるほど貴国の意図は理解しました。しかしそれを僕に話してどうしろと?」
ただ魔道を重要視して欲しい、とシャロン公国に働きかけても門前払いだろう。
ただ唯一プレトリア州だけは今でも魔道重視の地域なのでズィーイ皇国が働きかける必要もない。
「ルークさん、あなたにはアゼリア州の太守に話を通していただきたいのです」
なるほど他国の外交官としてルークを見た場合、太守の養子であるルークは当然アゼリア州に影響力があると見てしまうかもしれない。
「そういうことですか。僕がアゼリア州太守ヴォルフ=ロジック狼公の養子と知ってのことなのですね」
「その通りです。義父である太守ロジック公爵に進言をしていただきたいということです」
「生憎僕は確かにロジックの名を名乗っていて狼公の養子としての立場をいただいてはいますが、それは形式だけのことで実際に僕の権限など何もないのですよ」
そのルークの言葉にリンは驚いた表情を浮かべる。肩書が、それも魔道士としての肩書が重要視されるズィーイ皇国で太守の息子となると国王の息子と同意だ。
「そんなことはあり得ないでしょう」
「いいえ、僕の肩書はただ名前が付いているだけなのですよ。だから僕はこうしてアゼリア州を出て旅をしているんです」
「とても信じられません。ではあなたはアゼリア州に何の影響力もないと?」
「そのとおりです。僕はただロジックの名前を名乗らせてもらっているだけなのですよ」
リンの勘違いというか認識違いだったようだ。ただリンは諦めてはいない。
「でも、太守の養子であることは間違いないのですよね」
「それは確かにそうです」
「ということは直接アゼリア州太守にいつでも会える立場だということも間違いありませんね」
「まあ、そうですね。ただしばらくアゼリア州に戻るつもりはありませんが」
当てが外れてリンは少し意気消沈しているようだった。
「では、どうでしょう、アゼリア州太守に魔道を剣よりも重視するよう進言する手紙をかいていただくというのは」
リンは何が何でもルークを撒き込みたいようだった。ただルークには全くその気がない。
「申し訳ありませんが、それも無理です。そもそも僕は魔道と剣に上下があるとは思っていません。どちらも極めることが自分の糧になるとは思っています。その為に修行の旅をしているんですよ」
ロックは剣が上だと思っているのは明白だったがルークはどちらとも極められるものであれば極めたいと思っていた。ただ剣ではロックには敵わないとも思っているのだが。




